障害者基本法の改正について(平成16年6月)


 平成16年5月12日、衆議院内閣委員会委員長提案により「障害者基本法の一部を改正する法律案」(新旧対照表)が国会に提出され、同年5月28日、参議院本会議において可決、同年6月4日に公布・施行(一部を除く)されました。なお、改正法の成立に際しては、参議院において附帯決議が付されています。


障害者基本法の一部を改正する法律案

第一条 障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の一部を次のように改正する。
 目次中「第九条」を「第十一条」に、「第十条―第二十六条」を「第十二条―第二十二条」に、「第二十六条の二」を「第二十三条」に、「第二十七条」を「第二十四条」に改める。
 第一条中「、障害者の」の下に「自立及び社会参加の支援等の」を加え、「自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進する」を「福祉を増進する」に改める。
 第二条中「長期にわたり」を「継続的に」に改める。
 第三条第一項中「処遇」を「生活」に、「有するものとする」を「有する」に改め、同条第二項中「を与えられるものとする」を「が与えられる」に改め、同条に次の一項を加える。
3 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
 第四条を次のように改める。
 (国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援すること等により、障害者の福祉を増進する責務を有する。
 第六条を削る。
 第五条に次の一項を加える。
2 国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることなく、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができる社会の実現に寄与するよう努めなければならない。
 第五条を第六条とし、第四条の次に次の一条を加える。
 (国民の理解)
第五条 国及び地方公共団体は、国民が障害者について正しい理解を深めるよう必要な施策を講じなければならない。
 第二章を削る。
 第一章中第九条を第十一条とし、同条の次に次の一章を加える。
   第二章 障害者の福祉に関する基本的施策
 (医療、介護等)
第十二条 国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、取得し、又は維持するために必要な医療の給付及びリハビリテーションの提供を行うよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する医療及びリハビリテーションの研究、開発及び普及を促進しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢及び障害の状態に応じ、医療、介護、生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。
4 国及び地方公共団体は、第一項及び前項に規定する施策を講ずるために必要な専門的技術職員その他の専門的知識又は技能を有する職員を育成するよう努めなければならない。
5 国及び地方公共団体は、福祉用具及び身体障害者補助犬の給付又は貸与その他障害者が日常生活を営むのに必要な施策を講じなければならない。
6 国及び地方公共団体は、前項に規定する施策を講ずるために必要な福祉用具の研究及び開発、身体障害者補助犬の育成等を促進しなければならない。
 (年金等)
第十三条 国及び地方公共団体は、障害者の自立及び生活の安定に資するため、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講じなければならない。
 (教育)
第十四条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢、能力及び障害の状態に応じ、十分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査及び研究並びに学校施設の整備を促進しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。
 (職業相談等)
第十五条 国及び地方公共団体は、障害者の職業選択の自由を尊重しつつ、障害者がその能力に応じて適切な職業に従事することができるようにするため、その障害の状態に配慮した職業相談、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者に適した職種及び職域に関する調査及び研究を促進しなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者の地域における作業活動の場及び障害者の職業訓練のための施設の拡充を図るため、これに必要な費用の助成その他必要な施策を講じなければならない。
 (雇用の促進等)
第十六条 国及び地方公共団体は、障害者の雇用を促進するため、障害者に適した職種又は職域について障害者の優先雇用の施策を講じなければならない。
2 事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用のための経済的負担を軽減し、もつてその雇用の促進及び継続を図るため、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他必要な施策を講じなければならない。
 (住宅の確保)
第十七条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定を図るため、障害者のための住宅を確保し、及び障害者の日常生活に適するような住宅の整備を促進するよう必要な施策を講じなければならない。
 (公共的施設のバリアフリー化)
第十八条 国及び地方公共団体は、障害者の利用の便宜を図ることによつて障害者の自立及び社会参加を支援するため、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進を図らなければならない。
2 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、障害者の利用の便宜を図ることによつて障害者の自立及び社会参加を支援するため、社会連帯の理念に基づき、当該公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進に努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、前二項の規定により行われる公共的施設の構造及び設備の整備等が総合的かつ計画的に推進されるようにするため、必要な施策を講じなければならない。
4 国、地方公共団体及び公共的施設を設置する事業者は、自ら設置する公共的施設を利用する障害者の補助を行う身体障害者補助犬の同伴について障害者の利用の便宜を図らなければならない。
 (情報の利用におけるバリアフリー化)
第十九条 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たつては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならない。
3 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たつては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。
 (相談等)
第二十条 国及び地方公共団体は、障害者に関する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならない。
 (経済的負担の軽減)
第二十一条 国及び地方公共団体は、障害者及び障害者を扶養する者の経済的負担の軽減を図り、又は障害者の自立の促進を図るため、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免その他必要な施策を講じなければならない。
 (文化的諸条件の整備等)
第二十二条 国及び地方公共団体は、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起こさせ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスポーツを行うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じなければならない。
 第八条を第十条とする。
 第七条の二第二項中「策定するよう努めなければならない」を「策定しなければならない」に改め、同条第三項中「(都道府県障害者計画が策定されているときは、障害者基本計画及び都道府県障害者計画)」を「及び都道府県障害者計画」に改め、同条第五項後段を削り、同条第八項中「第六項」を「第七項」に、「又は」を「の変更について、第六項及び前項の規定は」に改め、同項を同条第九項とし、同条第七項中「都道府県又は市町村は、」を「第二項又は第三項の規定により」に、「を策定したときは」を「が策定されたときは、都道府県知事又は市町村長は、これを当該都道府県の議会又は当該市町村の議会に報告するとともに」に改め、同項を同条第八項とし、同条第六項を同条第七項とし、同条第五項の次に次の一項を加える。
6 市町村は、市町村障害者計画を策定するに当たつては、地方障害者施策推進協議会を設置している場合にあつてはその意見を、その他の場合にあつては障害者その他の関係者の意見を聴かなければならない。
 第七条の二を第九条とする。
 第七条中「並びに障害の種別及び程度」を「及び障害の状態」に改め、同条に次の一項を加える。
2 障害者の福祉に関する施策を講ずるに当たつては、障害者の自主性が十分に尊重され、かつ、障害者が、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない。 第七条を第八条とする。
 第六条の二の見出しを「(障害者週間)」に改め、同条第一項中「障害者の日」を「障害者週間」に改め、同条第二項を次のように改める。
2 障害者週間は、十二月三日から十二月九日までの一週間とする。
 第六条の二第三項中「障害者の日」を「障害者週間」に改め、同条を第七条とする。
 第二十六条の二第一項中「調査研究」を「調査及び研究」に改め、同条に次の一項を加える。
3 国及び地方公共団体は、障害の原因となる難病等の予防及び治療が困難であることにかんがみ、障害の原因となる難病等の調査及び研究を推進するとともに、難病等に起因する障害があるため継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めなければならない。
 第三章中第二十六条の二を第二十三条とする。
 第二十七条第二項第二号を同項第三号とし、同項第一号を同項第二号とし、同項に第一号として次の一号を加える。
 一 都道府県障害者計画に関し、第九条第五項(同条第九項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
 第二十七条第四項中「、当該市町村における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項及び障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議させるため」を削り、同条に次の一項を加える。
5 第二項及び第三項の規定は、前項の規定により地方障害者施策推進協議会が置かれた場合に準用する。この場合において、第二項中「都道府県に」とあるのは「市町村(指定都市を除く。)に」と、同項第一号中「都道府県障害者計画」とあるのは「市町村障害者計画」と、「第九条第五項(同条第九項において準用する場合を含む。)」とあるのは「第九条第六項(同条第九項において準用する場合を含む。)」と、第三項中「都道府県」とあるのは「市町村(指定都市を除く。)」と読み替えるものとする。
 第四章中第二十七条を第二十四条とする。
第二条 障害者基本法の一部を次のように改正する。
 目次中「地方障害者施策推進協議会(第二十四条)」を「障害者施策推進協議会(第二十四条―第二十六条)」に改める。
 第九条第四項中「障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者の意見を代表すると認められる者並びに学識経験のある者」を「中央障害者施策推進協議会」に改める。
 第四章の章名を次のように改める。
   第四章 障害者施策推進協議会
 第二十四条に見出しとして「(地方障害者施策推進協議会)」を付し、同条を第二十六条とし、第四章中同条の前に次の二条を加える。
 (中央障害者施策推進協議会)
第二十四条 内閣府に、障害者基本計画に関し、第九条第四項(同条第九項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、中央障害者施策推進協議会(以下「中央協議会」という。)を置く。
第二十五条 中央協議会は、委員三十人以内で組織する。
2 中央協議会の委員は、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。この場合において、委員の構成については、中央協議会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた協議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならない。
3 中央協議会の委員は、非常勤とする。
4 前三項に定めるもののほか、中央協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。第三条 障害者基本法の一部を次のように改正する。
 第九条第三項中「策定するよう努めなければならない」を「策定しなければならない」に改める。
   附則
 (施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第二条及び次条(内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第三十七条第三項の表の改正規定に限る。)の規定は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から、第三条の規定は平成十九年四月一日から施行する。
 (内閣府設置法の一部改正)
第二条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。
  第四条第三項第四十五号中「第七条の二第一項」を「第九条第一項」に改める。
  第三十七条第三項の表独立行政法人評価委員会の項の次に次のように加える。
中央障害者施策推進協議会  障害者基本法 

 (検討)
第三条 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の規定の実施状況、障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等を勘案し、障害者に関する施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
     理由
 最近の障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等にかんがみ、基本的理念として障害者に対して障害を理由として差別その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない旨を規定し、都道府県及び市町村に障害者のための施策に関する基本的な計画の策定を義務付け、中央障害者施策推進協議会を創設する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

▲ このページの上へ


障害者基本法の一部を改正する法律案要綱

第一 改正の趣旨
 最近の障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等に対応し、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るため、基本的理念として障害者に対して障害を理由として差別その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない旨を規定し、都道府県及び市町村に障害者のための施策に関する基本的な計画の策定を義務付け、中央障害者施策推進協議会を創設する等の改正を行うものとすること。
第二 目的(第一条関係)
 この法律は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって障害者の福祉を増進することを目的とするものとすること。
第三 基本的理念(第三条関係)
 基本的理念の規定に、何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない旨を追加するものとすること。
第四 国及び地方公共団体の責務(第四条関係)
 国及び地方公共団体は、障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援すること等により、障害者の福祉を増進する責務を有するものとすること。
第五 国民の責務(新第六条関係)
 国民の責務の規定に、国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることがない社会の実現に寄与するよう努めなければならない旨を追加するものとすること。
第六 自立への努力(旧第六条関係)
 自立への努力の規定を削除するものとすること。
第七 障害者週間(新第七条関係)
 障害者の日の規定を障害者週間の規定に改め、障害者週間は、十二月三日から十二月九日までの一週間とするものとすること。
第八 施策の基本方針(新第八条関係)
 施策の基本方針の規定に、障害者の福祉に関する施策を講ずるに当たっては、障害者の自主性が十分に尊重され、かつ、障害者が、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない旨を追加するものとすること。
第九 障害者基本計画等に関する改正(新第九条関係)
一1 都道府県は、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における障害者の状況等を踏まえ、当該都道府県における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「都道府県障害者計画」という。)を策定しなければならないものとすること。
 2 市町村は、障害者基本計画及び都道府県障害者計画を基本とするとともに、地方自治法上の基本構想に即し、かつ、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を策定しなければならないものとすること。
二 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、中央障害者施策推進協議会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。
三 地方障害者施策推進協議会を設置していない市町村が市町村障害者計画を策定するに当たっては、障害者その他の関係者の意見を聴かなければならないものとすること。
四 都道府県障害者計画又は市町村障害者計画が策定されたときは、都道府県知事又は市町村長は、これを当該都道府県の議会又は当該市町村の議会に報告しなければならないものとすること。
第十 医療、介護等(新第十二条関係)
一 国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、取得し、又は維持するために必要な医療の給付及びリハビリテーションの提供を行うよう必要な施策を講じなければならないものとすること。
二 国及び地方公共団体は、一の医療及びリハビリテーションの研究、開発及び普及を促進しなければならないものとすること。
三 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢及び障害の状態に応じ、医療、介護、生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策を講じなければならないものとすること。
四 国及び地方公共団体は、一及び三の施策を講ずるために必要な専門的技術職員その他の専門的知識又は技能を有する職員を育成するよう努めなければならないものとすること。
五 国及び地方公共団体は、福祉用具及び身体障害者補助犬の給付又は貸与その他障害者が日常生活を営むのに必要な施策を講じなければならないものとすること。
六 国及び地方公共団体は、五の施策を講ずるために必要な福祉用具の研究及び開発、身体障害者補助犬の育成等を促進しなければならないものとすること。
第十一 教育(新第十四条関係)
 教育の規定に、国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない旨を追加するものとすること。
第十二 職業相談等(新第十五条関係)
 職業相談等の規定に、国及び地方公共団体は、障害者の地域における作業活動の場及び障害者の職業訓練のための施設の拡充を図るため、これに必要な費用の助成その他必要な施策を講じなければならない旨を追加するものとすること。
第十三 公共的施設のバリアフリー化(新第十八条関係)
一 国及び地方公共団体は、障害者の利用の便宜を図ることによって障害者の自立及び社会参加を支援するため、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進を図らなければならないものとすること。
二 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、障害者の利用の便宜を図ることによって障害者の自立及び社会参加を支援するため、社会連帯の理念に基づき、当該公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進に努めなければならないものとすること。
三 国及び地方公共団体は、一及び二により行われる公共的施設の構造及び設備の整備等が総合的かつ計画的に推進されるようにするため、必要な施策を講じなければならないものとすること。
四 国、地方公共団体及び公共的施設を設置する事業者は、自ら設置する公共的施設を利用する障害者の補助を行う身体障害者補助犬の同伴について障害者の利用の便宜を図らなければならないものとすること。
第十四 情報の利用におけるバリアフリー化(新第十九条関係)
一 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるようにするため、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならないものとすること。
二 国及び地方公共団体は、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たっては、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮しなければならないものとすること。
三 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の製造等を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たっては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならないものとすること。
第十五 相談等(新第二十条関係)
 国及び地方公共団体は、障害者に関する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならないものとすること。
第十六 障害の予防に関する基本的施策(新第二十三条関係)
 障害の予防に関する基本的施策の規定に、国及び地方公共団体は、障害の原因となる難病等の予防及び治療が困難であることにかんがみ、障害の原因となる難病等の調査及び研究を推進するとともに、難病等に起因する障害があるため継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めなければならない旨を追加するものとすること。
第十七 中央障害者施策推進協議会(新第二十四条及び新第二十五条関係)
一 内閣府に、障害者基本計画に関し、第九の二の事項を処理するため、中央障害者施策推進協議会(以下「中央協議会」という。)を置くものとすること。
二 中央協議会は、委員三十人以内で組織するものとすること。
三 中央協議会の委員は、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命するものとすること。この場合において、委員の構成については、中央協議会が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた協議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならないものとすること。
四 中央協議会の委員は、非常勤とするものとすること。
五 二から四までに定めるもののほか、中央協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
第十八 施行期日等
一 施行期日(附則第一条関係)
この法律は、公布の日から施行するものとすること。ただし、第十七は公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から、第九の一の2は平成十九年四月一日から施行するものとすること。
二 検討(附則第三条関係)
政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の規定の実施状況、障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等を勘案し、障害者に関する施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
三 その他所要の規定を整備するものとすること。

▲ このページの上へ


新旧対照表(PDF形式:85KB)

▲ このページの上へ


障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

平成十六年五月二十七日
参議院内閣委員会

障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に向け万全を期すべきである。
一、障害者施策の推進に当たっては、障害者の個人の尊厳にふさわしい生活を保障される権利を確認した法第三条第一項の基本的理念を踏まえ、障害者が、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に、分け隔てられることなく参加できるようにすることを基本とすること。
二、障害者の雇用・就業、自立を支援するため、障害者の地域における作業活動の場の育成等を推進するとともに、併せて精神障害者の雇用率の適用・復職支援、在宅就労支援を積極的に推進するため、これらについて法的整備を含め充実強化を図ること。
三、障害者に対する障害を理由とする差別や権利利益侵害が行われた場合の、迅速かつ効果的な救済のために必要な措置を検討すること。
四、情報バリアフリー化の推進は、障害者等のコミュニケーションの保障に資するべきものであることにかんがみ、情報通信機器やアプリケーションの設計面のみならず、コンテンツや通信サービスについても、手話、文字、点字、音声等の活用による改善及び充実を促進すること。
五、障害のある児童・生徒とその保護者の意思及びニーズを尊重しつつ、障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が共に育ち学ぶ教育を受けることのできる環境整備を行うこと。
六、「障害者」の定義については、「障害」に関する医学的知見の向上等について常に留意し、適宜必要な見直しを行うよう努めること。
  また、てんかん及び自閉症その他の発達障害を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって、継続的に生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること。
七、国連における障害者権利条約の策定等の動向を踏まえ、制度整備の必要性について検討を行うこと。

右決議する。