150 衆議院内閣委員会 2000/11/07

○佐藤委員長 植田至紀君。

○植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。よろしくお願いします。
(中略)

 特に、例えば障害者の場合でいきますと、いわゆるパソコンの世界でいくと、パソコンというのは障害、バリアが非常に少ないために障害者にもいろいろな可能性が出てくるということは常々言われているわけですから、IT技術を適切に活用すれば、今まで以上に身体に障害を持つ等々のハンディキャップを抱えた人の社会参加というのが非常に広がってくる、そういうことはやはり言えると思うのです。そういう意味で、このIT革命の推進というのは大きな役割を果たすだろうというふうに私自身期待するわけなんです。そしてまた、社会とのつながりを閉ざされている障害者の状況を大きく変えることができるんじゃないか、そういう希望もやはりあるわけでございます。
 実際、森総理自身、所信表明の中で「IT社会の実現を国民的課題と位置づける」とか「国民一人一人がネットの主役」ということをおっしゃっておられるわけです。それゆえに、せんだっても担当大臣には、非営利団体、企業等だけに任せるということでなく、もっとそういう意味で政府や行政が責任を持ってその環境整備を進めるべきではないでしょうかということを申し上げたわけなんです。
 そこで、きょうまずお伺いしたいのは、既に基本法の議論は基本法の議論で今やっているわけですけれども、概算要求、もう既に来年度の要求をされているわけです。見ましたら、いろいろとIT革命の推進にかかわっていろいろな予算を要求されておられます。
 それで、きょうは、文部、厚生、通産、郵政、労働、それぞれ各省にお伺いしたいわけですけれども、障害者であるとか、そういうなかなか取っつきにくいなという中高年齢者の方々などへの配慮というものが、実際、具体的に要求段階でどのようになっているのか。そして、その施策を今後どのように展開していくのかということについて、それぞれ、やや詳細にわたっても結構でございます、ただ、うちの省としてはITと言われたらこれやという目玉を一つぐらい設定してもらって、これだけはやはりきっちりやりたいという目玉も当然あるでしょうから、そういうことも踏まえて、それぞれの省庁からその辺の中身についてまず御説明いただけますでしょうか。

○松村政務次官 お答えいたします。
 政府におきましては、全国民がインターネットを使えるよう、国民運動を展開することとしているわけであります。
 
高齢者や障害者がパソコンやインターネットなどの新たな情報技術を容易に活用できるようにするためには、身近な施設において、ゆっくり時間をかけて、また、繰り返し継続的に学習を行うことができる環境を整えることなど、特別な配慮を払う必要があるわけであります。このため、高齢者にとりまして身近な施設であります学校や公民館等で、パソコン操作やインターネット活用方法等についての学習機会を提供するとともに、公民館等で高齢者がいつでもパソコン及びインターネットが利用できる環境を整備することが最も有効な方策であると考えられます。
 このため、文部省では、現在調整中の平成十二年度補正予算におきまして、平成十三年度概算要求で考えておったわけでありますが、前倒しに要求しようということで、
平成十二年度補正予算におきまして、公民館等社会教育施設におきますIT学習環境の整備として約百八十九億円を要望しているところでありまして、この中では、障害者対応のためのパソコン整備についても配慮することといたしております。さらに、盲、聾、養護学校の情報化のため、点字プリンター、モバイル端末等、障害の状態に応じた情報機器の整備等を推進しているところでありまして、平成十三年度概算要求二億一千万円を要求しているところであります。

○佐田政務次官 先生も今お述べになりましたように、この基本法の中の八条には、年齢、身体的な条件等の要因に基づく情報通信技術の利用の機会等の格差の是正が積極的に図られなければならないということが明記されておるわけでありまして、まさにそういう意味におきましては、非常に重要な部分としてこの法案に盛り込まれておるわけでございます。
 デジタルデバイドは、年齢、教育、地理的要因、障害などさまざまな要因により発生しているということが考えられ、その解消に向けてはそれぞれの要因に応じた方策を講じていくことが必要でありまして、郵政省としましては、これまでの取り組みをさらに加速すべく、平成十三年度予算の概算要求におきましては、
重要施策の一つとしてデジタルデバイドの解消を挙げまして、九十四億円を要求しているところであります。
 例えば、年齢、障害面でのデジタルデバイドの解消に関しましては、障害のある方を含め、だれもが情報通信の利便を享受できる情報バリアフリー環境の整備に向け、体に障害のある方向けの通信・放送サービスの提供、開発に対する新たな助成制度などの施策を要望しているところであります。先生も御案内のとおり、具体的に申し上げますと、
お年を召した方々に対しましては、各郵便局でパソコン教室を開いているとか、例えばデジタル放送なんかでは、聞き取りにくい場合にはゆっくりと話すようなものを整備しておるとか、あらゆることでデジタルデバイドをなくしていきたい、かように思っております。
 そしてまた、基本理念にのっとりまして、家庭、企業、地域など、生活のあらゆる場面においてすべての人々がITを十分に使いこなせるデジタルオポチュニティー社会の実現に向けましてしっかりと網羅していきたい、かように思っております。

○福島政務次官 お答えいたします。
 厚生省におきましても、IT化が進展する中、
ハンディキャップのある高齢者そしてまた障害者が情報通信技術というものを積極的に利用することは、自立そしてまた生活の質の向上につながるものであり、高齢者、障害者の方がそうでない人と同様に情報を享受できるようにする環境を整えるということが極めて大切である、そのように認識をいたしております。
 このために厚生省が従来から取り組んでまいりましたことは、具体的に申し上げますと、
一つは、情報へのアクセスが困難な視覚障害者の方々が音声による情報を入手しやすくするためのデジタル録音図書システムというものを開発いたしまして、その機器整備というものを図ってまいりました。これは今まで、平成十年度の補正予算、そしてまた補正予算が何回かございましたので、その中で整備を進めてまいりました。
 そしてまた、障害者の皆さんに対して
インターネット上で各種の情報を提供するためのノーマネットの整備を進めてきたところでもございます。これにつきましては、平成七年、平成十年、平成十一年の補正予算で総額約十億円を使いまして、その整備を進めてまいりました。平成十三年度も、その運用に関しまして四千四百万円の予算要求をいたしておるところでございます。
 さらに、本年の
補正予算に関しましては、障害者情報バリアフリー設備整備事業というものを要求いたしておりまして、これは、身体障害者そしてまた知的障害者等の施設に情報機器というものを配備することによりまして情報バリアフリー化を促進するという事業でございますけれども、これに関しましては、国におきまして三十一億円を予算要求いたしておるところでございます。
 このような形で、さまざまな施策を推進してまいりまして、今後とも関係省庁とも協力しつつ、高齢者そしてまた障害者の方が情報通信の利便を享受できる環境づくりに努力したい、そのように考えております。

○坂本政務次官 各省とも同じでございますが、ITの進展に伴いまして、高齢者、身障者等がITを活用して社会経済に積極的に参加することが重要となってきております。
 そこで、通産省は、こうした認識のもとに、高齢者、障害者等が容易に利用できるような情報処理機器の基本仕様などを盛り込んだ
情報処理機器アクセシビリティ指針を平成二年に策定し、本年六月改定するなど、高齢者、障害者の使いやすいパソコン等のITの普及に取り組んできたところでございます。
 また、高齢者、障害者が使いやすいITの開発につきましては、これまでも平成十年度補正予算等で実施しているところでありますが、これは公募をして、いろいろなアイデアを実は募集しておるわけでございます。
 例を挙げますと、肢体の不自由な方々は、マウススティックを口にくわえて、文字を指したり数字を押す、あるいは頭にそれをつけて、頭で動かしながらやるとか、あるいはまた視覚障害者の方々には、声でこんにちはと言えばこんにちはと、そうしたら電子メールでも何でもそれで送れるような、そんなことをアイデアとして募集しております。また、知的障害の方々には、絵文字を用いて、食事ですとかいろいろな注文メニューを絵文字で表示するといった、いろいろなアイデアでもって今日までやってまいっております。
 平成十二年度補正予算と平成十三年度概算要求においても、
ITバリアフリー事業として、高齢者、障害者が使いやすいIT機器・システムの開発等を推進するため、合わせて二十九億円の要求を行っているところであります。さらに、こうしたIT機器・システムの普及を進めるため、開発成果の展示、紹介、全国各地での説明会の開催等に取り組んできたところであります。今後も引き続き、取り組んでまいりたいと思っております。
 これらの施策により、高齢者、障害者等がITを活用して、社会経済に参画することが促進され、今後、高齢化時代を迎える我が国経済社会の活性化にも貢献できるものと考えております。

○釜本政務次官 ハンディキャップを抱える人の雇用につきましても、IT化の対応は大変大切なことだと思っております。
 労働省といたしましては、障害者につきまして情報機器の活用による重度障害者の社会参加、就労支援のための
モデル事業として、インターネットを活用しつつ、パソコン技能の向上等を図るための事業を行うこととし、平成十三年度予算としましては約四千九百万円を要求するとともに、障害者の職域を拡大するための研究の一環として、障害者の就労促進に資する情報機器の開発等を行うこととし、平成十三年度予算として約四千六百万円を要求しております。
 また、中高年齢者については、IT化に係る職業能力のミスマッチやデジタルデバイドの発生が懸念されることから、働く人すべてがIT化に対応できるよう、ITに係る多様な水準の職業訓練コースの抜本的な整備、拡大など、さまざまな職業能力習得機会を確保、提供していくこととしております。これにつきましては、平成十三年度予算として約二百五億円を要求しているところであり、また平成十二年度補正予算においても約二百十八億円の計上を要望しているところであります。
 これらの施策を通じまして、IT化が進展する中での障害者や中高年齢者の雇用の確保に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
 (以下略)


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