障害者権利条約 パラレルレポートJD草案/日本障害者協議会(JD)  2018年5月25日 
第35条 締約国による報告(Reports by States Parties)には、「各締約国は、この条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告( a comprehensive report)を、この条約が自国について効力を生じた後二年以内に国際連合事務総長を通じて委員会に提出する」とあります。これにより日本は、2016年6月末日に国連へ報告(Initial reports)を提出しました。この報告は政府のみならず立法、司法含めた締約国としての報告であることから私たちは「締約国報告」と表記したいとおもいます。
このパラレポJD草案は、JDF(日本障害フォーラム)のもとにとりくまれるパラレルレポート作成にむけて、JDとしての意見をまとめるものです。(JDパラレポ検討会)        
 締約国報告 JDパラレポ草案 ◆草案    ■参考・資料

第1部 総論

Ⅰ条約締結に至る経緯と現状


1.我が国は、2014年1月20日、「障害者の権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」という。)の批准書を国際連合事務総長に寄託し、本条約は、第45条の規定により、同年2月19日に我が国について効力を生じた。この第1回日本政府報告は、本条約が我が国について効力を生じてから2016年2月までの期間を対象としている。また、本報告には、我が国において本条約第33条にいう監視するための枠組みを担う「障害者政策委員会(以下「政策委員会」という。)」のコメントを反映させるとともに、付属文書として、本報告の提出を視野に入れて政策委員会が行った我が国障害者施策の根幹をなす第3次障害者基本計画の実施状況の監視の結果を取りまとめた文書を添付している。本報告作成にあたっては、政策委員会以外の関係者からの意見も広く求めるべく、案文に対する意見公募も実施した。

2.我が国は、障害者権利条約が国連総会で採択された翌年2007年 9月28日に、同条約に署名した。一方、条約の批准については、国内の障害当事者等から、条約の批准に先立ち国内法の整備を始めとする障害者に関する制度改革を進めるべきとの意見が寄せられた。日本政府は、これらの意見も踏まえ、2009年12月に内閣総理大臣を本部長、全閣僚をメンバーとする「障がい者制度改革推進本部」を設置し、集中的に障害者に関する制度改革を進めていくこととした。これを受けて、障害者基本法の改正(2011年 8月)、障害者自立支援法の改正(2012年6月)(「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者総合支援法」という。)に改められた。)、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」という。)の成立及び「障害者の雇用の促進等に関する法律」「障害者雇用促進法」)(以下という。)の改正(2013年 6月)等、様々な制度改革が行われた。このように、条約の締結に先立って国内の障害者制度を充実させたことについては、国内外から評価する声が聞かれている。

3.他方、日本政府としては、条約の実施については不断の努力が必要であるとの認識であり、障害当事者・関係者の方からの意見を求めながら、今後政策を実施していきたい。課題としては、データ・統計の充実が挙げられ、特に性・年齢・障害種別等のカテゴリーによって分類された、条約上の各権利の実現に関するデータにつき、より障害当事者・関係者の方のニーズを踏まえた収集が求められていると考えられるので、次回報告提出までの間に改善に努めたい。また、政策委員会では、障害者施策における重点的な課題として、成年後見制度も含めた意思決定支援、精神障害者・医療的ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援、インクルーシブ教育システム、雇用、情報アクセシビリティについて、分野横断的な課題として、障害のある女性、障害者に関する統計について、重点的に検討された。


Ⅱ我が国に関する基本的情報

4.国土や人口等我が国に関する基本的情報については、「コア文書」に係る政府報告(HRI/CORE/JPN/2012)参照。Ⅲ条約上の権利の実現のための政策、戦略、国内の法的枠組み、障害者差別に関する包括的な枠組み

5.我が国の憲法は、基本的人権の尊重を重要な柱としており、憲法第97条においては、基本的人権を「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」としている。この基本的人権には、(i)身体の自由、表現の自由、思想・良心の自由、信教の自由等のいわゆる自由権的権利、(ii)教育を受ける権利、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利等のいわゆる社会的権利等が含まれている。また、同第14条においては、すべて国民が法の下に平等であって差別されないことが記されている。

6.障害者についても、その基本的人権は憲法の下で保障されているが、とりわけ、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって障害者の福祉を増進することを目的として、心身障害者対策基本法が1970年 5月 21日に制定され、1993年の「障害者基本法」への名称変更も含め幾度かの改正を経て、障害者権利条約の趣旨を反映させるために2011年に更に改正された。主な改正内容は、「障害者」の定義に、いわゆる「社会モデル」の考え方を反映したこと、「合理的配慮」について我が国の国内法で初めて規定したこと、政策委員会を設置したことである(政策委員会についての詳細は、第33条「国内における実施及び監視」参照)。

7.また、政府は、障害者基本法第11条に基づき、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として、障害者基本計画を策定することとなっている。現在、2013年に策定した、2013年度から 2017年度までの概ね 5年間を対象とする第 3次計画に基づいて、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策を推進しているところである。

8.また、障害者基本法第 11条では、都道府県については、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における障害者の状況等を踏まえ、都道府県障害者計画を策定することを、市町村については、障害者基本計画及び都道府県障害者計画を基本とするとともに、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、市町村障害者計画を策定することを義務付けている。2014年3月末時点で、全ての都道府県が計画を策定しており、市町村については全体の94.8%である1651市町村が策定している。

9.障害保健福祉施策に関しては、2006年 4月 1日から施行された障害者自立支援法において、身体障害者、知的障害者及び精神障害者に対し、障害の種別に依らない一元的な障害福祉サービス等の仕組みを確立するとともに、障害者の地域生活への移行や就労支援といった課題に対応し、また、障害者が自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な障害福祉サービスや相談支援等を利用することのできる仕組みを構築している。
 また、厚生労働省と障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団との基本合意(2010年1月)や、内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議総合福祉部会によって取りまとめられた提言(2011年8月)等を踏まえ、2012年6月に、障害者自立支援法の一部改正法が成立した。これにより、障害者自立支援法の題名を障害者総合支援法に改めるとともに、基本理念の規定の創設や障害者の範囲の拡大(難病等の追加)等の改正が行われ、同法に基づき、引き続き障害者の地域社会における共生の実現に向けた施策を実施している。

10.「障害に基づく差別」及び「合理的配慮」に関しては、2011年に改正した障害者基本法において、基本原則として、障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害することを禁止するとともに、障害者への差別とならないよう、障害者が個々の場合において社会的障壁の除去を必要とするときは、その負担が過重でない場合には、その障壁を除去するための措置が実施されるに当たり、合理的な配慮がされなければならない旨規定した。(障害者基本法第 4条第 1項、第 2項)

11.また、2013年に成立した障害者差別解消法において、「障害を理由とする差別の禁止」として、行政機関等及び事業者に対し、障害を理由として不当な差別的取扱いをすることにより障害者の権利利益を侵害することを禁止するとともに、障害者が個々の場合において社会的障壁の除去を必要とするときは、その負担が過重でない場合には、障害者の権利利益を侵害しないよう、その障壁を除去するための措置が実施されるに当たり、合理的な配慮をしなければならない(事業者に対しては、合理的な配慮をするように努めなければならない)旨を規定している。(障害者差別解消法第 7条、第 8条)

12.雇用における障害者差別に関しては、2013年に障害者雇用促進法の一部を改正した。具体的には、障害者権利条約第27条に規定されている労働及び雇用の分野における障害者に対する差別の禁止を具体化するため、改正障害者雇用促進法第 34条及び第 35条において、事業主に対して雇用の分野における障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止し、同法第36条の 2及び第 36条の 3において、事業主に対して、過重な負担にならない範囲で障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮)を講ずることを義務付けた。

13.さらに、改正障害者雇用促進法第36条及び第36条の 5に基づき、障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針及び雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針を2015年3月に策定し、事業主団体等に対して精力的に周知のうえ、2016年 4月に施行された。加えて、雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供について事業主と障害者である労働者の間で紛争が起きた場合について、同法第 3章の 2において、事業主は、障害者から苦情の申出を受けたときは自主的な解決に努めることとするほか、都道府県労働局長は必要な助言、指導又は勧告をすることができ、必要があると認める時は紛争調整委員会に調停を行わせることが規定されている。


Ⅳ条約上の権利実現のための資源及び費用対効果の高い方法の追求

14.我が国の障害者施策に関しては、施策を実施する各省庁において予算を計上して実施しているところであり、2015年度の障害者施策関係予算の合計額は、1兆 7233億円である。2015年度の障害者施策関係予算の主なものとして、障害児者が地域や住み慣れた場所で暮らすための障害福祉サービスの提供や、障害児のための療育支援、障害者の地域生活を支援する事業等があり、これらを含む生活支援施策としては1兆1330億円を確保している。障害者施策関係予算は、2011年時点では1兆3565億円であったが、4年間で約 3668億円、約27%増加している。

15.なお、我が国においては、業務災害に係る給付、障害年金等については、それぞれの施策に包括されて計上しており、障害者施策としては計上していない。


選択議定書を批准すること


国内法を条約と整合させるための「障がい者制度改革」が、障害当事者の参加の下 に2010年から行われたが、障害者差別解消法や障害者基本法の改正などで成果が あったものの、福祉、雇用、所得保障、教育、コミュニケーション、意思決定などの分野では十分な見直しができなかった。
(JD=アジア太平洋障害者の十年(2013~2022)の中間年評価のためのESCAP調査アンケート(以後、JD・ESCAP意見)
項目  締約国報告(各論)   JDパラレポ草案 
第1条
目的    

16.障害者権利条約の趣旨を踏まえ、2011年に改正した障害者基本法においては、全ての国民が障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するために障害者施策を推進することを目的として定めている。(障害者基本法第 1条)

17.「障害者」の定義については、改正前の障害者基本法では、障害者は「身体障害、知的障害又は精神障害(「以下「障害」と総称する。」)があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と規定されていたが、2011年の改正で、いわゆる「社会モデル」の考え方を反映し、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と規定している(障害者基本法第 2条)。障害者差別解消法においても、同じ障害者の定義をとっている。

18.同様に、社会的障壁についても「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念、その他一切のものをいう」と規定された。

2016年7月26日に発生した津久井やまゆり園での障害者殺傷事件では、犯人が「障害者は生きる価値がない」等と発言し、その露骨な優生思想が社会全体を震撼させた。こうした事態を二度と起こさないためには、精神保健福祉法の改正によって措置入院を強化するのではなく、事件の背景と優生思想を生み出した社会のあり方を問い直し、障害のある人を含むすべての人の人権と尊厳を尊重する共生社会を実現する必要がある。こうした観点から、政府は障害のある人の尊厳を脅かすあらゆる言動に対して強く抗議の意思を表明するとともに、この事件についても慎重な検証と抜本的な対応を図るべきである。

2011年に障害者基本法が改正され、障害者「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と規定し、障害者に難病に起因する心身の機能の障害がある方も含まれることになったが、実際には筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群や線維筋痛などの多くの難治性疾患が、障害者福祉をはじめとする多くの障害者施策の対象から除外され、「制度の谷間」に置かれている。
 障害者総合支援法において、障害福祉サービス等を利用することのできる障害者の範囲に難病患者等を加えられたが、2015年7月時点で332疾患にとどまり、対象疾患を病名で区切っているため、多くの疾患が福祉の対象にもならない。
 身体障害、知的障害、精神障害のある人でも障害者手帳の基準に合わない人は支援が受けられない。例えば中軽度の聴覚障害、発達障害、高次脳機能障害などである。障害者手帳がないことによって、障害者総合支援法の福祉サービスが受けられないばかりでなく、障害者雇用促進法による割り当て雇用制度の対象にもならず、税制上の障害者控除や交通運賃の割引制度などほとんどの障害者支援から除外されている。
 前述のように障害者基本法が障害者権利条約の影響により2011年に改正され、障害者の定義・範囲に難病患者を含むすべての障害者を含めることとなったものの、この法律は理念法であり、(障害者総合支援法の2012年の改正で一部の難病患者を含めることとなったことを除いて)具体的な支援の利用資格を定める各種の法律の改正がなされていないために、引き続き「谷間の障害」が残されているものである。
 政府はこの状態について、障害者権利条約の障害の人権モデルの考え方に違反している。「機能障害の種類と程度」で対象を限定する現在の政策を改め、障害者権利条約が示しているように「機能障害と障壁の相互作用に伴い生活の困難がある人」を障害者と認め、この困難をなくして平等に社会参加するために支援の必要な人をすべて対象とするよう法制度の改正が必要である。

全ての障害のある人が格差なく必要な支援等を受けることができるよう、政府は障害種別や障害の等級、手帳の有無等による医学モデルにもとづいた福祉及び雇用施策の実施を改めること。
第2条
定義
19.障害者差別への取組については、第 1部「総論」、第 1条「目的」及び第 5条「平等及び無差別」参照。

20.2008年 3月バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する関係閣僚会議において決定した「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」は、ユニバーサルデザインを、施設や製品等については新しいバリアが生じないよう誰にとっても利用しやすくデザインするという考え方としており、ユニバーサルデザインの推進に関しては、一部の関係者のみによる取組とするのではなく、国民一人ひとりの課題であるととらえ、社会全体で取り組みを進めていくことが重要であり、そのために、関係者相互による積極的な情報交換・情報共有が不可欠であり、こうした取組を促進すると規定している。 

障害者権利条約は、すべての人のために不可欠な権利として人生の全局面において基盤となるアクセシビリティの保障とICT(情報コミュニケーション技術)の利活用を位置づけている。しかしながら、わが国では強制力のある法制度や施策が不十分で、技術や指針があってもそれを必要とする人に届いていない。また、利活用のためのリテラシー教育や支援者の育成も不十分。
 アクセシビリティを「施設及びサービス等の利用の容易さ」と和訳したことにより、本来の概念を狭め、必要とする施策を抽象的かつわかりづらいものとしている。また、アクセシビリティの論点が散見され、的も絞りにくい。

政府は、すべての地域のあらゆる場面で、手話が言語として使用されるために、必要な財政的な措置を講ずること。また、その他の非音声言語についても、これを言語と認めること。

第3条
一般原則 
21.我が国は条約の批准に当たって障害者権利条約の趣旨を踏まえて法整備等を
行ったが、本条に掲げる一般原則の各項目の趣旨についても以下のとおり対応
した。

22.第 3条(a)及び(c)については、2011年の障害者基本法の改正において、全ての障害者が、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提として、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと等を基本原則とすることを定めており、障害者の社会への参加・包容を促進している(障害者基本法第 3条)。地域社会への包容については、第19条「自立した生活及び地域社会への包容」等を参照。

23.第 3条(b)及び(e)については、第 1部「総論」及び第 5条「平等及び無差別」参照。

24.第3条(d)については、2012年に制定された障害者総合支援法においては、 2011年の障害者基本法改正を受け、障害者総合支援法第 1条の 2において、障害者総合支援法が目指すべき基本理念が制定された。具体的には、全ての国民が基本的人権を享有する個人として尊重されること、障害の有無によって分け隔てられることなく共生する社会の実現、身近な場所において必要な支援を受けられること、社会参加の機会の確保、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保されること、社会障壁の除去等の理念が規定されている。

25.第 3条(f)については、第 9条「施設及びサービス等の利用の容易さ」参照。第 3条(g)については、第 6条「障害のある女子」参照。

26.第 3条(h)については、教育基本法第 3条において、自己の人格を磨き、あらゆる機会にあらゆる場所で学習ができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならないとされている。また、同法第 4条において、全て国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を保障され、また、国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じることとされている。
第4条
一般的義務 
 第4条1について、

27.障害者基本法は、何人に対しても、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為を禁止している(障害者基本法第 4条第 1項)。障害者基本法第 3条において、全ての障害者が基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提として、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されることを規定している。

28.また、障害者権利条約第 2条に定義されている「ユニバーサルデザイン」の製品、サービス、設備及び施設、障害者に適した新たな機器等の研究、開発、促進、情報提供等に関しては、第 3次障害者基本計画(Ⅱ-3)の「各分野に共通する横断的視点」の一つとして、障害者の社会への参加を実質的なものとし、障害の有無にかかわらず、その能力を最大限に発揮しながら、安心して生活できるようにするため、ソフト、ハードの両面にわたる社会のバリアフリー化を推進し、アクセシビリティの向上を図るとしている。

29.障害者基本法第22条及び第2次障害者基本計画(Ⅲ7.(2)))において、国及び地方公共団体が、情報の利用におけるバリアフリー化のための施策を講じることとされており、「日本工業規格(JIS X8341-4)高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第 4部:電気通信機器」を 2005年に制定した。

第4条3について、

30.障害者基本法では、内閣府に、障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業の従事者、学識経験者 30人以内で構成される審議会として「障害者政策委員会」を置くこととしている。(障害者基本法第 32条、第 33条)現在、政策委員会は 28名であり、半数以上が身体障害(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、盲ろう)・知的障害・精神障害(発達障害を含む。)・難病の本人又はその家族からなる団体の方々で構成されている。

31.また、政策委員会において、「障害者基本計画」の策定又は変更について意見を聴くこととされているほか、障害者基本計画についての調査審議、実施状況の監視などを行い、必要に応じて内閣総理大臣に対して意見を述べること等ができることとされている。(障害者基本法第11条第 4項及び第 9項、第32条)

32.また、国及び地方公共団体は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を講ずるに当たっては、障害者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならないこととされている。(障害者基本法第 10条第2項)

33.地方における意思決定過程の関与としては、障害者基本法において、都道府県や市町村において、当該都道府県又は市町村の障害者施策の総合的かつ計画的な推進について調査審議し、及びその実施状況を監視する合議制の機関を置く(市町村においては「置くことができる」)こととされている。2014年3月末時点で、全ての都道府県が合議制の機関を置いており、市町村については全体の 48.3%である841市町村が置いている。(障害者基本法第 36条)

34.都道府県及び市町村の障害者計画の策定又は変更に当たっては、この合議制の機関から意見を聴くこととされているほか、この合議制の機関は、当該計画についての調査審議、実施状況の監視などを行うことができるとされている。(市町村の場合、合議制の機関を置いていない場合は、障害者その他の関係者の意見を聴くこととされている。)(障害者基本法第 11条第5・6・9項)

35.障害者総合支援法第 87条において、厚生労働大臣は、障害福祉サービス等の提供体制を整備し、同法に基づく支援の円滑な実施を確保するための基本指針を定めることとされているが、基本指針の作成又は変更に当たっては、障害者等及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じることとされている。また、同法第88条及び第 89条において、市町村及び都道府県は、基本指針に即して、障害福祉サービスの提供体制の確保等、同法に基づく業務の円滑な実施に関する障害福祉計画を定めることとされているが、障害福祉計画の作成又は変更に当たっては、障害者等及びその家族並びに障害者等の福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者等により構成される協議会の意見を聴くよう努めることとされている。 

現状では、移動支援、ホームヘルプの時間数、障害者福祉と介護福祉の併用、社会資源の整備状況等の点で、市町村間の格差が大きくなっている。政府は、すべての地域において必要なサービス提供がなされるよう、地域間格差の是正のために必要な法制・財政上の措置を講ずること。

政府は、障害者関連予算の配分を見直すと同時に、ニーズを基本とした支援提供へ転換し、そのための財政措置を講じること。

政府は、投入した公費の費用対効果を重視する観点から、就労継続支援A型事業等で営利企業等が給付費を不適切に活用している実態を把握すること。

日本障害者協議会(JD)のICT利活用実態調査(2007年)では、パソコン:72.1%、インターネット:68.6%、携帯電話:55.5%が「困ったことがある」と回答している。その後の調査はほとんどされていない。実態調査が不可欠である。

日本の締約国報告第28項では.「ソフト、ハードの両面にわたる社会のバリアフリー化を推進し、アクセシビリティの向上を図るとしている」とあるが、「今後、一層の実効性向上を図る必要がある」こと、および、技術や機器の積極的な活用には、今後、「利用促進面での支援施策の検討が不可欠である」ことを記述すべき。
理由=現状、ユニバーサルデザインに配慮した製品開発は「努力義務」であり、実効性があがっていない。また、「日本工業規格(JIS X8341-4)」等の指針はあれど、実態としては、障害者の情報通信利用において、機器、ソフトウェア及びサービスは十分に利活用されていないことを、課題として明記する必要がある。


政府は、障害者に関わるあらゆる法律・制度の検討ならびに実施過程において、障害者ならびに障害者団体の実質的な参画を得るための措置を講ずること。この措置を、地方自治体における同様の過程においても実施されるよう、実態把握と必要な措置を講ずること

地方自治体における障害者の参加のための合議制の機関への多様な障害者の参加を保障すべきであり、そのための基礎的環境整備と合理的配慮を確保すべきである。
説明=日本の締約国報告第33-34項ではこの合議制の機関で自治体レベルでの障害者の関与がなされているとしている。内閣府のウエブサイト(障害者施策/地方公共団体の取組み)には、2014年3月31日現在のその設置状況と委員構成が紹介されている(2017年8月31日閲覧)。
 それによればこの合議制機関の設置義務のある47都道府県と20指定都市の合計67機関に合計1277人の委員がおり、障害のある委員は261人(20.4%)、障害のある人の家族の委員は192人(15.0%)である。障害のある委員の中では、身体障害者が190人(72.8%)、知的障害者が19人(7.3%)、精神障害者が32人(12.3%)、その他の障害者が20(7.7)となっている。
 任意設置となっている1722市区町村では47.7%に当たる821市区町村に設置されており、821機関に合計12,707人の委員がいる。そのうち障害のある委員は1432人(11.3%)、障害のある人の家族の委員は1437人(11.3%)である。障害のある委員の中では、身体障害者が1356人(94.7%)、知的障害者が21人(1.5%)、精神障害者が45人(3.1%)、その他の障害者が16(1.1)となっている。
 このように自治体の機関には障害者の参加が少なく、とくに市区町村では知的障害者と精神障害者の参加が少なく、難病/慢性疾患のある委員については内閣府の調査項目に掲げられてもいない。障害者基本法第36条で、様々な障害者の意見を聞くことが出来るよう委員構成に配慮することを自治体に求めていることに反する事態であり、障害者権利条約第4条3項にも反する。
 政府は、「みんなの会議(アクセシブルミーティング)」(共用品推進機構)の普及などにより、知的障害者、精神障害者、盲ろう者、難病者などが政策決定過程に参加できるようにするために地方自治体を促すべきである。

障害者権利条約において認められる権利に関する研修を開催するにあたり、聴覚障害者の情報およびコミュニケーション保障を担う手話通訳者の労働実態や健康問題を学ぶことは重要であることから、研修内容に含めることが必要

第5条
平等及び無差別

36.障害者基本法において、基本原則として、障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害することを禁止するとともに、障害者への差別とならないよう、障害者が個々の場合において社会的障壁の除去を必要とするときは、その負担が過重でない場合には、その障壁を除去するための措置が実施されるに当たり、合理的な配慮がされなければならない旨規定している。(障害者基本法第 4条第 1項、第 2項)

37.障害者差別解消法において、「障害を理由とする差別の禁止」として、行政機関等及び事業者に対し、障害を理由として不当な差別的取扱いをすることにより障害者の権利利益を侵害することを禁止するとともに、障害者が個々の場合において社会的障壁の除去を必要とするときは、その負担が過重でない場合には、障害者の権利利益を侵害しないよう、その障壁を除去するための措置が実施されるに当たり、合理的な配慮をしなければならない(事業者に対しては、合理的な配慮をするように努めなければならない)旨を規定している。(障害者差別解消法第 7条、第 8条)

38.また、障害者差別解消法において、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するために以下の措置等を定めている。
(1)行政機関等に対し、不当な差別的取扱いを禁止し、過重な負担がない限り社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮を行うことを義務付けるとともに、各職員が適切に対応するための要領の作成を義務(地方公共団体は努力義務)付け。
(2)事業者に対し、不当な差別的取扱いを禁止し、過重な負担がない限り社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮を行うことに努めるよう義務付けるとともに、主務大臣が対応指針(ガイドライン)の作成並びに報告の徴収、助言、指導及び勧告を行うことにより事業者の自主的な取組を促進するための措置を規定。
(3)相談及び紛争防止等のための体制の整備、啓発活動、障害者差別解消支援地域協議会等の障害者差別解消のための支援措置を規定。 

障害者差別解消法及び障害者雇用促進法に基づく救済の仕組みの稼働状況を把握し、必要であれば、新たな人権機関の設置を含む必要な措置を講じること。

政府は、障害者差別解消法に基づく民間事業者による合理的配慮の提供を義務化すること。

政府は、障害者雇用促進法において事業主による合理的配慮の不提供を差別と定義すること。

障害者差別解消法を制定するために政府が設置した「障がい者制度改革推進会議差別禁止部会」の2012年の「意見」では、市町村レベルの相談機関と都道府県レベルの調停機関の設置を提言していたが、政府は「行政肥大化防止等の観点から」(内閣府、地方公共団体向けQ and A)こうした機関を設けないこととして法案を作成した。このため相談を受ける機関が明確でなく、この法律の実効性がきわめて弱いばかりでなく、障害者差別にかかわる相談の内容も件数も事例の経過も不明であり、事例を通じて共通理解を図ってゆくこともできないでいる。
 日本に対する事前質問事項で、法改正による「相談や紛争解決の仕組み」の設置の必要性についての政府の認識を質問し、法律改正の予定の有無を質問してほしい。

■<事例・エピソード>
○てんかんがあるので、自動車運転免許を取得するうえで制約がある。

○体調が悪くなって病院に行こうと電話した際、ダウン症であることを伝えると診察できないと断られた。

○パソコン教室に通おうとしたところ、障害を理由に断られた。

○障害があるという理由で差別され、話しかけても話し相手をしてくれない。仲間外れにされる。
第6条
障害のある女子
39.障害者基本法において、施策の基本方針として、障害者の自立及び社会参加のための施策が、障害者の性別等に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない旨規定している(障害者基本法第10条第 1項)。また、第 3次障害者基本計画及び障害者差別解消法に基づく基本方針及び第 4次男女共同参画基本計画には、障害に加え、女性であることで更に複合的に困難な状況におかれている場合に配慮が必要である旨、明記している。また、政策委員会において、第3次障害者基本計画の実施状況についての議論を行う中で、障害のある女性委員から障害のある女性の課題について意見を伺い、議論を行った。

40.売春防止法等に基づき、都道府県に設置された婦人相談所において、障害者を含め、配偶者等からの暴力やストーカー被害にあっている女性等からの相談に応じるとともに、必要に応じて一時保護を行っている。また、中長期的な支援が必要な方に対しては、婦人保護施設において、必要な保護支援を行っている。なお、婦人保護事業に関する都道府県からの実施状況報告によれば、2014年度に婦人保護施設に入所していた者のうち4割は、身体障害、知的障害、精神障害あるいは何らかの疾患を抱えている。

41.なお、本条に関しては、政策委員会より、次のような指摘がなされている。(より詳しくは、付属文書を参照のこと)
障害者権利条約第6条「障害のある女子」に対応するため、障害女性の視点からの記述及び統計を充実させるとともに、例えば、福祉施設での同性介助を標準化するなど、女性に重点を置いた政策立案を推進する必要がある。また、国や地方公共団体の政策を決定する様々な審議会や有識者会議の委員構成については、ポジティブ・アクション ※の取組が推進されており、政策委員会においても、こうした視点・取組が必要である。

※男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会に係る男女間の格差を改善するため必要な範囲内において、男女のいずれか一方に対し、当該機会を積極的に提供すること

障害者の実態に関する調査データが少ない上に、性別の比較ができるものは一層少な く、政府にジェンダーへの意識そのものがほとんどない。同性介護の保障も十分とは言えない。

障害のある女性、性的マイノリティの複合的差別について定めた法律がない。障害者基本計画に、複合的差別の記載はあるが、法制度上の強制力はない。

障害のある女性の差別実態や虐待・性暴力等と、貧困との関連する統計的なデータがない。(31条とも関連する)

障害のある女性の出産や子育てに対する特別な支援制度がない。

障害のある男性が、障害のある女性を差別するという構図がある。

■<事例・エピソード>
○春防止法などに基づいて行政に保護される女性のなかには、発達障害のある人も多い。しかし、福祉的な支援が提供されていない実態がある。

○結婚・出産したのちに筋ジストロフィーを発症した。相手の家族から「遺伝性の病気があるとわかっていたら、嫁にもらわなかった」と言われた。
第7条
障害のある児童

42.障害者基本法において、施策の基本方針として、障害者の自立及び社会参加のための施策が、障害者の年齢等に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に策定され、及び実施されなければならない旨規定している(障害者基本法第 10条第 1項)。また、第 3次障害者基本計画及び障害者差別解消法に基づく基本方針には、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する旨明記している。

43.障害者基本法において、障害者がその年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、国及び地方公共団体は、障害者である児童生徒及びその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならないと規定している。

44.児童福祉法第1条~第3条において、全て児童はひとしくその生活を保障され、愛護されなければならないとし、国及び地方公共団体は、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負うとしている。また、これらの規定は児童に関する法令の施行に当たって常に尊重されなければならないとされている。同法の規定も踏まえ、都道府県は児童福祉法の施行に関し、児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行い、これに基づいて必要な指導を行っている。こうした都道府県の事務は児童相談所において対応している。

45.保育所保育指針において、子供に障害や発達上の課題が見られる場合には、市町村や関係機関と連携及び協力を図りつつ、保護者に対する個別の支援を行うよう努めることとされている。
(特別児童扶養手当等の支給については、第28条「相当な生活水準及び社会的な保障」参照。)  

児童の権利に関する条約第3回最終所見(2009)は財政配分が子どもの権利を履行できるものとなっていないことに懸念を示し、子どものための予算を優先的に確保することを求めている。予算措置の不十分さから生じる障害のある子どもの権利侵害を改善しなければならない。

障害者基本法の「障害者である児童」という表現は、「障害のある児童」に改めるべきである。

児童の権利条約第23条(障害児の権利)は、障害に対応した特別なケアは可能な限り無償でなければならないとしているにもかかわらず、療育や訓練、補装具等を利用するさいに費用負担が生じている。また一般施策である保育所・幼稚園と療育の二重に費用負担する実態がある。障害者基本法第17条(療育)に無償原則を書き込み、無償化の措置を講じることが必要である。

乳幼児健診の受診率は全国平均で9割を超えているが、未受診児の対応、障害が疑われた場合のシステムが自治体ごとに異なる。質の高い健診とその後のフォローが自治体の責任で実施できるようガイドラインの作成と財政措置を講じることが必要である。

「自己に影響を及ぼす事項に意見を表明する権利」(本条約7条)を保障するためには、家庭や、保育、教育の場において、障害のある子どもが意見を聞いてもらえるような人的・物的措置が求められる。

児童発達支援や放課後等デイサービスは営利企業の参入が著しい。規制措置とともに実施主体を公的セクターにするための財政措置をとるべきである。

障害児の貧困、とくに一人親世帯における障害児の貧困の統計がない。(31条とも関連する)

児童支援施設に保護された子どもたちに障害のある子ども、もしくは貧困や養育放棄によって障害を負った子どもが増えている。

「もうけ本位」の放課後等デイサービスなどでは、「権利としての発達支援」や「ゆたかな地域生活の支援」とは遠い実態がある。障害のある子どもの意見表明に必要な相談支援・ソーシャルワークの体制が決定的に不備である。(28条とも関連する)

障害児入所施設でも被虐待児の入所が増えており、児童養護施設と同様に機能の充実を図るべき。(16、28条とも関連する)

障害を持つ子どもの権利保障という観点よりも、親の意向によって決定されているところが大きいのではないか。子どもの意思を第三者が直接聞き取ることが必要。

虐待対応について、18歳未満の障害児に対する養護者による虐待は、障害者虐待防止法のうち、総則などの全般的な規定や養護者の支援についての規定の適用を受けるが、通報や通報に対する虐待対応については、児童虐待防止法が適用される。児童虐待と障害者虐待との整合性が必要。(16、28条とも関連する)

聴覚障害のある子どもの支援と同時に、家族が手話言語を獲得する支援体制の整備が不十分。
第8条
意識の向上 
46.障害者基本法は、障害者の権利についての基本原則を規定しており、国等に対して基本原則に関する国民の理解を深めるよう必要な施策を講じることを義務付けている(障害者基本法第 3条、第7条)。障害及び障害のある人に対する国民の関心、理解を深めるとともに、障害のある人の社会参加意識の高揚を図るため、1995年より、毎年 12月 3日から 9日までの 1週間を「障害者週間」としている(障害者基本法には、2004年改正時に規定が設けられた。同法第9条。)。前後の期間も含め、全国で、官民にわたって多彩な行事を集中的に実施するなど、積極的な啓発・広報活動を実施している。

47.内閣府では、1989年度から、各都道府県・指定都市との共催により、若者への啓発・広報活動の一環として、全国の小・中学生等から、障害のある人とのふれあい体験をつづった「心の輪を広げる体験作文」を、1993年度からは「障害者週間のポスター」も募集し、優秀作品の表彰を行う「心の輪を広げる障害者理解促進事業」として実施している。

48.内閣府では、高齢者、障害のある人、妊婦や子供連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰を行い、その優れた取組を広く普及させることとしている。

49.また、障害者差別解消法において、国及び地方公共団体は、障害者差別の解消について国民の関心と理解を深め、特に、その障害者差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとしている(障害者差別解消法第 15条)。

50.内閣府では、我が国の社会活動の中心的担い手となる青年の能力の向上とネットワークの形成を図るため、「青年社会活動コアリーダー育成プログラム」において、障害者関連活動等の社会活動を行っている日本青年海外派遣及び外国人青年日本招へいといった国際交流を実施している。

51.障害のある方々が日頃培った技能を互いに競い合うことにより、その職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある方々に対する理解と認識を深め、その雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの後援を行っている。

52.障害者基本法第16条第 2項において、「国及び地方公共団体は、障害者である児童生徒と障害者でない児童生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない」と規定し、学習指導要領等において、障害のある人々などとの触れ合いや、障害のある子供と障害のない子供との交流及び共同学習の機会を設けることについて規定している。

53.「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(以下「人権教育・啓発推進法」という。)第 7条に基づき策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」において、障害のある人の人権を人権課題の一つとして、障害のある人に対する偏見や差別意識を解消し、ノーマライゼーションの理念を定着させることにより、障害のある人の自立と完全参加を可能とする社会の実現を目指して、人権尊重思想の普及高揚を図るための啓発活動を充実・強化することを明記している。法務省の人権擁護機関(第33条「国内における実施及び監視」参照)では、当該計画に基づき必要な施策を推進しているところ、「障害のある人の自立と社会参加を進めよう」を啓発活動の年間強調事項の一つとして掲げ、講演会や座談会の開催、啓発冊子等の配布、各種イベントにおける啓発活動を実施している。

54.法務省では、国家公務員等の理解と認識を深めることを目的とした、中央省庁の職員を対象とする「人権に関する国家公務員等研修会」を開催しているところ、2014年 2月には「障害のある人の人権」をテーマに取り上げ、実施した。また、都道府県及び市区町村の人権啓発行政に携わる職員を対象に、その指導者として必要な知識を習得させることを目的とした「人権啓発指導者養成研修会」を開催しているところ、その中で、「障害のある人の人権」をテーマとする講義も実施している。

国や地方自治体の議員、警察を含む行政職員、さまざまな専門職、さらに広く国民に対し、CRPDと権利の視点での障害のある人たちへの理解を深めるキャンペーンを実施する必要がある。その際には必要な予算化と計画、実施、評価のすべての過程に障害者及び障害者団体の参加を必須とすること。

<実態>

○平成18年度障害者の社会参加促進等に関する国際比較調査(内閣府)では、日本、ドイツ、アメリカで障害に関する意識調査を実施している。それによれば、自国の人口に占める障害者の割合を聴いているが、日本では障害者の割合を10%以下と回答している人が4割強、わからないという回答が15.6%、ドイツ、アメリカでは障害者の割合を30%以上とする回答が2割強と日本との差が大きい。また、精神障害のある人が近隣への転居について、日本では7割以上が意識すると回答しており、ドイツとアメリカでは7割以上が意識せず気軽に接すると回答している。この国際比較の調査から、日本においては、障害のある人に対する理解を深めていく必要があることがわかる。
 また、2007年には、警察官が知的障害についての理解がないために、薬物依存と考え、パニックを起こすような声かけを行い、警察官の抑え込みによって25歳の青年が命を落とした事件があった。
 最近では、2016年7月26日、障害の重い人には存在価値がないといった優生思想をもった犯人が、重度障害者の入所施設で19人を殺害した事件が起こった。19人の障害者が匿名報道であったことも含め、障害者への偏見・差別を助長する事件であったが、政府はそれに対して、障害者への安心を保障し、差別を払しょくする有効な対応が行わなかった。

障害者差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必な啓発活動行うと しているが、 病気による内部障害は外からは見えないために、障害を理解されることが困難で、未だに詐病の扱いを受けている疾患がある現状があることを記すべきである。
 理由=ME/CFSはWHOの国際疾病分類において神経系疾患と分類されているにもかかわらず、未だに精神的なものであるかのような扱いを受けており、基本的人権が守られているとは到底いえない。国が率先して啓発活動を行うべきである。

障害者権利条約がまったく地域社会に普及・浸透されていない。障害者基本法にもとづく自治体の「障害者基本計画」も、福祉担当の部署の範囲にとどまり、全庁的な計画になっていない。

障害者に対する正しい認識をもてるよう、マスメディア、警察や行政など関係機関への研修や教育を位置付けるべき。

小学生や中学生時代から障がいについて学ぶ機会をより増やすことで、将来、発症した時に、早めに治療や相談に結びつけるべき。

施設やグループホームの建設反対問題については、行政からの積極的な介入がされていないことがある。

■<事例・エピソード>
○外出した際、駅員や店員などに用件や注文を伝えようとすると、店員がわたしではなく介助者に対して聞く。

○バスに乗車した際に、運転手がマイクで「障害者が乗車してきたので席をゆずってください」と大きな声でアナウンスされて不快な思いがした。

○障害があるという理由で恋愛の対象としてみてもらえない。
第9条
施設及びサービス等の利用の容易さ

55.障害者基本法において、国及び地方公共団体に対して、公共的施設について、障害者が円滑に利用できるような施設の構造及び設備の整備等の計画的推進を図ることを義務付けている。また、公共的施設を設置する事業者に対して、同様の努力義務を課している(障害者基本法第21条第 1項、第2項)。情報、通信その他サービスに関しては、障害者基本法において、国及び地方公共団体が、情報の利用におけるバリアフリー化のための施策を講じることとされているほか、災害その他の事態の場合に障害者に対しその安全を確保するため必要な情報が迅速かつ的確に伝えられるよう必要な施策を講ずるものとされている(同法第 22条第1、2項)。また、事業者に対して、障害者の利用の便宜を図ることについて努力義務を課している(同法第 22条第 3項)。

56.障害者基本計画においては、分野別施策として、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間など生活空間のバリアフリー化を推進し、自宅から交通機関、まちなかまで連続したバリアフリー環境の整備を推進することを生活環境施策の基本方針としており、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化を推進することとしている。

57.「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(以下、「バリアフリー法」という。)」により、旅客施設・車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等の新設等の際の「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の施設等に対する適合努力義務を定めるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、2020年度末までの整備目標を定め、バリアフリー化の推進を図っている。例えば、旅客施設に関して、1日の乗降客数が 3,000人以上の旅客施設については原則 100%バリアフリー化することを目標と定め、整備を進めており、着実に進捗している一方、リフト付きバスや福祉タクシー等の車両については、整備目標を達成するため、導入を更に進めていく必要がある。また、移動等円滑化の基準と実績については、毎年度公表している。

58.バリアフリー法の基本方針二の 1の二において、バリアフリー化が義務化されていない特定建築物に対してもバリアフリー化の積極的な対応が望ましいとして、設計上の対応可能性やコスト増への対応可能性を勘案しながらバリアフリーを目指している。また同方針四の 1の(1)より、移動等円滑化の進展の状況等を勘案しつつ、より検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めることにより、「スパイラルアップ」(段階的・継続的改善)を図っている。

59.バリアフリー法第4条において、国は教育活動等を通じて移動等円滑化の促進に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない旨規定されている。具体的には、高齢者、障害者の疑似体験等を内容とするバリアフリー教室を全国各地で開催している。また、同法第 8条第 5項において、公共交通事業者等は、その職員に対し、移動等円滑化を図るために必要な教育訓練を行うよう努めなければならない旨規定されており、各事業者において障害者の参加による教育訓練等を実施している。

60.施設についての研究及び開発の実施又は促進については、バリアフリー法第52条第 1項において、国は、移動等円滑化を促進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めなければならないこと、同条第 2項において、国は、移動等円滑化に関する情報提供の確保並びに研究開発の推進及びその成果の普及に努めなければならない旨規定されている。これらに基づき、例えば、視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査研究等を行い、公共交通事業者等に公表するとともに、旅客施設のバリアフリー整備ガイドライン等の改訂に反映させている。

61.公共交通、建築物の移動等円滑化基準においては、主要な設備等を視覚障害者に点字その他の方法により示すこと、公共交通の基準には聴覚障害者が文字により意思疎通を図るための設備を備えなければならないことが設定されている。また、バリアフリー法に基づく取組みの現状把握、課題の抽出、対応方策の検討や提案等を行うため、関係する全国の高齢者・障害者等団体、施設設置管理者団体等、学識経験者、行政機関等が一堂に会し、全国バリアフリーネットワーク会議を開催している。

62.警察では、バリアフリー法に基づき、障害者等が道路を安全に横断できるよう、音響式信号機、経過時間表示機能付き歩行者用灯器、歩車分離式信号等のバリアフリー対応型信号機や、高輝度標識、横断歩道上における視覚障害者の安全性及び利便性を向上させるエスコートゾーン等の見やすく分かりやすい道路標識等を整備している。

63.情報利用のバリアフリー化については、障害者基本法第22条第1項において、国及び地方公共団体が、情報の利用におけるバリアフリー化のための施策を講じることとされており、その一環として、障害者基本計画(Ⅲ6.(4))において、地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティの向上等に向けた取組を促進することが明記されていることから、国及び地方公共団体におけるウェブアクセシビリティの維持・向上の支援に資するための手順書である「みんなの公共サイト運用モデル」を公表(2005年策定、2011年改定)している。

64.字幕放送等の普及につき、障害者基本計画(Ⅲ6.(2)))において、放送事業者への制作費助成、「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に基づく取組等の実施・強化により、字幕放送(CM番組を含む)、解説放送、手話放送等の普及を通じた障害者の円滑な放送の利用を図ることを明記している。具体的には、「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」(以下「障害者利用円滑化法」という。)(同法第2条第4項、第 3条、第 4条、第 5条)に基づき、字幕・解説・手話番組の制作費等の一部助成を実施している。また、放送法第 4条第 2項において、放送事業者は字幕番組・解説番組をできる限り多く設けるようにしなければならないとする努力義務を規定している。なお、「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」は 2017年度までの字幕・解説・手話放送の普及目標を策定・公表したものであり、その進捗状況について毎年度、把握・公表している。

65.通信・放送役務の提供又は研究開発につき、障害者基本法第22条第 1項において、国及び地方公共団体が、情報の利用におけるバリアフリー化のための施策を講じることとされていること、障害者基本計画(Ⅲ6.(1))においても、障害者の情報通信機器及びサービスの利用における情報アクセシビリティの確保及び向上・普及を図るため、障害者に配慮した情報通信機器及びサービス等の企画、開発及び提供を促進することが明記されていることから、障害者の利便の増進に資する通信・放送役務の開発を行うための通信・放送技術の研究開発を行う者に対し助成を実施している。障害者利用円滑化法(同法第 2条第 4項、第 3条、第 4条、第 5条)に基づき、身体障害者向け通信・放送役務の提供又は開発を行うものに対する助成を実施している。

66.警察では、主として聴覚や言語に障害のある者が、犯罪被害に遭ったり犯罪を目撃したりした場合に警察への緊急通報を行うため、各都道府県警察においてFAX110番及びメール 110番を開設している。
(意思疎通支援については、第 21条「表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会」参照。)
(本条に関する政策委員会からの指摘に関しては、第21条「表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会」の最後のパラグラフを参照。)

締約国として、accessibilityを法制度 に位置づけ、アクセシビリティ基準をもうけ、すべての公共 サービス、公共施設、公共交通におけるデータ収集と監視・ 制裁のメカニズムの強化が必要である。

手話通訳・要約筆記派遣事業は、市町村事業に位置付けられており、派遣時間数や通訳者の人数などに市町村ごとの格差が生じている。

行政窓口などでの情報保障について、筆記ボードは普及しているが、手話通訳者の配置は進んでいない。

①配置基準への手話通訳の明示
官公庁(例:障害者福祉担当部局がある部署)等聴覚障害者とのコミュニケーションが発生する公共施設には手話通訳できる者(文字によるコミュニケーションでは代替できない)が配置されるべきであることから、その基準を策定すべきである。
 公共施設の代表的存在である市町村への手話通訳者の配置状況を見ると、総数1,718(2015年)ある市町村(基礎自治体)のうち手話通訳者を雇用している自治体数は686市町村と半数以下となっている。
 またこのうち正職員は63人であり、聴覚障害者のコミュニケーション環境が保障されているとは言えない状況となっている。
②研修の基準
 手話をコミュニケーション方法とする聴覚障害者とのコミュニケーションについては文字コミュニケーションでは代替できないことから、当該研修について必要性を記載するべきである。
③手話放送の数値目標
 手話放送時間を着実に増加させるために数値目標を明確に示す必要がある。

公共交通への安全なアクセスが不十分。とりわけ駅舎やホー ムの改善が必要である。

公共交通機関の割引制度が、精神障害者に対しては適応されていないという障害種別間格差がある。精神障害者に対しても同等の支援が受けられるように義務化して欲しい。政府から交通関係各社に指導を徹底することが課題である。

点字ブロックは、行政が予算の範囲で敷設しており、ニーズや実態に合っていない。

災害時 や緊急時の情報アクセス対策が必要である。
音声情報の 文字化(点字含)、文字情報の音声化、手話通訳者・要約筆記者の配置、分かりやすい情報提供など。とりわけ、テレビ の字幕放送、手話放送、解説放送の完全実施が必要。


<事例・エピソード>

○銀行のATMやコンビニエンスストアなどで、入り口や通路が狭いため利用しづらい。

○電動車いすに乗って利用した際に、バスや電車などの公共交通機関で断られた。

○バスを利用しようとしたら「乗車1週間前に連絡してもらわないと乗車してもらうことはできません」といわれて困った。

○美容室で「シャンプー台に段差があるので、車椅子の方は介助の方と一緒にいらしてください」と拒否された。

○電車の路線図や券売機にルビなどがないため、書かれていることを理解して購入することができない。
第10条
生命に対する権利

67.日本国憲法13条は、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする旨定める。障害者基本法においては、障害者がその尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを基本原則として規定しており(障害者基本法第3条)、また、国及び地方公共団体に対して、障害者の自立と社会参加の支援のための施策を総合的かつ計画的に実施する責務を課している(同法第 6条)。

尊厳死法制化や出生前診断などは、「障害の否定」につながり、障害のある人を軽んじる、劣った人という理解を助長・増長するという議論がある。

出生前診断が選択的人工妊娠中絶につながり、いのちの選別につながっているといった議論がある。十分な情報提供とカウンセリングなど措置を講じるべき。
第11条
危険な状況及び人道上の緊急事態 
68.東日本大震災においては、被災地全体の死者数のうち 65歳以上の高齢者の死者数は半数以上であり、障害者の死亡率は被災住民全体の死亡率の約2倍となった。このほか、消防職員や民生委員など支援者についても多数の犠牲者が出た。こうした教訓を踏まえ、2013年 6月に災害対策基本法を改正し、当該市町村に居住する、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要するもの「要配慮者」(災害対策基本法第8条第2項第15号)のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(以下「避難行動要支援者」という。)に対する実効性のある避難支援、安否の確認その他の避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために必要な措置がなされるよう、避難行動要支援者名簿の作成を市町村長に義務付けるとともに、平常時及び災害発生時において避難支援者に情報提供を行うための制度を設けた。また、当該法改正を受けて、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(2006年 3月)を、全面的に改定し、避難行動要支援者名簿の作成・活用に係る留意点・参考となる事項等をまとめた「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」を 2013年 8月に策定・発表した。さらに、同法改正においては避難所における生活環境の整備等に関する努力義務規定も設けられ、この取組を進める上で参考となるよう、避難所(福祉避難所を含む)運営に当たって要配慮者への支援に関して留意すべき点等を盛り込んだ、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を 2013年 8月に策定・発表した。

69.2015年 3月に仙台市で第 3回国連防災世界会議が開催され、日本政府は、仙台市、日本財団及び国連国際防災戦略事務局(UNISDR)とともに、本会議を「アクセシブル・カンファレンス」とすることを目指して、施設のバリアフリー化や各セッションにおける日本語及び国際手話通訳、スクリーンへの日本語と英語字幕の表示等、障害者も苦労することなく会議に参加できるよう、様々な取組を行った。また、本会議では、障害者も防災の主要な担い手として、全体会議においてステートメントを行ったほか、ワーキングセッションにおける議論や関連事業に参加し、本会議で策定された新たな国際的な防災の取組指針である「仙台防災枠組 2015-2030」においては、障害者の果たす役割の重要性について明記された。

70.障害者基本法において、国及び地方公共団体は、災害その他の事態の場合に障害者に対しその安全を確保するため必要な情報が迅速かつ的確に伝えられるよう必要な施策を講ずるものとされている(障害者基本法第 22条第 2項)。また、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて防災及び防犯に関し必要な施策を講じなければならないこととされている(同法第 26条)。

71.武力攻撃事態対処法において、武力攻撃事態等への対処においては、基本的人権が尊重されなければならないこととされており、その上で、国民保護法第 9条においては、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、障害者の保護について留意しなければならないこととされている。

72.「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準」「施設基準省令」)(以下という。第 44条第 1項等において、障害者の施設入所支援等を行う施設等は、非常災害に際して必要な設備(消火設備等)を設けるとともに、非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、それらを定期的に従業者に周知しなければならないと定められている。なお、指定障害者支援施設等のほか、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業所や児童福祉法に基づく指定障害児入所施設などにおいても同様の規定を設けている。
 

東日本大震災で障害のある人の死亡率が全住民の2倍だったとの調査を踏まえ、国としてその検証を行なうこと。

防災の計画づくりから、災害発生時の避難や復興の過程においては、障害当事者の実質的な参加を確保し、できるかぎりインクルーシブなものとすること。とりわけ、生命にかかわる住宅などについては、即時に対応すること。

障害者団体等と積極的に連携し、日ごろからの周知や福祉避難所の開設の訓練を行うなど、障害当事者の意見を取り入れた災害緊急時の対策や連絡体制、福祉避難所の推進等を行なうこと。

災害時の安否確認、生命にかかわる避難時などにおいては、障害関係団体などに個人情報を公開して即時に安全を確保できるよう、行政と障害関係団体はあらかじめとりきめを交わすこと。

防災・避難計画では、全住民台帳を地区別に活用し、要援護者をはじめとした全住民の安否確認の仕組みを構築すべきである。

バリアフリー仮設住宅が十分に整備されないなど、熊本地震で東日本大震災の教訓は生かされなかった。仮設住宅の整備責任は、国と都道府県にあるため、国の仮設住宅の最低基準のあり方を根本的に見直す必要がある。

障害者の災害時の避難行動や支援継続を確保する計画を充実させるべき。

二次避難所そのものは必要だが、震災直後の混乱時に、一時避難から二次避難へというスムーズな流れは作れない。まず、一時避難所の福祉・介護機能を高める必要がある。

<事例>
○2015年9月大規模な洪水に襲われた茨城県で、自閉症の長女と三女がいる母親が、長女がかつて在籍し、宿泊訓練も積んでいた特別支援学校に避難しようとしたが、同校は避難所になっていなかったため、受入を拒否された。そこで、近くの避難所になっている体育館へ行ったが、長女が突然外に出て行ったり、三女は備え付けのピアノをいじり出すなど落ち着きをなくした。自閉症の人は環境が変わるとパニックになることがよくある。「避難者が増えたらもっと落ち着かなくなる」と考えた母親は1時間で避難所生活を断念せざるを得なかった。

○2016年4月の熊本地震においては、現場レベルまで福祉避難所についての指針や実施基準が浸透していないことがうかがわれた。例えば、施設側は指定福祉避難所であるという認識はあるが、いつ開設したらよいのか、いつ閉じればよいのか、といった基本的な事柄も把握していない事例があった。
第12条
法律の前にひとしく認められる権利 

 73.日本国憲法第13条は、「すべて国民は、個人として尊重される」ことを定めている。また、障害者基本法においては、基本原則として障害者の個人の尊厳について規定している(障害者基本法第 3条)。

74.我が国の民法は、「私権の享有は、出生に始まる」旨規定し(民法3条)、全ての人が権利能力を有することとされている。この点について、障害者であることを理由とした制限は設けていない。

75.認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な者を保護し、支援するための制度として、成年後見制度を設けており、本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐及び補助の 3類型を利用することができる。

76.成年後見人及び成年後見監督人の選任に際しては、本人の意見等一切の事情を考慮すべきものとしているほか、本人(被後見人)の陳述の聴取の機会も確保している(民法第 843条第4項、第852条、家事事件手続法第 120条)。また、選任された成年後見人は、本人の意思を尊重しその身上に配慮する義務を負い(民法第 858条)、これにより、本人の権利、意思及び選好の尊重が図られている。なお、保佐及び補助にもこれらの規定が準用され、又はこれらと同旨の規定が設けられている(民法第 876条の 2第 2項、第 876条の 5第 1項、第 876条の 8第 2項、第876条の10第 1項、家事事件手続法第130条、第139条)。補助については、家庭裁判所が本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない(民法第 15条第 2項)。

77.成年後見人の取消権及び代理権の範囲は民法で明確に規定されており、その行使に当たっては、成年後見人は本人の意思を尊重しなければならない(民法第7条から第 9条まで、第 858条)。保佐人については、同意権及び取消権の範囲が民法で規定されているほか、家庭裁判所は、本人の判断能力の程度や必要性に応じて、審判により、特定の法律行為について個別に保佐人に代理権を付与し、あるいは同意権や取消権の範囲を拡張することができるが、本人以外の者の請求により代理権付与の審判をするには、本人の同意がなければならない(民法第 13条、第 876条の 4)。補助人の同意権及び取消権並びに代理権の範囲については、家庭裁判所が本人の判断能力の程度や必要性に応じて個別に定めることができるが、本人以外の者の請求により同意権等の付与の審判をするには、本人の同意がなければならない(民法第 17条、第876条の9)。

78.家庭裁判所は、後見人、保佐人及び補助人の事務を監督し、いつでも、これらの者に事務の報告等を求めることができる(民法第 863条、第 876条の 5第 2項、第 876条の10第 1項)。このような措置により、司法機関による審査が確保されている。また、本人の判断能力が回復した場合には、家庭裁判所が後見開始、保佐開始及び補助開始の審判を取り消すことができ(民法第 10条、第14条第1項、第18条第 1項)、これにより、障害者の状況に適合した措置をとることを可能としている。

79.成年後見制度(後見、保佐、補助)の利用者数は、2012年末は 164,421件、2013年末は174,565件、2014年末は 182,551件となっており、年々増加している。2014年末における後見3類型の内訳は、成年後見149,021件(約81.6%)、保佐 25,189件(約13.8%)、補助8,341件(約 4.6%)となっている。成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人との関係については、2011年時点では親族が約 55.6%、親族以外の第三者が約 44.4%であったところ、2014年は親族が約 35.0%、親族以外の者が約 65.0%となっており、第三者の割合が大きく増加している。

80.成年後見制度については、例えば、障害者本人が一部の親族により身体的虐待を受け、あるいは年金収入等を搾取されている場合には、成年後見人に選任された弁護士等が、本人の意思を尊重しながら、その安全な居所を確保し、財産を管理することにより、本人の身体及び財産を適切に保護することができるとの指摘がされている。

81.障害者総合支援法に基づく相談支援として、地域の障害者等の福祉に関する様々な問題について、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供や助言等を行う「基本相談支援」等を実施している。また、同法第 77条に基づく市町村の地域生活支援事業として、障害福祉サービスの利用の観点から成年後見制度を利用することが有用であると認められる障害者であって、成年後見制度の利用に要する費用について補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難であると認められるものに対し、当該費用を支給する事業が実施されており、2014年度には 1,360の市町村において当該事業が実施された。

82.「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下「精神保健福祉法」という。)第51条 11の 2において、市町村長は、精神障害者の福祉を図るため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法に基づく審判(民法第 7条の後見開始の審判、同法第 11条の保佐開始の審判、等)の請求をすることができるとされている。

83.なお、本条に関しては、政策委員会より、次のような指摘がなされている。意思決定の支援及び法的能力の行使を支援する社会的枠組みの構築が急務である。また、成年後見制度のうち、特に代行型の枠組みである後見類型の運用に当たっては、最良の支援を提供しても、なお法的能力の行使が困難な場合に本人の権利と利益を守るための最終手段として利用されるべきものであり、かつ、代理人が本人に代わって意思決定をする場合にも、法の趣旨に則り、できる限り本人の意思を尊重するよう制度運用の改善を図る必要がある。また、家庭裁判所の成年後見人の監督業務の負担の在り方についても課題が共有された。(より詳しくは、付属文書を参照のこと)

◆国の報告で書いていないこと

○「判断能力」は、その個人の全ての行為に一律に、また固定的に常時あるのではなく、その対象となる行為、その時の環境により異なるものである。75項では「本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐及び補助の3類型を利用することができる」としているが、これは条約第12条4項の「障害者の状況に応じ、かつ、適合すること」の条件に反する。

○成年後見類型は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」を対象とする(民法第7条)が、「常況」とは、「意思能力があることもあるが、概ね意思能力がない」状態を意味する。後見類型は、本人に意思能力がある場合でも意思能力がないものとして扱い、後見人に取消権と包括的代理権を付与する制度である。一般の場合は、本人に意思能力がある場合の法律行為は有効である。それにもかかわらず「精神上の障害」を理由に、本人の同意なく、意思能力のある場合の法律行為を他人が取消したり代理することは、「他の者との平等」に反し、「障害を理由とする差別」に該当する。

○保佐類型は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」を対象(民法第11条)とし、民法第13条に掲げる重要な法律行為について一律に、保佐人に同意権と取消権を付与する制度である。これらの重要な法律行為の内で、本人が意思能力を有する場合にも、「精神上の障害」を理由に、本人の同意なく他人が取消すことは、「他の者との平等」に反し、「障害を理由とする差別」に該当する。

○78項では「本人の判断能力が回復した場合には、家庭裁判所が後見開始、保佐開始及び補助開始の審判を取り消すことができる」となっているが、本人が全ての行為について、常時「判断能力」が回復することを証明することは困難なため、実質的には、いったん審判を受けるとほとんど永続的に変更できない。また短期間の見直し規定もない。これは、条約第12条4項の、障害者の状況に応じ適合すること、可能な限り短い期間に適用されること、定期的な審査をすることの規定に反する。

○76項では、成年後見人・成年後見監督人の選任に際して本人の陳述の機会を確保しているとしている。しかし、本人が成年後見人・成年後見監督人の候補者を推薦する仕組みや、本人がその選任を拒否する仕組みがない。これは、保佐類型・補助類型も同様である。

○76項では、民法第858条等により、成年後見人・保佐人・補助人が、本人の意思を尊重する義務を負うとしている。しかし、成年後見人への代理権と取消権、保佐人への同意権・取消権付与に当たっては、本人の同意権も拒否権も認められないため、必然的に「本人意思の尊重」規定は無視されやすい。また「本人意思の尊重義務」違反には罰則規定もない。実際には、本人の意思を確認することもなく、ときには本人の意思に反して、後見人等が代理決定をする事例が多い。従って、民法の「本人意思の尊重義務」規定は実効性がなく、条約第12条4項の「障害者の権利、意思及び選好を尊重すること」に反している。

○77項では「成年後見人の取消権及び代理権の範囲は民法で明確に規定されている」となっているが、民法第9条では、日常生活に関する行為以外の全ての法律行為が取消権の対象となっており、また、民法第859条では「後見人は被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する」とされている。成年被後見人は、他の国のように行為無能力者とはされていないので、法的には本人も法律行為を行い得るし、また本人が自分の法律行為を取り消す事もできる。しかし実態としては、民法第9条や859条の規定から、成年後見人が「成年被後見人には行為能力がない」と誤認識をして、日常生活に関する行為以外の全ての法律行為について、本人意思に関係なく代理権を行使している例が多い。障害者施設入所契約に当たって、本人が署名できる場合でも後見人の署名のみで契約したり、銀行が本人名義の口座を成年後見人名義の口座に変更するよう求めたりする事態が放置されている。このような実態は、条約第12条4項の「障害者の状況に応じ、かつ、適合すること」の規定に反している。

〇78項では、家庭裁判所が成年後見人、保佐人、補助人の事務を監督しているとされているが、2015年の成年後見人等による成年被後見人等の財産の横領等の不正は521件発生し、被害総額は約29億7000万円に達している。これは、家庭裁判所の人員不足による監督機能の脆弱性のみならず、後見人等への支援体制や、地域における後見人等と福祉関係者等との連携体制の不備等により助長されているとも言える。

〇79項では、後見類型の利用に大きく偏っている実態が示されているが、本人の法的能力行使への支援や意思決定支援への理解不足、福祉関係者との連携不足、医師の診断書・鑑定書の偏重等が背景にある。

〇81項では、成年後見制度の利用費用を補助する事業(成年後見制度利用支援事業)を1,360市町村が実施(2014年度)としているが、成年後見人報酬の助成を受けた人数は1,026人(2015年4月)にとどまっている。成年後見人・保佐人・補助人の報酬は平均月額約2万円とされている。知的障害者等長期利用が必要であるが、低所得の人が多いため、制度を利用できない場合が多い。これは条約第12条3項の締約国の義務に反する。

〇2013年に成年被後見人の選挙権回復のための公職選挙法等の改正がされたが、成年被後見人・被保佐人は公務員になれないなどの多くの欠格条項が存在している。

◆意見
〇成年後見制度の利用の促進に関する法律が2016年5月13日に施行された。現在、内閣府に成年後見制度利用促進会議が設置され、成年後見制度利用促進基本計画の作成に当たって盛り込むべき事項について審議している。その中では、意思決定支援のあり方、後見人の選任における配慮、利用開始後の柔軟な対応、診断書等のあり方、権利擁護支援の地域連携ネットワークとその中核機関の機能と運営形態、市町村・都道府県・国・関係団体の役割等が検討されている。また中長期的な課題として、障害者権利条約などをふまえ、現在の三類型のあり方や「本人が、必要な支援を、必要な期間、必要な場面に限定して利用できるよう、制度改善すべき」などの指摘があった点を含めて、今後さらなる検討が加えられるべきであると指摘される見通しである。

〇成年後見人への包括的代理権と取消権、保佐人への同意権と取消権付与は、本人の法的能力行使を阻害する制度であり、成年後見制度利用促進法で予定されている改革でもその点は改善されない。補助類型を基本として「本人が、必要な支援を、必要な期間、必要な場面に限定して利用できる制度」に根本的に改善すべきである。

〇さらに、本人による法定代理人候補者の推薦ができること、家庭裁判所による不定代理人の選任について本人が拒否できる仕組みを設けることが必要である。

〇「意思決定支援」については、情報提供や意思形成の支援により本人の判断能力を高め、本人が単独で自己決定できるようにする「判断能力を高める支援」と、それでもなお本人が単独では自己決定できない場合に、本人の意思と選考に基づいて、本人の判断能力を補う支援としての「判断能力を補う支援」の、二つの要素がある。この「判断能力を補う支援」として、成年後見制度の「法定代理」が必要である。

〇「法定代理」は、本人のためによいと代理決定者が判断して決定することであり、その中には、「本人の意思と選考に基づいて代理決定する」という場合と、「代理決定者が本人のためによいと判断すれば、本人の意思に反して決定してもよい」とする場合もある。前者は「判断能力を補う支援」としての「意思決定支援」であり、後者は「意思決定支援」ではなく「本人の法的能力を排除する代替決定」である。

〇関係者の間では、「代理決定は必要だが、それは意思決定支援ではない」とする主張もある。しかし「意思決定支援ではない代理決定」を認めることは、「本人の意思や選好に反する代理決定」を認めることになる。そのような成年後見制度は、たとえ「ラストリゾートとして」であっても、「本人の法的能力を排除する代替決定」であって、条約第12条2項に反している。「本人の意思と選好に基づく代理決定」としての成年後見制度を確立すべきである。

〇現実には、悪意をもって本人に近づいて、本人にとってきわめて大きな損失となる意思決定を本人に勧めるといった社会の実態もあるため、本人との信頼関係を築き、本人の真意を察知して、本人にとってよりよい意思決定ができるように支援する「意思形成支援」の仕組みが必要である。

〇知的障害者等が長期にわたって成年後見制度を利用できるように、利用の費用を助成する制度を確立する必要がある。

〇さまざまな欠格条項を全て廃止して、それぞれの制度に必要な資格は、それぞれの制度で定めるべきである。特に、公務員資格における欠格条項については、大阪府吹田市に任用されていた自閉症と知的障害のある男性が、成年後見制度を利用し、被保佐人となったことをもって、地方公務員法の規定により、失職した事例がある。また、神奈川県川崎市に勤務している自閉症の青年は、将来的に成年後見制度を利用したいと考えているが、被保佐人となれば失職することになることを危惧して、利用できないでいる。日本政府においては、公職選挙法に続いて、地方公務員法においても、早急に欠格条項の見直しを行うべきである。

家族や親族を含めて後見人が本人の財産を横領する事件は後を絶たない。
第13条
司法手続の利用の機会

84.障害者基本法において、国又は地方公共団体に対して、障害者が、刑事事件若しくは少年の保護事件に関する手続その他これに準ずる手続の対象となった場合、又は裁判所における民事事件、家事事件、若しくは行政事件に関する手続の当事者その他の関係人となった場合において、障害者がその権利を円滑に行使できるようにするため、個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保するよう配慮するとともに、関係職員に対する研修その他必要な施策を講じることを義務付けている(障害者基本法第 29条)。

85.裁判所においては、できる限り、障害者が不自由なく裁判所施設を利用できるよう、段差解消、多機能トイレ、エレベーターの整備などのバリアフリー化を図っており、今後も更に整備を進める予定であると承知している。

86.裁判所では、各裁判手続等において、障害を有する当事者や証人等が、適切に意思疎通を図り、円滑に権利行使ができるようにするため、裁判官の判断で、障害の内容や程度に応じて、手話通訳人を付す、要約筆記等による手続を行う、あるいは、補聴器を貸与する、裁判所が作成、交付する書面を点訳するなどの配慮のほか、裁判官が当事者に対する手続の説明や質問をする際にも、その内容や方法に配慮するなどの措置が講じられていると承知している。

87.また、障害を有する子供に対しては、裁判官の判断で、さらにその発達段階に応じた質問内容や方法にするなどの配慮をしているものと承知している。

88.当事者は、難聴、言語障害、知能が十分でないこと等により、十分な裁判上の行為ができない場合、裁判所の許可を得て、補佐人と共に出頭することができる(民事訴訟法第 60条、非訟事件手続法第25条)。

89.裁判所においては、裁判官の研修を担当する司法研修所、及び、裁判官以外の職員の研修を担当する裁判所職員総合研修所において、人権擁護に取り組んでいる政府機関担当者や障害者関連の専門家を講師に招くなどして、障害者に対する適切な配慮等について理解を深める研修を実施し、また、各裁判所においても、同様の研修を実施しているものと承知している。

90.民事裁判及び非訟事件の手続について、口頭弁論に関与する者(当事者となる場合のほか、証人等となる場合を含む。)が耳が聞こえない者又は話をすることができない者であるときは、通訳人を立ち会わせ、又は、文字で問い若しくは陳述をすることができるとしている(民事訴訟法第154条第 1項、非訟事件手続法第 48条)。

91.刑事訴訟法及び刑事訴訟規則上、以下のとおり規定されている。
(1)障害者であるか否かにかかわらず,被告人及び被疑者は,私選弁護人を付することができ(刑事訴訟法第30条第1項),被告人又は一定の事件の被疑者は,貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは,裁判所(官)に対し,国選弁護人の選任を請求することができる(同法第36条,第37条の2)。さらに,裁判所(官)は,被告人が,耳の聞こえない者又は口のきけない者であるとき(同法第37条第3号),心神喪失者又は心神耗弱者であ疑いがあるとき(同条第4号),その他必要と認めるとき(同条第5号),若しくは,一定の事件の被疑者が,精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがあるとき(同法第37条の4)は,職権で国選弁護人を選任することができる。
(2)裁判所は、裁判所の手続において、耳の聞こえない者又は口のきけない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせることができる(刑事訴訟法第176条)。
(3)証人尋問においては、証人が耳が聞こえないときは、書面で問い、口がきけないときは、書面で答えさせることができる(刑事訴訟規則第 125条)。92.捜査機関において、障害を有する被疑者や参考人に対して取調べを行う際は、対象者の特性を考慮して適切な方法により行うことの重要性を意識し、知的障害者等に対し供述特性を踏まえた分かりやすい発問等を行うこと、聴覚障害者に対し手話通訳や筆談を用いること、必要に応じ、検察官らが自宅や病院等に赴いて保護者や医師等の同席の上で事情聴取を実施することなどの配慮を行っている。

93.犯罪捜査規範の規定に基づき、警察官は、精神又は身体に障害のある者の取調べを行うに当たっては、その者の特性を十分に理解し、取調べを行う時間や場所等について配慮するとともに、その障害の程度等を踏まえ、手話通訳者を手配するなどの適切な措置を講じている(犯罪捜査規範)。

94.国家公安委員会規則において、人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」を定め、警察職員に対し、職務倫理を保持させる教育を行うよう規定している。これらの規則に従い、警察では、警察学校や警察署等の職場において、憲法、刑事訴訟法等の法学や職務倫理の講義、障害者施設への訪問実習、有識者による講話等、障害者の特性や障害に配慮したコミュニケーション等の理解を深め、障害者の人権を含めた人権に配意した警察活動を推進するための教育を行っている(警察職員の職務倫理及び服務に関する規則)。

95.留置実務を指導する者に対する司法手続を含む研修を実施し、指導者の資質を高めるとともに、留置業務に従事する職員に対しては、各警察学校における専門教育や、警察署等の職場における研修会等のあらゆる機会において、障害者を含めた被留置者の人権に配意した適正な職務執行を期する上で必要な司法手続を含む知識・技能等を習得させるための教育を行っている(「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」、以下「刑事収容施設法」という。)。

96.検察庁においては、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」に基づき、庁舎にスロープや自動扉、エレベーター等を設置する措置を講ずる努力を行っている。

97.検察職員に対し、経験年数等に応じて実施する各種研修において、障害者に関する理解・配慮に資する講義を実施しているほか、日常の業務においても、上司が個別事件の捜査・公判を通じて個々の検察官に対して指導を行っている。

98.日本司法支援センターは、民事法律扶助業務の法律相談援助を障害者等の居住場所その他適宜の場所において実施しているほか、高齢者・障害者等社会的に弱い立場にある者に対しては、同センターの常勤弁護士等が自治体や福祉団体等と連携して積極的に法的サービスを提供している。

99.日本司法支援センターは、関係職員に対し、障害者等疑似体験実習を実施し、障害者に必要な配慮や接遇等を学ぶ研修を実施しているほか、全職員向けに「高齢者・障害者への接遇マニュアル」を作成し、周知を図っている。 

警察官の障害のある人に対しての理解度が低い。障害の特性に合った対応ができるような、警察官へのプログラムが必要。
→2011年7月にアスペルガー障害のある男性が実姉を刺殺した事件で、大阪地裁の裁判員裁判で障害を理由に求刑を超える判決がだされた。「社会的な受け皿が用意されていない現状では、再犯の恐れがある」とし、「長期間刑務所に収容することが社会秩序の維持にも資する」と判断したもの。
→2007年9 月に佐賀市で知的障害者が複数の警察官に取り押さえられ死亡した事件は警察官に知的障害への理解が十分にあれば防げた。

◆国の報告で書いていないこと
 民事訴訟法や刑事訴訟法に合理的配慮に関する一般的規定がない。そのため、合理的配慮を提供するかどうかは、裁判官の判断に委ねられているため、実際の裁判手続きにおいては、障害特性に応じた合理的配慮がなされているとは言い難い実態がある。
 とりわけ、裁判員裁判においては、裁判官が裁判員に対して、障害特性について適切な教示をしなかった結果、裁判員の心理的障壁を除去できずに、被告人障害に対する誤解と偏見に基づく判決が下されるなどの事案が多数見受けられる。

◆意見
1.2012年7月30日、大阪地方裁判所は、実姉を刺殺したアスペルガー障害のある男性に対して、検察官の求刑16年を上回る懲役20年を言渡した。その量刑理由で「被告人は未だ十分な反省に至っておらず、かつ、社会における受け皿もないから、「健全な社会常識」という観点からは、「許される限り長期間刑務所に収容することで内省を深めさせる必要があり、そうすることが社会秩序の維持に資する」というものである。」とされた。
 裁判員裁判における同判決は、「健全な社会常識」という名の、アスペルガー障害に対する無知に起因する根拠のない偏見に基づいており、かつ、本来被告人の責任ではない障害や社会内に受け皿がないことを量刑を重くする要素としている点で責任主義に反したものであった。さらに、社会防衛のために、できるだけ長く刑務所に入れるべきとしていたものである。
 障害のある人が被告人となった裁判員裁判が、障害に対する正しい理解がないまま行われた場合、誤った社会常識の下に誤った判断がなされ、いわゆる中世の魔女裁判になりかねないので、裁判官において、裁判員に対して、しっかりと障害に対する正しい理解を教示する必要がある。ところが、この裁判員裁判では行われなかった。
 このことから、障害のある人への合理的配慮については、単に、個々の裁判官の判断に委ねるだけではなく、刑事訴訟法等の訴訟法に合理的配慮に関する一般規定を置くべきである。

◆国の報告で書いていないこと
 警察署で行われている教育は、実際は、個々の警察職員に浸透しておらず、自閉症の青年が5人の警察官に取り押さえられて命を落としたという事件の裁判で、ある警察官は、本事件が起きるまで、まったく障害特性に対する研修を受けたことがなかったと証言した。

◆意見
1.2007年9 月25 日、佐賀市において、自閉症と知的障害のある青年が、5人の警察官に取り押さえられて、命を落とすという事件があった。何かに誤解して混乱している場合に、障害のない人であれば言葉によって説明することで落ち着くことができるが、自閉症があると障害ゆえに言葉で説得することが困難なこともある。青年を押さえつけた5人の警察官のうちの一人でも自閉症に気づいてくれていたら青年は命を落とさずにすんでいたのではないかと思われる。

 2. 青年の遺族は、佐賀県に対し損害賠償を求めて裁判を提起したが、2014 年2月28日に佐賀地裁において請求棄却の判決を受けた。遺族は、控訴し、2015年12月21日、福岡高裁において判決があった。結果は控訴棄却であったが、そのなかで、「少なくとも、本件取押えに対し健太が上記のような意味不明の声しか発しないことが判明した時点においては、知的障害の存在を疑い、健太の知的障害等の存否を確認するために、所持品検査等を実施し、その結果、健太の知的障害の存在が客観的に明らかとなった場合には、(中略)、知的障害者の特性を踏まえた適切な対応をする義務があるというべきである。」として、警察官に障害の特性を踏まえた一般的注意義務があることを認めた。なお、同裁判は上告も棄却された。

 3. 日本自閉症協会では、「警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(案)」に対する意見対応指針案への意見(パブリックコメント)を提出し、警察庁における職員への研修・啓発に関する事項に関して、上記死亡事件の教訓を活かし、同様の悲劇を二度と生まないよう、全ての職員に対して、障害の理解に効果的な研修を義務付け、障害理解のための専門的なプログラムを組み、福祉施設等における実習を行うべきことなどを明記すべきとの意見を出したが、同訓令では、具体的な明記はされなかった。

4.日本政府においては、13条2項の趣旨を十分に理解し、全ての警察職員に対して自閉症の障害を十分に理解し、障害特性を踏まえた研修・啓発を行うべきである。
第14条
身体の自由及び安全

100.障害者基本法において、国又は地方公共団体に対して、障害者が、刑事事件若しくは少年の保護事件に関する手続その他これに準ずる手続の対象となった場合において、障害者がその権利を円滑に行使できるようにするため、個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保するよう配慮するとともに、関係職員に対する研修その他必要な施策を講じることを義務付けている(障害者基本法第 29条)。

101.刑法上、殺人罪(刑法第199条)、傷害罪(同法第 204条)、暴行罪(同法第208条)、逮捕監禁罪(同法第220条)等を処罰する規定があり、これらの罪に該当する行為は、障害者に対するものも含め、処罰することが可能である。刑事訴訟法上、捜査についての身体に対する刑事手続上の強制の処分は、法律に特別の定めがある場合でなければすることができないと規定している(同法第197条第 1項但書)。

102.刑事手続上の強制処分に関しては、被疑者が障害者であると否とを問わず、逮捕状や捜索差押令状等の呈示(刑法第 201条第 1項、第110条)、逮捕の際の弁護人選任権の告知(同法第 203条第 1項、第204条第1項)、被疑者取調べの際の黙秘権の告知(同法第198条第 2項)といった手続が保障されており、障害者に対してこれらの手続を行うに当たっては、障害の特性に応じて、例えば、知的障害者に対する分かりやすい言葉での説明や聴覚障害者に対する手話通訳等の利用など、障害の内容・程度に応じた適切な配慮を行っている。

103.刑事収容施設法、少年院法及び少年鑑別所法においては、被収容者の人権を尊重しつつ、状況に応じた適切な処遇を行うことが定められており、矯正施設における障害者の処遇については、各人の障害の内容・程度等に応じ、(1)養護を必要とする被収容者については、傷病者のための措置に準じた措置をとれる体制を整え、(2)被収容者については眼鏡その他の補正器具を貸与又は支給し(自弁のものを使用することができない場合)、(3)受刑者については刑務作業の内容等を配慮する等の措置を行っている。

104.留置施設における被留置者の処遇に当たっては、その人権を尊重しつつ、その者の状況に応じて適切な処遇を行うこととしている。被留置者が障害者の場合も、留置業務管理者は、障害の状況をよく把握した上で、体調や疾病の状況に応じて医師による診療等の医療的措置をとっており、障害者の具体的状況に応じ、留置施設内で眼鏡等の補正器具や車いす等の移動補助具の使用を認めている。留置業務管理者は、全ての被留置者に、おおむね月に 2回の健康診断を受けさせているほか、必要に応じおかゆ等の食事を支給する等の配慮を行っている(刑事収容施設法、被留置者の留置に関する規則)。

105.精神保健福祉法には、入院措置(精神保健福祉法第 29条)や医療保護入院(同法第 33条第1項及び第 2項)等、精神障害者について本人の意思によらない入院制度を定めている。この法律に定める入院制度は、精神障害者であることのみを理由として適用されるわけではなく、精神障害のために自傷他害のおそれがある場合又は自傷他害のおそれはないが医療及び保護が必要な場合であって、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に適用されるものである。実施に当たっては、国が指定する精神保健指定医による診察(同法第29条第2項及び第33条第1項)や入院措置についての本人への書面告知(同法第 29条第3項及び第33条の3)が義務付けられている。

106.「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「心神喪失者等医療観察法」という。)において規定されている精神障害者に対する入院等の処遇は、殺人や放火などの重大な犯罪に当たる行為を行い、かつ、当該行為の当時、心神喪失又は心神耗弱の状態にあったと認定され、不起訴処分又は無罪等の確定裁判を受けた者について、当該行為を行った際の精神障害を改善し、社会に復帰することを促進するため、同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に行われるものである。処遇の決定に当たっては、対象者の鑑定を実施するとともに、弁護士や保健・福祉に関する専門家等の関与の下で審判期日を開催し、対象者に意見を述べる機会を与えた上で、裁判官と医師である精神保健審判員の合議体において、処遇の要否及び内容を適切に判断することとされている(心神喪失者等医療観察法第2条、第 33条ないし第42条)。

107.なお、本条に関しては、政策委員会より、次のような指摘がなされている。
(より詳しくは、付属文書を参照のこと)
精神保健福祉法等の制度と運用については、医療保護入院についての規定である精神保健福祉法第 33条の妥当性について再検証をする必要がある。精神科における患者の権利擁護のため家族や医療従事者から独立した権利擁護者の関与が不可欠である。認知症も含め、本人の意思が反映されない入院の減少につなげていくことが大切であり、そのためにも、継続的に調査を実施した上で、最新の正確な統計に基づいて議論を行う必要がある。

国(厚生労働省)はこの10年間で精神科病院における身体拘束・隔離が2倍になったと調査報告を行った。精神科病院における隔離収容政策は改まることなく続いてきており、身体拘束・隔離による死亡例も散見されるが、実態は明らかではない。なお、オンブズマン制度を参考に設置された精神医療審査会も機能を果たしているとは言えない。2014年の退院請求の受理件数は3432件、前年からの繰り越し件数247件、審査が開始されたのは2501件でその内92.3%が現状継続で、退院勧告は0.8%という結果である。審査機関として機能を果たしているとは言えず、障害のある人や家族も参画した外部機関を設立し、精神科病院の人権侵害の状況を調査・監視する仕組みを再構築すること。合わせて、強制医療制度を廃止すること。

精神科病院環境の改善が必要。改善されつつあるが設備が不衛生であり、アメニティが劣悪なところも残る。また、閉鎖的になりがちであり、外部からの監視体制を設けるべき。週2回の入浴、3人部屋でテレビがなく、外出は週に1度の散歩のみなど、QOLからかけ離れた入院生活を送っていたという報告もある。

患者が病院に不満を感じた際、すぐに相談できる機関がない。

安全を確保する、という観点からすると、精神障害によって自殺や未治療のままで危険な状態に放置しておくことはできない。本人の同意を得るための最大限の努力をすること、身体拘束(保護室での隔離を含む)が必要な場合は最小限度にとどめること。
第15条
拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由

108.刑事収容施設法、少年院法及び少年鑑別所法においては、被収容者の人権を尊重しつつ、状況に応じた適切な処遇を行うことが定められており、矯正施設における障害者の処遇については、各人の障害の内容・程度等に応じた適切な処遇を行っている。

109.刑法上、暴行罪(刑法第208条)、傷害罪(同法第 204条)、特別公務員暴行陵虐罪(同法第 195条)等を処罰する規定があり、これらの罪に該当する行為は、障害者に対するものも含め、処罰することが可能である。検察においては、刑罰法令に触れる事実が認められる場合には、法と証拠に基づき、適切に対処している。 

優生手術について国は被害の実態調査と補償をすべき。
→旧優生保護法を巡り、宮城県在住の知的障害を持つ60代女性が強制的不妊手術を受けたことを示す記録が、情報開示請求で見つかった。障害者の不妊手術の証言が公的文書で裏付けられるのは初めて。(毎日新聞2017/7/26)

患者に対するハラスメントなど、患者の人権や感情に対しての配慮に欠けている。
第16条
搾取、暴力及び虐待からの自由
110.「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「障害者虐待防止法」という。)第 4条において、国及び地方公共団体は、その責務として、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の迅速かつ適切な保護及び自立の支援並びに適切な養護者に対する支援を行うため、関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援等に努めなければならないとされている。また、同法第 29条では、就学する障害者に対する虐待の防止として、学校の長は、就学する障害者に対する虐待の相談に係る体制の整備、就学する障害者に対する虐待に対処するための措置など、虐待を防止するために必要な措置を講ずることとされている。さらに、同法第32条及び第36条に基づき、全ての市町村又は都道府県において、市町村障害者虐待防止センター又は都道府県障害者権利擁護センターの機能を果たす部局又は施設を有している。

111.刑法上、暴行罪(刑法第208条)、傷害罪(同法第 204条)、保護責任者遺棄罪(同法第 218条)、逮捕監禁罪(同法第 220条)、脅迫罪(同法第222条)、強要罪(同法第 223条)等を処罰する規定があり、これらの罪に該当する行為は、障害者に対するものも含め、処罰することが可能である。刑事訴訟法は、前記の犯罪に関し、司法警察職員、検察官、検察事務官などに捜査権限を与え、検察官に訴追権限を与えている(刑事訴訟法第 247条)。検察においては、刑罰法令に触れる事実が認められる場合には、法と証拠に基づき、適切に対処している。

112.検察官が事件の捜査の結果を踏まえ、当該事件を起訴しないこととした場合に、その処分に不服がある者(障害者を含む。)は、検察審査会法に基づき、検察審査会に不服を申し立てることができる。一定の場合には、検察審査会は起訴すべき旨の議決を行うことができ、その場合、裁判所が指定する弁護士によって当該事件が起訴される。

113.法務省の人権擁護機関では、全国の法務局・地方法務局において、障害者の人権問題を含むあらゆる人権問題について相談に応じており、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、関係機関とも連携・協力し、事案に応じた適切な措置を講じている。

114.2004年 12月に成立した「犯罪被害者等基本法」は、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進することによって、犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的としており、その基本理念として、同法第 3条第 1項において、障害者を含め、すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有することなどが定められている。また、同条第 2項において、犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとすることとされている。同法に基づき、2011年 3月に閣議決定された「第 2次犯罪被害者等基本計画」では、四つの基本方針(四つの基本方針:尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること、個々の事情に応じて適切に行われること、途切れることなく行われること、国民の総意を形成しながら展開されること)の下、241の具体的施策が掲げられており、現在、関係府省庁において同計画に基づく施策が進められている。

115.配偶者からの暴力事案等、人身の安全を早急に確保する必要の認められる事案については、被害者等の安全の確保を最優先に、加害者の検挙、被害者等の保護措置等、組織による迅速・的確な対応を推進している(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)。

116.「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」に基づき、地方公共団体に置かれている配偶者暴力相談支援センターにおいて、障害者を含め、配偶者等からの暴力被害者からの相談に応じる等の適切な支援を行っている。

117.児童虐待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という。)において、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等が定められており、児童の保護が図られている。

118.警察では、児童虐待防止法第 6条に基づき、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合は、速やかに児童相談所に通告することとしている。また、同法第 10条に基づき、児童相談所長が児童の安全確認、一時保護等を行う場合に、児童相談所長から警察署長に援助の求めがあったときであって、児童の安全又は身体の安全を確認し、又は確保するため必要と認めるときは、警察官職務執行法その他の法令の定めるところによる措置を講じることとしている。 

◆国の報告で書いていないこと
  障害者虐待防止法附則2条で、施行後3年を目途にして、施行状況等を勘案して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされているが、施行後3年を経過してもなんら検討がなされていない。

◆意見
1.2015年5 月28 日、山口県下関市における通所施設において、同施設職員が自閉症と知的障害のある男性に対して暴言を吐きながら、頭を叩く映像が報道された。

 2.これまでも、障害者に対する暴力、虐待の事件があり、これを撲滅しようと全国的にも大きな取り組みが行われ、国としても力を入れていたはずであったのに、このような事件が後を絶たないことは誠に残念である。改めて、関係者が力を合せ、このような事件を絶対に起こさせないという強い決意と具体的な行動が求められている。

 3.障害者虐待防止法が施行され、施設従事者等による虐待が禁止されているにもかかわらず、このような問題が起きた背景には、施設従事者等が障害を正しく理解できていない、正しい支援の仕方を知らないということがあると考えられる。

 4.日本自閉症協会では、世界自閉症啓発デーの取り組みをはじめ、障害を理解する「啓発活動」に力を入れてきた。また、支援の方法についても全国各地で研修会を開催してきた。日本政府においては、更なる虐待撲滅に対する取組や施策を推し進めるとともに、特に施設従事者等に対し、自閉症の障害を十分に理解し、障害特性を踏まえた適切な支援に関する研修・啓発を行うべきである。

虐待防止法が施行されて、各市町村にも虐待防止センターが設置されているが、体制や対応に不備がある。虐待防止は基本的には市町村の責任のはずだが、センターを民間に委託することができる。24時間電話対応をするが、家族分離などの緊急措置は取るが、虐待が起きた背景(貧困や虐待の連鎖)には踏み込めず、対処療法をしている印象がある。

件数が高齢者児童に比べて少なく、管轄の市町、県の判断基準もあいまい。

センターは設置されているが、専門的な対応が不十分。
→市町村における障害者虐待防止センターの設置は100%。ただし、「障害者の福祉又は権利擁護に関し、専門的知識又は経験を有し専門的に従事する職員の確保」は33.2%にすぎない。都道府県における障害者権利擁護センターの設置は100%。ただし、「障害者の福祉又は権利擁護に関し、専門的知識又は経験を有し専門的に従事する職員の確保」は59.6%にすぎない。(厚労省 平成27年度 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果報告書より)

虐待防止法が施行されて以降も各地で虐待事件が起きている。きちんと調査をするべき。

障害当事者が障害者差別解消法を知らない。
第17条
個人をそのままの状態で保護すること

119.障害者基本法において、全ての国民が障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること、全ての障害者が基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提として、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されることが規定されている(障害者基本法第 1条、第 3条)。

障害のある人たちの強制不妊手術を含む強制措置の状況について調査を実施することを勧告、その調査に際しては、障害者団体も参加し、調査方法などについて、障害者団体の意見を反映すること。

障害福祉サービスを使うのに利用料がかかる。

グループホームを立てようと思うと住民から反対運動がおこる。

医学的根拠に基づかない訓練。脳性麻痺者への歩行訓練、ろう者への口話訓練。

血液分析による新型出生前診断で異常が確定したほとんどの人が中絶を選択している。親に正しい情報が提供されること。また親の不安を取り去ることができるほどの障害児養育に対する手厚い支援が必要である。
第18条
移動の自由及び国籍についての権利 

120.出生による国籍取得については国籍法第 2条、国籍喪失については同法第 11条、国籍離脱については同法第 13条において定められており、障害の有無で差異を設けていない。また、我が国の国籍法上、障害者であることを理由に、国籍を剥奪するとの法制はとっていない。

121.基本的に我が国における国籍証明書は戸籍謄本又は旅券であるが、戸籍謄本については、戸籍法第 10条によって取得可能であり、戸籍謄本の取得の可否について障害の有無で差異を設けていない。さらに、戸籍法及び国籍法上、出生登録、氏名を有すること、出生時の国籍取得及び戸籍上の父母を知ることに関する権利について、障害の有無で差異を設けていない。

122.憲法第 22条において、移転の自由、外国に移住する自由が保障されている。出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)においては、障害を理由として出入国手続を利用すること自体を阻害する規定はない。また、入管法第25条は外国人の出国の事実を確認する手続を、同法第 61条は日本人の帰国の事実を確認する手続をそれぞれ規定しているが、これらの手続は、障害者を含め、外国人又は日本人が自国に戻ること自体を法律上禁止又は制限するものではない。
 
第19条
自立した生活及び地域社会への包容  
 
123.障害者基本法において、全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されることとともに、障害者が、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことが基本原則とされている(障害者基本法第 3条)。また、国及び地方公共団体が、障害者が生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策を講じることを義務付けている(同法第 14条第 3項)。

124.障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスとして、障害者が地域で安心して暮らすことができるよう、単身等での生活が困難な障害者が共同して自立した生活を営む住居(グループホーム)において、相談や家事等の支援、必要に応じて食事や入浴等の介護といった日常生活上の援助を行う「共同生活援助」を実施している。
また、障害者が地域で暮らしていくためには、在宅で必要な支援を受けられることが前提となるため、利用者の実態やサービスの提供形態に応じ、居宅において入浴、排せつ又は食事の介護などを提供する「居宅介護」のほか、「重度訪問介護」、「同行援護」、「行動援護」及び「重度障害者等包括支援」を実施している。

125.これらに加え、自宅で障害者の介護を行う者が病気等の理由により施設への入所が必要な場合に、短期間、夜間も含めて施設において入浴等の介護を提供する「短期入所」も行っている。

126.また、身体障害者や難病患者等の日常生活や社会生活の向上を図るために、身体機能を補完又は代替するものとして、補装具(義肢、装具、車椅子、盲人安全つえ、補聴器等)の購入又は修理に要した費用の一部について公費を支給する「補装具費支給制度」を実施しているほか、障害者総合支援法第77条に基づく市町村の地域生活支援事業として、日常生活を営むのに支障のある障害者等に対して、日常生活の便宜を図るため、特殊寝台、特殊マット、入浴補助用具等を給付又は貸与する「日常生活用具給付等事業」を、地域の実情や障害者等のニーズに応じた柔軟な形式で実施している。

127.身体障害者、知的障害者及び精神障害者について、それぞれ身体障害者手帳制度、療育手帳制度、精神障害者保健福祉手帳制度が設けられており、手帳所持者に対して各種の支援策が講じられている。

128.長期にわたって入院している精神障害者の地域移行に関して、検討会において、地域の受け皿づくりの在り方等についての具体的な方策等が議論され、地域移行の一層の推進に向けた方向性として、退院に向けた支援、居住の場の確保等の地域生活の支援などを徹底して実施するとともに、地域へ移行した精神障害者が退院後の地域生活を維持・継続するための医療の充実が図られるよう、病院の構造改革が必要とされた。今後、この方向性を踏まえ、必要な施策の具体化に向けて取り組むこととしている。

129.難病の患者がその社会参加の機会が確保され、地域社会において尊厳を保持しつつ他の人々と共生することを妨げられないよう、難病に関する施策を総合的に行うことを基本理念とする「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下「難病法」という。)が2015年1月から施行されている(第25条「健康」参照。)。130.また、障害者総合支援法においては、2013年 4月以降、「共同生活援助」や「居宅介護」といった障害福祉サービス等を利用することのできる障害者の範囲に難病患者等を加えており、難病等の対象疾病について、2013年 4月の時点で対象とされていた130疾病から、2015年7月以降は332疾病に拡大している。(意思疎通支援については、第 21条「表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会」参照)

131.なお、本条に関しては、政策委員会より、次のような指摘がなされている。
(より詳しくは、付属文書を参照のこと)
医療的ケアを必要とする重度障害者等の地域移行の支援については、地域によってサービスの水準や運用に差異があるなどして利用しづらかったり、保護者に過重な負担となったりしている。人間らしく生きるための24時間の医療的ケア保障、介護保障が必要である。
また、精神障害者の地域移行の支援については、精神科医療そのものの地域移行が必要である。精神科に入院している人の地域移行を考えるのと同時に、地域にいる精神障害者を訪問してサービスを提供すること等、精神障害者が地域で生活できるような資源を開発することが重要である。

地域での福祉サービスの不足のために多くの重度障害者が精神科病院や入所施設 から地域移行できないでいる事態がほとんど改善されていない。障害のある人たちが自らの選択で誰とどこで暮らすかという権利を行使できていない状況が続いている。そのため、日本独特の精神科病院への社会的入院や必要な支援があれば地域生活を送れる人たちが社会的入所をせざるを得ない状況が続いている。社会的入院、社会的入所の解消を速やかに行うために、多様な形態の居住の場の確保を国や自治体は優先的に取り組み、そのための集中的な基盤整備を行うこと.他のものとの平等に基づき、障害の程度に関わらず、どこで誰と暮らすかを本人が選択できるように、資金の分配と環境整備を行うこと。

障害のある人が「他の者との平等」を実現するために利用するコミュニケーション支援や日常生活上の支援、就労するために利用する福祉サービスの利用者負担は、障害のある人への差別的取扱いにあたる。利用者負担を廃止することを勧告する必要がある。

日本の障害者施策は家族に障害者の介護の多くを委ねており、家族依存の障害者施策を転換させるために、障害者が地域の中で必要な支援を受けつつ、生活を送る権利を行使するための選択肢や支援を増やしていくための制度化を図る必要がある。

重度の障害のある人が地域生活を送る際に必要なパーソナルアシスタンスサービスに近い機能を持つ重度訪問介護サービスだが、障害支援区分によって必要があるにもかかわらず、利用できない仕組みとなっている。必要な人は利用できる仕組みとすべきである。

<事例・データ>

○きょうされん介護者調査、回答数3235件によれば、94歳の父親が58歳の娘(精神障害)の介護、93歳の母親が72歳の息子(知的・身体障害)の介護をしている実態が明らかになっている。また、障全協の調査(回答数2640件)によれば、在宅障害者の主たる介護者の91%が母親であり、その内15%の親が70%を超えている。家族介護が限界になった際にショートステイを繰り返し利用し、ショートステイではなく、ロングステイになってしまっている現状がある。


福祉サービスにおける利用者負担については、骨格提言が示した「障害に伴う必要な支援は原則無償とすべき」を実施しておらず、国として実現する必要がある。とりわけ、コミュニケーション支援は相手と意思疎通をとるための支援であり、基本的人権を保障する基礎的な部分であるとともに、障害のある者だけに利用料負担させることは差別的取り扱いにあたるため、国として無償化しなければならない。また、この他にも骨格提言において障害に伴う必要な支援として整理された相談支援や日常生活・社会生活に関わる支援などについて無償化が求められている。あわせて、家族に対する利用者負担については、基本合意では「収入認定は障害児者本人だけで認定すること」、骨格提言では「成人の場合は障害者本人の収入」となっており、これらの実現が課題である。

介護保険のサービス から「軽度」者を除外したり、利用時の自己負担額を増やすなど利用制限が進められ、社会的保護への公的な責任の後退が懸念される。

障害者総合支援法のもとでは、重度訪問介護、行動援護及び重度障害者等包括支援などによっても、1日24時間の公的介護体制等、重度障害者が地域で暮らすために必要な介護保障がなされているとはいえない.
 また,障害支援区分や国庫負担基準を過度に重視した支給決定がなされている結果として、個別ニーズを積み上げて支給量を決める仕組みが実現していないことが指摘される.
 基本合意及び骨格提言を踏まえ、上記介護保障の実現に全力を尽くすことが政府の最重要課題であることを明記すべきである。


<実態について>

近年の入所施設の建設抑制、入所者の地域移行推進施策の結果として、「老障介護」と言われている高齢の親による在宅介護を余儀なくされている家庭が急増しており、親の死亡や急病などで、突然住家がなくなる重度の障害者が入所施設を求めて、短期入所を転々としている(いわゆるロングショート)が急増している。
 この人たちは、少なくても数か月間、居住地不定のまま短期入所を転々とし、結果として、現在の居住地とは何の関係もない他府県の入所施設に移されている。この実態は、まさに「人権侵害」であり、制度的虐待ともいえるものです。地域生活を保障した障害者基本法にも違反するものと言わざるを得ない。
 重い障害があっても住み慣れた地域で暮らし続けられるためのグループホームの整備はもちろん、必要な入所施設を地域の中に建設し、地域生活を支える貴重な社会資源として、その拡充を図るべき。
 障全協の調査(回答数2640件)では、在宅障害者の主たる介護者は、91%が母親であり、その内15%の親が70歳を超えているという実態があります。この家庭で暮らしている障害者は、母子等の二人暮らしが多く、親に何かあり、介護できない状態になっても通報する力もなく、外部訪問者による数日以内の発見がなければ生死に係る問題であり、喫緊の対応策が求められる。


障害のある人が「他の者との平等」を実現するために利用するコミュニケーション支援や日常生活上の支援、就労するために利用する福祉サービスの利用者負担は、障害のある人への差別的取扱いにあたる。利用者負担を廃止することを勧告する必要がある。

きょうされん介護者調査、回答数3235件によれば、94歳の父親が58歳の娘(精神障害)の介護、93歳の母親が72歳の息子(知的・身体障害)の介護をしている実態が明らかになっている。また、障全協の調査(回答数2640件)によれば、在宅障害者の主たる介護者の91%が母親であり、その内15%の親が70%を超えている。家族介護が限界になった際にショートステイを繰り返し利用し、ショートステイではなく、ロングステイになってしまっている現状がある。
 日本の障害者施策は家族に障害者の介護の多くを委ねており、家族依存の障害者施策を転換させるために、障害者が地域の中で必要な支援を受けつつ、生活を送る権利を行使するための選択肢や支援を増やしていくための制度化を図る必要がある。


重度の障害のある人が地域生活を送る際に必要なパーソナルアシスタンスサービスに近い機能を持つ重度訪問介護サービスだが、障害支援区分によって必要があるにもかかわらず、利用できない仕組みとなっている。必要な人は利用できる仕組みとすべきである。

障害のある人たちが自らの選択で誰とどこで暮らすかという権利を行使できていない状況が続いている。そのため、日本独特の精神科病院への社会的入院や必要な支援があれば地域生活を送れる人たちが社会的入所をせざるを得ない状況が続いている。社会的入院、社会的入所の解消を速やかに行うために、多様な形態の居住の場の確保を国や自治体は優先的に取り組み、そのための集中的な基盤整備を行うこと。

福祉サービスの利用に関して、どんな制度があるのか、手続きはどうするのか、自分で知らなければならないので、分かりづらく、利用しづらい。

<事例>
○自宅での生活がむずかしくなった場合に、強度行動障害のある人を受け入れるところがない。こうした人たちが、現行のグループホームでは受け入れは難しく、入所施設では大量の待機者がいるため、ショートスティを長期で利用しながらなんとか生活している現状がある。

○ヘルパーを利用して出かけたいが、クリスマスや夏休みシーズンは、ヘルパーの確保が難しく、利用しづらい。

第20条
個人の移動を容易にすること   

132.障害者基本法において、国及び地方公共団体に対して、障害者が生活支援その他自立のための適切な支援を受けられるよう必要な施策を講じることを義務付け(障害者基本法第14条第 3項)、専門的知識又は技能を有する職員を育成することについて努力義務を課し(同条第4項)、障害者が可能な限り身近な場所で適切な支援を受けられるよう施策を講ずること、人権を十分に尊重することを義務付け(同条第 5項)、福祉用具及び身体障害者補助犬の給付又は貸与その他障害者が日常生活を営むのに必要な施策を講じることを義務付け(同条第6項)、福祉用具の研究開発、身体障害者補助犬の育成等を促進することを義務付けている(同条第 7項)。

133.障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスとして、視覚障害により移動に著しい困難を有する障害者等に対し、外出時に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護等を提供する「同行援護」を実施している。2015年 2月には 21,910人が当該サービスを利用しており、制度創設時(2011年10月)の利用者数(8,299人)と比較して約2.6倍に伸びている。また、障害者総合支援法第 77条に基づく市町村の地域生活支援事業として、屋外での移動が困難な障害者等に対し、外出のための支援を行うことにより、地域における自立した生活及び社会参加を促すため、各市町村が、地域の特性や利用者のニーズに応じて、ガイドヘルパーの派遣等のサービスを提供する「移動支援事業」が実施されている。2014年 3月の利用者数(個別支援型)は 100,488人である。

134.「身体障害者補助犬法」第 3条第1項において、補助犬訓練事業者は、身体障害者補助犬(盲導犬、補助犬及び聴導犬)を使用しようとする各身体障害者に必要とされる補助を的確に把握し、その身体障害者の状況に応じた訓練を行うことにより、良質な身体障害者補助犬を育成しなければならないとされている。また、障害者総合支援法第 78条に基づく都道府県の地域生活支援事業として、身体障害者補助犬を使用することにより社会参加が見込まれる身体障害者のために、その育成に要する費用を助成する「身体障害者補助犬育成事業」が実施されている。

大都市におけるバリアフリーは近年進んできたが、地方都市では十分ではない。大都市でも駅のホームドアの設置が急がれている。

移動支援の実施状況について自治体間の大きな格差を是正すべき。

鉄道での視覚障害者のホームからの落下事故が相次いでいる。落下防止柵の設置が急務である。

JRや私鉄、都市部と地方とで、配慮やバリアの度合いに大きな差がある。

JR運賃の割引は、身体障害者手帳、知的障害者手帳の等級1・2級の方は、半額になるが、精神障害者保健福祉手帳は対象にならない。是正すべき。

第21条
表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会

 135.障害者基本法において、国及び地方公共団体に対して、障害者が利用しやすい電子計算機及びその関連装置その他情報通信機器の普及、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を義務付けている(障害者基本法第 22条第 1項)。また、行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に当たって、障害者の利用の便宜が図られるよう特に配慮することを義務付けている(同条第 2項)。

136.公的な活動における手話・点字等の意思疎通の手段、形態及び様式の使用の受入れと容易化に関しては、障害者基本法において、全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることとされている(障害者基本法第3条)。なお、地方公共団体の中には、手話言語条例を制定し、積極的に手話の普及を図っているところもある。

137.一般公衆に対してサービスを提供する民間の団体に対する情報及びサービスを障害者にとって利用可能な様式で提供するよう要請すること、及びマスメディアがサービスを障害者にとって利用しやすいものとするように奨励することに関しては、障害者基本法において、電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務を行う事業者に対し、障害者の利用の便宜を図る努力義務を課している(障害者基本法第 22条第 3項)。

138.第 2次障害者基本計画(Ⅲ7.(2)a.)において、障害者にとって使いやすいように配慮した情報通信機器設計の指針等を JIS(日本工業規格)化することとしており、「日本工業規格(JIS X8341-3)高齢者・障害者等配慮設計指針情報通信における機器、ソフトウエア及びサービス-第 3部:ウェブコンテンツ」を 2004年に制定した。また、2013年 6月に高齢者や障害者等に配慮した情報通信機器のソフトウェアを設計するための手引きをJIS規格化した。

139.障害者総合支援法第77条及び第 78条に基づく地域生活支援事業として、市町村及び都道府県において、聴覚、言語機能、音声機能、視覚その他の障害により、意思疎通を図ることに支障がある障害者等のために、意思疎通支援を行う者(手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員等)の派遣や設置、点訳、音声訳等による支援などを行う意思疎通支援事業や、点訳奉仕員、朗読奉仕員、要約筆記者、手話奉仕員、手話通訳者等を養成する事業が実施されている。2013年4月からは、手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員を養成する事業を都道府県の必須事業とするとともに、意思疎通支援を行う者の派遣を行う事業について市町村が実施できない場合等には都道府県が実施する仕組みとするなど、意思疎通支援の強化を図っている。

140.視聴覚障害者の社会参加支援を目的として、点字・録音図書、字幕(手話)付き映像ライブラリー等の製作及び貸出を行い、手話通訳者や要約筆記者の派遣、相談等を行う視聴覚障害者情報提供施設を整備している。

141.ネットワークを利用し、新聞情報等を即時に全国の点字図書館等で点字データにより受信でき、かつ、視覚障害者が自宅にいながらにしてウェブ上で情報を得られる「点字ニュース即時提供事業」や視覚障害情報総合ネットワーク「サピエ」による点字・録音図書情報等の提供を行っている。(字幕放送等の普及、通信・放送役務の提供又は研究開発については、第 9条「施設及びサービス等の利用の容易さ」参照)

142.なお、本条に関しては、政策委員会より、次のような指摘がなされている。(より詳しくは、付属文書を参照のこと)
情報提供や意思疎通支援をさらに充実することが求められる。様々なメディアや場面において、特に、緊急時の対応、個別性の高いコミュニケーション方法を用いる人たちへの対応、省庁横断的な対応に課題がある。
また、障害の多様性に対応したアクセシブルな教材の提供や行政情報のバリアフリー化になお課題があることが指摘された。

情報コミュニケーション技術の利活用については強制力のある法制度が不在で、技術や指針があっても必要とする人に届いていない。利活用のためのリテラシー教育や支援者の育成も不十分である。

学校や働く場での情報保障には「合理的配慮」および「積極的差別是正措置」がなされるべきである。

意思疎通(失語症等を含む)の支援者や、メディア変換等の担い手は、いまだ 多くがボランティアにゆだねられており、現段階で不足しているケースについては、継続の保障がない。「引き続き、支援者の不足を解消すべく、財政措置等を検討する」 ことが必要である。

資格手話通訳派遣などのコミュニケーション支援は進んではきたが、必要な支援と比べてはるかに不足している。

手話通訳などの情報保障は、自治体によって利用できる範囲や料金が異なっている。

公共放送での情報保障のあり方については、様々な障害に対応していくためにも運用の企画段階から当事者の参加が位置づけられるべき。

知的・精神障害のある人にとって、公的な文章は何が書いてあるか、難しいと感じる。振り仮名を打ってあることはほとんどなく、障害のある方にも分かりやすいサポートを窓口でしてもらいたい。

あらゆる会議などにおいて、障害特性を踏まえた形態で、事前に資料提供することを位置付けるべきだ。

締約国報告では、「本条に関しては、障害者政策委員会より、次のような指摘がなされている」として計8カ所を記述している。しかし、これをもって障害者政策委員会の「コメント」が締約国報告に反映さ れているとはいえない。報告は「次のような指摘がなされている」と述べているだけにすぎず、締約国の見解として位置づけていない。締約国として「政策委員会と問題意識 を共有している」とも記されていない。「コメント」を締約国報告に取り入れるべき。

■(エピソード)
○字幕放送の普及はすすんでいるが、視覚障害者向けの解説放送はまだまだ普及していない。
<参考>平成28年度 総放送時間に占める字幕放送時間の割合
  NHK(総合) 84.4%、NHK(教育) 72.7%、在京キー5局 59.5%
 総放送時間に占める解説放送時間の割合
  NHK(総合) 11.4%、NHK(教育) 15.3%、在京キー5局  4.0%
第22条
プライバシーの尊重

143.刑法上、住居侵入罪(刑法第 130条)、秘密漏示罪(同法第 134条第1項)、名誉毀損罪(同法第230条)、侮辱罪(同法第 231条)、信用毀損罪(同法第 233条)等を処罰する規定があり、これらの罪に該当する行為は、障害者に対するものも含め、処罰することが可能である。検察においては、刑罰法令に触れる事実が認められる場合には、法と証拠に基づき、適切に対処している。

144.障害の有無に関わらず、ある者の違法な行為によりプライバシー権を侵害された者は、当該行為をした者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができ(民法第 709条、第710条)、当該行為が名誉毀損に当たる場合には、謝罪広告等名誉を回復するのに適当な処分を命ずるよう裁判所に請求することができる(同法第 723条)。また、その場合には、民法に明文の規定はないが、プライバシー権を侵害された者は、人格権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができると解されている。

145.個人情報保護法は、障害者も含め、特定の個人を識別できる情報(個人情報)について、目的外利用の制限(個人情報保護法第 16条)、第三者提供の制限(同法第 23条)、安全管理措置(同法第20条)、本人からの開示等の求めへの対応(同法第 25条から第 27条)などの義務を課し、個人情報の適正な取扱いを図っている。また、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの(要配慮個人情報)について特別の規律を設ける等を内容とする改正法が 2015年9月に成立した。

146.施設基準省令第 49条において、指定障害者支援施設等の従業者及び管理者は

正当な理由なく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない旨定めるとともに、過去に従業者等であった者が秘密を漏らさないよう必要な措置を講じなければならないこととしている。なお、指定障害者支援施設等のほか、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業所や児童福祉法に基づく指定障害児入所施設などにおいても同様の規定を設けている。

147.精神保健福祉法第 53条及び第 53条の 2においては、精神科病院の管理者、精神保健指定医など、その職務の執行において精神障害者に関する秘密を知り得る職にある者がその秘密を正当な理由なく漏らしたときの罰則規定を設けている。

震災時に公的機関の個人情報の開示がすすまなかったことが、被災した障害者を支援するうえで課題となった。来る災害に向けて、総括と対応を検討すべきではないか。

より積極的にプライバシーを確保するという点からの施策も求められる。虐待事案などの「司法面接」では、作業所のなかまが、環境等に配慮しつつ、誘導しないで主訴や事実を聞き取るということが部分的に行われるが、公的機関等ではより積極的に、障害のある人の声を受け止める仕組みが必要ではないか。
第23条
家庭及び家族の尊重

148.我が国は、憲法第 24条において婚姻の自由を規定している(なお、成年被後見人が婚姻及び協議離婚をするのに、その成年後見人の同意を要しない(民法第 738条、第 764条)。)。また、我が国の民法は、児童の後見、監督、財産管理及び養子縁組についての権利及び責任につき、障害の有無による差異を設けていない。

149.親権者には、子の居所指定権が付与されており(民法第 821条)、子が父母の意見に反してその父母から分離されないことが確保されている。もっとも、父又は母による虐待等により子の利益が著しく害される場合には親権喪失の審判により(同法第 834条)、父又は母による親権の行使が困難であるなどして子の利益が害される場合には親権停止の審判により(同法第 834条の 2)、いずれも子の利益を守るために子がその父母から分離されることがある。これらの審判により親権を行う者がないこととなった場合には、子の利益を保護するために、未成年者に対して後見が開始される(同法第 838条)。

150.障害者権利条約第 23条 4の規定が、締約国の出入国管理上の適正な処分の妨げになるものではないと理解しているが、このような解釈が条約の文言上必ずしも一義的に明確ではないため、出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制の結果として児童が父母から分離される場合に適用されるものではないとの解釈宣言を行っている。

151.障害者総合支援法第 77条に基づく市町村の地域生活支援事業として、地域の障害者等の福祉に関する様々な問題について、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供や助言等を提供するとともに、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整等の必要な援助を行う事業が実施されている。また、障害者総合支援法第 78条に基づく都道府県の地域生活支援事業として、特に専門性の高い相談支援に係る事業が実施されている。

152.児童福祉法については、2014年度に「児童福祉法の一部を改正する法律」が公布及び施行され、新たな小児慢性特定疾病医療費助成制度が確立したと同時に、小児慢性特定疾病児童等の自立支援事業について法定されることとなった(児童福祉法第 19条の 2~第 19条の 22)。

153.児童福祉法第12条により、児童相談所の設置が規定されており、児童相談所における相談援助活動は、常に児童の最善の利益を考慮し、援助活動を展開していくことを必要としている。また、同法に基づき、相談、通告を受けた場合は、児童やその家庭の状況等を勘案して適切に対応している。保護者が、児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合については、児童の最善の利益を考慮し、都道府県は、施設入所の措置等をしている。市町村は、児童についてやむを得ない事由により、保育を受けることが著しく困難であると認めるときは、当該児童に対して保育を行うこととなっている。これらの措置等は障害の有無に関わらず行われる。

障害者は性や生殖の問題から切り離されがちであり、結婚や出産、恋愛などにかかわっていまだ多くの偏見がある。障害当事者に対しても、こころとからだについて丁寧な教育が必要だ。

支援の制度が個人単位のため、夫婦、親子での一体的な支援をできる仕組みがない。

所得水準の低さと家族依存の問題で地域生活が成り立ちにくい。
第24条
教育   

154.憲法第 26条は、すべての国民に対して、その能力に応じて等しく教育を受ける権利を保障している。また、国民に対して、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を課しており、義務教育は無償と規定されている。

155.教育基本法第 4条第 2項において、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならないことが規定されている。また、障害者基本法第16条は、国及び地方公共団体に対して、障害者が、その年齢、能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童生徒が障害者でない児童生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じること、また、国に対して障害者の教育に関する調査研究を推進すること等を義務付けている。

156.学校においては、学校教育法体系に基づき、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育が実施されており、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」が整備されており、引き続きこれらの場の充実に取り組んでいく。2014年 5月現在、小・中学校において通級による指導を受けている児童生徒数は 83,750人(2009年 5月:54,021人)、小・中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒数は 187,100人(2009年 5月:135,166人)、特別支援学校(幼稚部から高等部まで)に在籍する幼児児童生徒数は 135,617人(2009年 5月:117,035人)である。なお、特別支援学校に在籍する児童生徒等について、障害者基本法第 16条の「障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進しなければならない。」との規定等を踏まえ、小・中学校等に在籍する障害のない児童生徒との交流及び共同学習が行われている。また、我が国では、義務教育段階において、病弱・発育不全を理由として保護者の申し出により就学猶予・免除を受けている児童生徒は、2014年度は 48人(0.0005%)である。

157.幼稚園、小学校、中学校、高等学校においては、日常生活上、学習生活上のサポート等を行う特別支援教育支援員の配置等による支援が行われている。特別支援教育支援員は年々拡充されており、2014年度については、前年度から 3,400人増の 49,700人分の地方財政措置を行っている。また、日常的に医療的ケアが必要な幼児児童生徒は公立特別支援学校において 7,774人(2013年度:7,842人)、公立小・中学校において 976人(2013年度:813人)である。なお、公立小・中学校において、日常的に校舎内において障害のある児童生徒に付き添っている保護者等の人数は 1,897人である。

158.就学先決定の在り方については、2013年8月に学校教育法施行令を改正し、就学基準に該当する障害のある子供は特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改め、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとするとともに、保護者及び専門家からの意見聴取の機会を拡大した。その際、本人、保護者の意向を可能な限り尊重し、教育委員会が決定することとした。2014年度の小学校・特別支援学校就学予定者(新第1学年)として、市区町村教育支援委員会等の調査・審議対象となった人数は、42,352人(2013年度:39,208人)、うち、学校教育法施行令第 22条の 3(特別支援学校に就学することが可能な障害の程度)に該当する人数は 8,651人(2013年度:8,453人)である。そのうち、公立特別支援学校に就学した人数は 6,341人(2013年度:6,190人)である。

159.また、障害のある児童生徒等の保護者等の経済的負担を軽減するために、特別支援教育就学奨励費の支給等の支援が行われている。

160.小・中学校等の学習指導要領において、障害のある児童生徒については、個別の教育支援計画等を作成することなどにより、個々の児童生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的に行うこと、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習の機会を設けることのほか、誰に対しても公正、公平にし、差別や偏見のない社会の実現に努めること、障害のある人々などとの触れ合いを充実するよう工夫すること等を指導することが規定されている。なお、幼稚園、小・中学校、高等学校における個別の教育支援計画の作成率は年々向上しており、2014年度の作成率は 81.5%である。

161.特別支援学校学習指導要領においては、障害種ごとの配慮事項が規定されている。視覚障害者である児童生徒を教育する特別支援学校の配慮事項として、小中学部においては「児童の視覚障害の状態等に応じて、点字又は普通の文字の読み書きを系統的に指導し、習熟させること。なお、点字を常用して学習する児童に対しても、漢字・漢語の理解を促すため、児童の発達の段階等に応じて適切な指導が行われるようにすること」等が規定されており、これらを踏まえた指導が行われている。また、聴覚障害者である児童生徒を教育する特別支援学校の配慮事項として、例えば小中学部においては「児童の聴覚障害の状態等に応じ、音声、文字、手話等のコミュニケーション手段を適切に活用して、意思の相互伝達が活発に行われるように指導方法を工夫すること」等が規定されており、手話をはじめとする多様なコミュニケーション手段を選択・活用した指導が行われている。また、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所における都道府県の指導者を対象とした研修の中で、手話又は点字に関する内容を扱っている。なお、小・中学校の通級による指導や特別支援学級で特別の教育課程を編成する場合は、特別支援学校の学習指導要領を参考とし、実情に合った教育課程を柔軟に編成することとしている。

162.「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」においては、障害のある児童生徒のための文字や図形等を拡大した教科書や点字教科書の発行の促進を図るとともに、その使用の支援について必要な措置を講ずること等により、教科用特定図書等の普及の促進等を図ることとされている。2014年度に小・中学校等の義務教育諸学校で使用される教科書に対応した拡大教科書は全点発行された。高等学校段階については、視覚障害特別支援学校高等部で使用されている主たる教科に関する拡大教科書は全点発行されたが、高等学校で使用される教科書については、教科書の種類が非常に多く、十分に普及していないため、普及促進を図るための調査研究を行っている。

163.教育職員免許法等において、幼稚園、小・中学校、高等学校の教諭の普通免許状を取得するためには、特別支援教育に関する事項を含んだ科目の単位を修得しなければならない。また、特別支援学校の教員は、原則として特別支援学校の教員の免許状を有していることが必要である。

164.教育基本法の趣旨も踏まえ、政府の障害者基本計画において、障害のある児童生徒の後期中等教育への就学を促進するための配慮及び福祉、労働等との連携の下での、就労支援の充実を図ることとしている。また、高等教育における支援の推進として、障害のある学生への個々の障害特性に応じた情報保障やコミュニケーション上の配慮、施設のバリアフリー化、入試等における適切な配慮、大学等における情報公開を推進することとしている。

165.教育基本法第 3条において、障害者を含む国民一人一人の共通理解の下、国及び地方公共団体をはじめ、学校、家庭、さらに各種団体や企業等も含め地域を通じた社会全体で、生涯学習社会の実現が図られるべきという「生涯学習の理念」を規定している。また、同法第 4条に教育の機会均等を規定し、その第 2項として、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じる義務を国及び地方公共団体に課している。さらに、同法第 12条に社会教育を規定し、個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならないとしている。

166.職業能力開発促進法第 15条の 6、第 16条において、障害者職業能力開発校(全国に 19校)の設置等を定めている。また、同法第 3条の 2第 4項では、身体又は精神に障害がある者等に対する職業訓練は、特にこれらの者の身体的又は精神的な事情等に配慮して行わなければならないと規定されており、他の職業訓練施設においても障害者に対する配慮がなされている。なお、一般の公共職業能力開発校における障害者の受講状況は、2012年度は 608人、2013年度は 663人となっている。

167.なお、本条に関しては、政策委員会より、インクルーシブ教育を推進していくために、我が国が目指すべき到達点に関する議論、また、進捗状況を監視するための指標の開発とデータ収集が必要であるとの指摘があった。また、具体的な課題として、個別の教育支援計画、個別の指導計画の実効性の担保、合理的配慮の充実、本人及び保護者の意思の尊重、特別支援教育支援員の配置や教育的ニーズに応じた教材の提供といった環境の整備などについて問題提起があった。(より詳しくは、付属文書を参照のこと)

障害児教育については、通常の学校での基礎的環境整備も合理的配慮もともに不十分で教育の質に大きな問題がある。一方、特別支援学校では生徒数の急増に教育条件の整備が対応できない深刻な状況である。

第24条の趣旨に沿った改革がなされず、「質の高いインクルーシブ教育を受ける権利」は前進するどころか後退している。
○必要な学級規模の縮小が行われていない。
○学校施設のバリアフリー化が不十分。
○合理的配慮(として保護者が要求した諸々の対応)の提供が不十分。

過去10年を見ても、通常の学校からの障害のある子どもの排除が推定される。
○2010年、「国連・子どもの権利委員会」最終所見勧告は、日本の教育に対し「高度に競争主義的であり、いじめ、不登校・登校拒否、中退および自殺につながること」を懸念し、「子どもの発達をゆがめるほどの過度に競争主義的な教育」の改善を求めたが、現状はよりいっそう競争主義的な教育が激しくなっている。

○エリート主義、能力主義が進行したことにより、貧困世帯の子どもの学力低下が顕著であり、いじめ不登校問題が深刻化するとともに、障害のある子どもが通常の学級から大量に排除され、本来なら入るはずのない子どもが特別支援学級や特別支援学校に入る状況が生まれている。

○文科省の「インクルーシブ教育システム」は従来の「特別支援教育」の枠に止まっている。通常の学校におけるインクルーシブ教育の実現のために実効性のある施策を実施し、かつその効果を検証することが必要。

○通常の学級から排除された子どもは統計資料はないが、2006年度と2016年度を比較すると特別支援学校で学ぶ子どもが1.3倍、特別支援学級で学ぶ子どもが2.1倍、通級による指導を受ける子どもが2.4倍に増加していることから、相当数にのぼると類推される。

教育の環境整備は、質の高い教育の達成する上からも、他の者との平等を基礎とする上からもきわめて不十分である。

○義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)、同法施行令は、障害のない子どもの場合には3学年以上にわたる複式の学級編制を禁じているにもかかわらず、障害のある子どものための学級(特別支援学級)は複式で編制しうる学年に制限がなく、最大6学年の複々式編成を許容している。

○10年前(2006年度と2016年度の比較)と比して、子どもは増えているにもかかわらず、特別支援学校数は1.1倍、特別支援学級数は1.6倍、通級指導の担当教員数は2.1倍の増加に留まり、いずれも教育条件の劣悪化が進行している。教育の機会均等、他の者との平等を実質的に担保するための教育条件整備法の整備と実効的な予算措置が必要。 

○最重度の障害をもつ児童生徒のための「訪問教育」が、全日制の授業時数のおよそ5分の1(1回2時間週3日)の授業時間に止められていること、そうした教育形態に措置される児童生徒の割合に地域格差があり山間僻地の場合には訪問教育の割合が高まること、担当教員の雇用が非常勤講師などの不安定雇用である場合には、教員確保の困難から教育空白が生じる場合すらある。


第24条の趣旨に沿った法令上の改革はなされず、わずかに改正された法令も不十分であり、法令上の障害者差別は温存されている。

○多くの市町村で旧態依然とした機械的な就学先の決定が行われている。
学校教育法施行令の一部改正(2013年)により、「市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分な情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重」とされたにもかかわらず、法改正の趣旨が実行されていない。

児童数の減少にもかかわらず、特別支援学校を希望する児童・生徒が年々増加している。その背景には、通常学級において発達障害児や軽度知的障害児が適切な教育を受けられないことや、いじめの対象となることが考えられる。通常学級において、これらの児童生徒が安心して教育を受けられるように、学級定員の縮小や複数担任制などを検討すべきである。

知的障害児について、大半の保護者は通常学級よりも特別支援教室通常学級や特別支援学校の方が適していると考えているが、一方、通常学級に在籍して通級指導を受けることを希望する保護者も少なくはない。他の障害種別では、通常学級、通級指導、特別支援学級、特別支援学校の中から、本人、保護者の意向を可能な限り尊重して、教育委員会が決定するにもかかわらず、知的障害児のみが通常学級、通級指導を選択できないことは「障害を理由とする差別」と考えられる。

以下の法令上の改革が必要である。
○学校教育法第8章特別支援教育、学校教育法施行規則第6章特別支援教育が、障害者権利条約第24条教育の趣旨に沿って改正されていない。

○教育基本法(2006年改正)第4条第1項(教育の機会均等)で教育上差別されない例示に「障害」が明記されていない。

○障害者基本法(2011年改正)第16条(教育)に、「可能な限り」という制限条項が設けられている。「可能な限り」という制限条項によって、法改正の趣旨が実行されない。

○学校教育法が、特別支援学校(第72条)および特別支援学級(同81条2項)の対象を障害の種類によって限定的に規定し、そこに含まれない幼児児童生徒のこれらの学校へのアクセスが阻まれている。
※「通級による指導」に関する学校教育法施行規則第140条でも同趣旨。


差別解消法が民間事業者に対し、合理的配慮の提供を努力義務にとどめているため、私立学校などで合理的配慮(として保護者が要求した諸々の対応)の提供が拒まれる。

2018年から発足する高等学校における「通級による指導」が、すべての高等学校で利用可能でなく、当該指導を必要とする生徒は進路選択が制約され、他の者との平等が確保されない。

18歳以後の高等教育は、特別支援学校高等部卒業生の進路実態調査以外に、障害がある学生の受入実態に関する公的統計自体が存在せず、実態把握がなされていない。

高等学校に特別支援学級が未整備であり、特別支援学校の対象でない言語障害、自閉症・情緒障害の生徒は「特性に応じた」配慮を含む教育を受けられる場が未整備である。

特別支援学校高等部卒業生の進路実態調査(学校基本調査2016年度版)では、大学等進学者の割合は1.9%(396人)、専修学校等への進学者を加えても2.2%(466人)であり、障害がない場合の大学等進学率(54.7%)、専修学校等を含む進学率(71.1%)と比して著しく低い。

特別支援学校高等部卒業者の進学率を障害種別で見ると、視覚障害29.7%、聴覚障害35.9%に対し、知的障害0.4%、肢体不自由3.1%、病虚弱4.9%と障害種別間でも著しい格差がある。


「大学等進学者」のうち特別支援学校高等部専攻科進学者(高等教育機関ではなく後期中等教育の延長)の占める割合は過半を占め、特に知的障害では92.3%とほぼ唯一の進学先になっているにも関わらず、知的障害教育における高等部専攻科は1067校に上る公立学校には一箇所も開設されていない。


すべての小中学校で障害のある子どもに「障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行う」(学校教育法第81条1項)ことを規定しているにもかかわらず、教諭以外の専門職の配置が制度化されていない。

日常生活介助や学習支援を行う特別支援教育支援員が、必要数から大幅に不足している。

母親を中心とする家族の私的な付き添い、介助等が求められる場合がある。

条約は障害のある教員の雇用の措置を求めているが、我が国の新規教員採用者総数に占める障害のある教員数の比率は0.22%~0.33%というきわめて低い。

視覚障害のある短大教員が、合理的な配慮の提供がなされることなく視覚障害を理由に「授業外し・研究室明け渡し命令」を受ける不当な事態も生じていることに懸念する。

特別支援学校は障害のある子どものための教育機関でありながら、教諭以外の専門職の配置が制度化されていない。各学校に必要な専門職の職種、人数等を定め、その配置を行うことを勧奨する。

障害児が学童保育(放課後児童クラブ)を利用できる施策は十分に整備されていない。
 この間、「安心安全な放課後の生活の場」を願う保護者・関係者の運動により、受け入れ学童保育と障害児は4060カ所7,200人(2003年度全国学童保育連絡協議会調査)から12,926カ所33,058人(厚生労働省2016年度調査)へ増加し、障害児が1人いれば加配職員1人の補助があり、3人以上の入所に対し職員1人の加配がつくようになった。
 さらに、2012年、「放課後等ディサービス」が創設され、利用者は53,000人(2012年度)から139,718人(2016年度)へ増えている。
 しかし、希望するすべての障害児が、学童保育(放課後児童クラブ)や放課後等デイービスを利用するには補助金は少なく、事業所数も不足し、施設設備も指導員の労働条件も劣悪であり、障害児は「他の者との平等」からはほど遠い差別的な実態にある。
 障害児の障害や実態をふまえ、必要な施設設備も指導員の労働条件も充実すると共に合理的配慮を提供する必要がある。

単なる学習の場の共有や、交流だけをめざすのでなく、その子の困難に対して配慮が適切になされる教育形態がとられるべき。

義務教育においても、家族の付き添いを前提にした実態となっている。

18歳で進路を考え就労か作業所かという選択肢しかない。短大や大学のように働くまでの人生を学ぶという選択肢の必要性を感じる。

特別支援学校では、「仕事のクラブ」があり、中学部から作業所へ実習に来ている。学びを保障する場所になっていない問題がある。過度に職業教育に偏重している。

聴覚障害のある学生へ手話通訳やノートテイカーの派遣、機器の整備といった情報保障がすすむよう条件整備をすすめるべき。

教育関係者の養成や育成が不十分だ。身体障害といっても様々であり、例えば肢体、盲、聾で必要な支援の内容は全く異なる。

障害のない子どもたちが、障害のある子どもと一緒に勉強したり、活動したりする機会がなく、小さいころからの障害理解が進まない。

■<エピソード>
○普通校に入学してみたかったが、特別支援学校しか選択できなかった。
 
第25条
健康   

168.障害者総合支援法では、障害者等の障害の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療として、身体障害を軽減又は除去するための治療(更生医療及び育成医療)及び精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置付け、その医療費の一部又は全部を公費で負担することとし、障害者のための医療・リハビリテーション医療の充実を図っている。

169.精神障害者に対する保健・医療・福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性として、2014年 3月に、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」(2014年厚生労働省告示第 65号)を策定し、同指針では、入院医療中心の精神医療から地域生活を支えるための精神医療への改革の実現に向け、地域で生活するために必要な保健医療サービス及び福祉サービスを提供できる体制を確保することとしている。

170.適切な医療を提供するための施策としては、リスクの高い妊産婦や新生児に高度な医療を提供する周産期医療や外傷等に対する適切な治療を行うための救急医療等の医療提供体制の充実を図った。また、疾病等の病因・病態の解明、予防、治療等に関する研究開発を推進するとともに、再生医療等の新たな医療分野について、研究開発の推進及び実用化の加速に取り組んでいる。更に保健人材の育成に関しては、医師、歯科医師、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の医療従事者につき、資質の向上等に努めた。

171.難病に関する施策の推進として、難病法案を 2014年 2月に国会へ提出した。難病法は同年 5月に成立し、2015年 1月から施行された。その具体的な内容は、(1)施策の総合的な推進のための基本方針の策定(2)公平かつ安定的な医療費助成の制度の確立(3)調査研究の推進等であり、その対象として難病に起因する障害を持つ患者も含んでいる。2015年 7月までに、医療費助成の対象疾病が 56疾病から306疾病に拡大した。なお、306疾病以外の疾病であっても、研究の結果、医療費助成の対象となる指定難病の要件に合致することが明らかになった疾病は、指定難病への指定を検討していく予定である。


障害者権利条約においては、「無償の又は負担しやすい費用」にて保健及び保健計画の提供を行うこととされている。しかし、日本の障害者への医療については多くの課題が残されている。

168 自立支援医療について
 自立支援医療については負担の軽減が充分にはかられていない。他の障害施策に比べても低所得層への配慮をはじめとした、負担の軽減が十分に行われているとは言えない。
理由=育成医療は負担軽減が3年間の経過的特例措置であり安定した制度にはなっていない。18歳以上になると更生医療には負担上限額が設けられていないため、心臓手術などの一時期に多額の費用がかかる医療においては負担が軽減される施策とはなっていない。政府と違憲訴訟団により結ばれた基本合意により約束されている低所得層などの負担のあり方の検討がまったく進んでいない。

171 難病に関する施策の推進
 難病法による医療費助成の助成においては対象疾病の範囲が充分とは言えない。同程度の障害を有する者も対象から外れてしまっているという問題を有している。
理由=難病法により医療費助成が拡大したことのみ述べられているが疾病名の違いにより同じ心疾患のなかでも対象から外れている疾病がまだ多数残されている。小児慢性特定疾病の対象704疾病に対して306疾病しか対象となっていないため、トランジション問題は解決しておらず制度の谷間はまだ存在している。

日本には世界中の約2割の精神科病床があり、民間精神病院が多いという特徴がある。精神病床は人口万対27床と先進諸国の約5床に比べると5倍以上である。平均在院日数も284日(2013年)であり、先進諸国の18日前後と比べて極めて長いという現状がある。
 こうした現状は、1958年に設けられた「精神科特例(医師は一般病院の3分の1、看護師は一般病院の3分の2の配置基準を定めた)が民間精神病院の標準になってしまっていることにある。
 入院中心の差別的な精神科医療から、地域で生活しながら、必要な支援を受けられる地域の支援体制への変革が求められている。

心身障害者医療助成に精神障害のある人を対象にするべき。

医療費の給付の助成について、障害の種別、程度、所得、住んでいる場所によって異なる。
第26条
ハビリテーション(適応のための技術の習得)及びリハビリテーション 

172.障害者基本法において、国及び地方公共団体に対して、リハビリテーションの提供を行うよう必要な施策を講じることを義務付けている(障害者基本法第14条第 1項)。また、ハビリテーション及びリハビリテーションのサービスに従事者に対する研修に関しては、障害者基本法において、国及び地方公共団体に対して、専門的技術職員その他の専門的知識又は技能を有する職員を育成する努力義務を課している(同法第14条第 4項)。また、ハビリテーション及びリハビリテーションに関連する補装具や支援機器の利用可能性等の促進に関しては、国及び地方公共団体に対して、福祉用具等の給付又は貸与その他障害者が日常生活を営むのに必要な施策を講じること(同条第6項)、及び福祉用具の研究開発等の促進を義務付けている(同条第 7項)。

173.障害者雇用促進法第8条第 1項においては、職業リハビリテーションの措置は、障害者各人の障害の種類及び程度並びに希望、適性、職業経験等の条件に応じ、総合的かつ効果的に実施されなければならないと規定されている。また、職業リハビリテーションを実施しているハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターは、2016年 4月現在において、それぞれ全国に 544箇所、52箇所、328箇所配置されており、障害者自身が属する地域社会の可能な限り近くにおいて利用可能なものとなっている。

174.さらに、障害者雇用促進法第 20条第 3号等の規定に基づき、障害者職業総合センター等において、障害者の職業リハビリテーションに従事する職員である障害者職業カウンセラー及び職場適応援助者の養成及び研修を実施している。加えて、同条第 1号の規定に基づき、障害者職業総合センターにおいて、多様な障害に対応した職業リハビリテーション技法の研究・開発及び障害者の雇用拡大に役立つ就労支援機器やソフトウェアの研究・開発を実施している。また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において、障害者を雇用する事業主や事業主団体を対象として、就労支援機器を一定期間無料で貸し出すことにより、その普及の促進を図っている。

○職業リハビリテーションに係る内容は27条でとりあげる。


医療と福祉の間に溝があり、リハビリテーション機関から一般就労先に支援がスムーズにつながっていない。

高次脳機能障害の人で一般就労していた場合、医療リハが終わってリワークを望んでも元の企業に戻れない場合に、次の受け皿がない。

補そう具や日常生活用具、それぞれに障害や年齢などにより給付の対象が異なり、負担も収入により異なる。地域ごとの格差もある。
第27条
労働及び雇用   

175.障害者基本法において、何人に対しても、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為を禁止している(障害者基本法第 4条第 1項)。また、国及び地方公共団体に対して、職業相談、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他の必要な施策を講じること(同法第18条第1項)、障害者の雇用を促進するため、障害者に適した職種又は職域について障害者の優先雇用の施策を講じること(同法第19条第 1項)を義務付けている。さらに、障害者を雇用する事業主に対して、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備等に要する費用の助成その他の必要な施策を講じることを義務付けている(同法第 19条第 3項)。

176.積極的差別是正措置を含む適当な措置等による障害者の雇用の促進について、障害者雇用促進法は、第38条及び第 43条に基づき、事業主等に対してその常時雇用する労働者の数に法定雇用率(公的機関:2.3%、民間企業:2.0%)を乗じて得た数(法定雇用障害者数)以上の数の障害者を雇用する義務を課している。この算定にあたって、重度身体障害者及び重度知的障害者については、その1人をもって2人の障害者である労働者に相当するものとし、短時間労働者(週の所定労働時間が週20時間以上 30時間未満である者)はその1人をもって 0.5人の障害者である労働者に相当するものとしている。2015年 6月現在の民間企業における実雇用率は 1.88%(前年1.82%)であり、雇用障害者数は453,133.5人と前年比5.1%(21,908人)増加となり、12年連続で過去最高を更新し、我が国の障害者雇用は着実に進展している状況である。なお、雇用障害者数の内訳は、身体障害者数は 320,752.5人、知的障害者数は 97,744人、精神障害者数は 34,637人となっている。

177.また、事業主間の経済的負担を調整するため、その雇用している障害者数が法定雇用障害者数未満である事業主から障害者雇用納付金を徴収し、法定雇用障害者数以上の障害者を雇用している事業主に対しては障害者雇用調整金を支給している。さらに、障害者雇用促進法第49条に基づき、障害者雇用調整金の支給に加え、障害者の雇用に伴う経済的負担の調整と障害者の雇用の促進及び継続のため、必要な要件を満たした事業主に対して各種助成金を支給している。

178.労働市場における障害者の雇用機会の増大については、障害者雇用促進法第2章に基づき、職業紹介を含む各種職業リハビリテーションを実施している。2014年度のハローワークにおける職業紹介による障害者の就職件数は 84,602件と5年連続で過去最高を更新しており、そのうち身体障害者の就職件数は28,175件、知的障害者の就職件数は 18,723件、精神障害者の就職件数は 34,538件、その他(発達障害、高次脳機能障害など)の障害者の就職件数は 3,166件となっている。

179.また、障害者基本計画において、「福祉、教育、医療等から雇用への一層の推進のため、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターを始めとする地域の関係機関が密接に連携して、職場実習の推進や雇用前の雇入れ支援から雇用後の職場定着支援までの一貫した支援を実施する。」と策定している。ハローワーク職員が中心となって、福祉施設の職員等の関係者による連携体制を確立し、就職の準備段階から職場定着までの一連の支援を行う「チーム支援」においては、2014年度に26,156人を支援し、そのうち 14,005人が就職した。なお、「チーム支援」の支援対象者数の内訳は、身体障害者 3,068人、知的障害者 11,099人、精神障害者 10,865人、その他の障害者 1,124人であり、就職件数の内訳は、身体障害者1,645人、知的障害者 6,301人、精神障害者 5,579人、その他の障害者 480人となっている。

180.さらに、同基本計画において、「障害者の身近な地域において、雇用、保健福祉、教育等の関係機関の連携拠点である障害者就業・生活支援センターの設置の促進・機能の充実を図り、就業面及び生活面からの一体的な相談支援を実施する。また、地域の就労支援機関と連携をしながら、継続的な職場定着支援を実施する。」と策定している。2014年度の障害者就業・生活支援センターの支援対象者は140,838人、就職件数は18,379件となっている。

181.なお、本条に関しては、政策委員会より、次のような指摘がなされている。
(より詳しくは、付属文書を参照のこと)
障害者の雇用・就業の推進のためには、障害者や企業に対する支援の更なる充実をはかることや、改正障害者雇用促進法の趣旨や法に基づく「障害者差別禁止指針」及び「合理的配慮指針」等について情報提供し、着実に実施することが重要である。


<雇用をめぐって>
一般就労の全容についての統計がない。(就労率の一般との格差等)

ハローワークや労基署等にある現行のデータ等の中で活用できるものがあるか。

雇用率制度や特例子会社の問題(ダブルカウント等)

特例子会社では障害のある人の正社員比率が54%であるのに対し、一般の会社では15%となっているため、一般の会社へのキャリアアップに消極的になる傾向がある。しかし、特例子会社の30%は東京に集中し、3県では皆無であるという地域格差がある。

障害者雇用の量は増えているが、非正規が多く賃金も一般より低い。また最低賃金減額措置等もあり所得保障が伴っていない等、質の改善には到っていない。さらに、能力開発や労働力の活用の観点を踏まえた上で、働きにくさなどの障害ゆえの課題における配慮を提供するという点も不十分である。

改正雇用促進法後も職場での差別が続いていること、監視システムの実効性が担保されていないこと、差別禁止に関する理解を広げる必要があること。

職場やハローワークへの手話通訳者の配置等、聴覚障害のある人への情報保障については課題が多い。

民間企業が福祉的就労に発注した場合、これを雇用率に換算する仕組みの創設。

<福祉的就労をめぐって>
所得保障につながらず、労働者性が担保されない労働となっている。

福祉的就労にも原則1割の利用料が課されている。

優先調達推進法の実効性を担保すること。

現行の生活介護事業所ではたらく人の中にも、労働者性を担保する必要のある人がいる。

<雇用と福祉の連携をめぐって>
就労している時間は公的ヘルパーを利用できないことや通勤支援が提供されない等、労働施策と福祉施策が分断されている現状を改める必要がある。

どこで働いても、障害ゆえの困難が伴えば個別ニーズに対応した福祉サービスが受けられるような、労働施策と福祉施策の柔軟な連携が必要である。

現行の就労支援体系を、骨格提言等を踏まえて抜本的に見直す必要がある。

<締約国報告の矛盾>
締約国報告では雇用率についてダブルカウントや0.5人カウントの下で書かれているが、これでは実態の人数が得られない。また、障害の軽重や労働時間の多寡という要素を加えた数字であり、人権侵害にも値する。さらに、これには福祉的就労の場である就労支援A型事業での雇用も含まれている。

<その他>
ILO159号条約等を踏まえること。(福祉的就労への労働法適用、利用料廃止等の課題のところか)

自営の取扱。

SDGsを念頭に置くこと。
【参考】
目標8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。


■<事例・エピソード>
○一般就労するうえで、会社を選べない。

○一般就労した経験があるが、給与は最低賃金のまま、何年も昇給しなかった。

○仕事中にてんかん発作が起きてしまい、ただちに解雇されたことが3回あった。
第28条 
相当な生活水準及び社会的な保障 

182.障害者基本法は、国及び地方公共団体に対し、障害者の自立及び生活の安定に資するため、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講じることを義務付けている(障害者基本法第 15条)。特に、住宅の確保については、国及び地方公共団体に対して障害者のための住宅確保及び住宅整備の促進のための施策を義務付けている。(同法第20条)。また、障害者の経済的負担の軽減のために必要な施策を講じることとしている(同法第 24条)。

183.障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスとして、一般企業等への就労を希望する障害者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等を提供する「就労移行支援」、一般企業等での就労が困難な障害者に就労する機会を提供するとともに、知識及び能力の向上のために必要な訓練等を提供する「就労継続支援」を実施している。なお、2013年度において、就労系障害福祉サービスの利用を経て一般就労に移行した者の数は 10,001人であり、2012年度の数(7,717人)と比較して大幅に増加している。

184.公営住宅への入居に関して、公営住宅を管理している地方公共団体の判断により、入居者の選考において、一定の障害者世帯の優先的な取扱いを実施している(2005年国土交通省住宅局長通知)。
(公営住宅のバリアフリー化については、第 9条「施設及びサービス等の利用の容易さ」参照。)

185.「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」に基づき、精神又は身体に障害を有する児童に対して特別児童扶養手当を、精神又は身体に重度の障害を有する児童に対して障害児福祉手当を、精神又は身体に著しく重度の障害を有する者に対して特別障害者手当を支給している。なお、2013年度末時点において、特別児童扶養手当は、225,201人、障害児福祉手当は 66,632人、特別障害者手当は 121,372人が受給している。

<障害年金制度について>
障害年金制度は給付水準が低く所得保障としての機能を果たしていない等の基本事項の見直しが必要である。

障害厚生年金と障害基礎年金の受給者を重複分を控除して合計すると約170万人であるが、8割以上が障害基礎年金のみの受給者である。その障害基礎年金の受給額は、1級で8万円程度、2級で6万5千円程度であり、国民全体の平均月収24万円の1/3、1/4と、所得保障としての機能を果たしていない。一方、就業率は、国民全体が60%であるのに対して、障害者は30~40%程度であり、就労をしていても大半が労働法の適用外である福祉的就労に従事している。福祉的就労では平均工賃月額は1万4千円程度であり、障害基礎年金と併せても、国民全体の平均月収の半分にも至らず、家族に依存しない自立した生活の大きな阻害要因になっていることを懸念する。

障害年金の防貧機能が低下し、生活保護の受給を防げなくなっている。

国民年金保険料滞納者の増加や厚生年金保険未加入の事業所が相当数あること等、無年金障害者問題が深刻化している。

一般就労している配偶者がいる人や障害のある児童が総合支援法のサービス利用をすると、最高で月37,200円の自己負担がある。作業所やヘルパーを利用すればするほど利用料がかかる。そのため、負担できる額までしか支援を利用しないことも多い。また、利用する意欲を失うこともある。
第29条
政治的及び公的活動への参加 
 186.障害者基本法第 28条において、国及び地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより行われる選挙、国民審査又は投票において、障害者が円滑に投票できるようにするため、投票所の施設又は設備の整備その他必要な施策を講じなければならないこととされている。

187.公職選挙法第 47条及び公職選挙法施行令第 39条の規定により、目のみえない方々が点字投票を行うことができ、同法第48条の規定により、心身の故障その他の事由により、自ら投票用紙に候補者の氏名等を記載することができない者は、代理投票(代筆投票)を行うことができ、同法第49条の規定により、都道府県選挙管理委員会の指定する病院、老人ホーム、身体障害者援護支援施設等に入院、入所中の方々が、その施設において投票を行うことができ(指定施設における不在者投票)、身体に重度の障害のある方々(身体障害者福祉法に規定する身体障害者、戦傷病者特別援護法に規定する戦傷病者のうち一定の障害を有する者等)が、郵便等による投票を行うことができ(郵便等による不在者投票)、同法第58条の規定により、障害者を介助している者等投票管理者が「やむを得ない事情がある者」と認めた者については、選挙人とともに投票所に入ることが認められている。また、同法第 150条、政見放送実施規程の規定により、衆議院比例代表選挙及び都道府県知事選挙の政見放送においては手話通訳の付与、参議院比例代表選挙においては手話通訳及び字幕の付与が可能であり、また、衆議院小選挙区選挙においては、候補者届出政党が作成したビデオに手話通訳や字幕を付与することができる状況にある。また、総務省は公益財団法人明るい選挙推進協会と連携し、選挙啓発を実施しており、その中で、障害者が可能な投票方法等の周知に努めている。

188.「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」に基づき、自書を必要とせず、自書が困難な選挙人であっても比較的容易に投票することができる電子投票の実施の促進に取り組んでいる。

189.公職選挙法第 9条により、選挙権は障害者と障害者でない人とを区別せず保障されている。同法第 46条第 4項において、投票用紙に選挙人の名前を記載することが禁止されており、同法第 52条において、選挙人の投票した被選挙人等の氏名等を陳述する義務を負わないことが規定されている。さらに同法第 227条において、公権により投票の秘密を侵害した場合に処罰されることが規定され、また同法 228条において、投票に干渉した場合に処罰されることが規定されている。同法第 10条により、被選挙権についても障害者と障害者でない人とを区別せず保障されている。

190.なお、成年被後見人は選挙権及び被選挙権を有しないものとする規定が存在していたが、2013年 6月に施行された、「成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律」(2013年法律第 21号)により削除されたところである。

191.障害者の公務の遂行について、国家公務員法第27条において、すべての国民が国家公務員の任用、勤務条件及び処分などについて、差別されてはならない旨規定している。また、地方公務員法第13条において、すべての国民が地方公務員の任用、勤務条件及び処分などについて、差別されてはならない旨規定している。
 

投票について
○氏名欄を丸で囲む等障害特性を踏まえた多様な投票方式を導入するべきである。

○投票所のアクセスを改善するべきである。

○期日前投票を施設・病院等に増設するべきである。

○点字広報の普及等情報保障を拡充するべきである。

国会中継、傍聴等について
○国会中継で手話通訳や要約筆記の配置等情報保障に努めること。

○傍聴する障害者から情報保障のための支援機器を取り上げないこと。

欠格条項について
○大阪府吹田市で働く知的障害の男性が成年後見人制度の被保佐人になったため、地方公務員法の規定により失職した。こうした欠格条項を見直すべきである。

■<事例・エピソード>
○投票所に行く際に、スロープが急であぶない。
第30条
文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加 

192.障害者基本法は、国及び地方公共団体に対して、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起こさせ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスポーツを行うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じることを義務付けている(障害者基本法第 25条)。

193.2001年に成立した文化芸術振興基本法は、第 22条において、障害者が行う文化芸術活動の充実を図るため、その文化芸術活動が活発に行われるような環境の整備その他の必要な施策を講ずることを国に義務付けており、当該規定等に基づき必要な取組を実施している。

194.2013年に開催された「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」中間とりまとめを受け、2014年度からは、障害者の優れた芸術作品の展示を促進するため、作品の所在や制作活動の現状を把握するための調査や、優れた芸術作品を広く一般に普及するための取組に関する調査研究等を実施。また、障害児が継続的に文化芸術活動を実施できる環境を整備するとともに、障害者の文化芸術活動を支援する活動を行う団体への支援を通じ、障害者の文化芸術活動の充実を図っている。

195.2001年度から、全ての障害者の芸術及び文化活動への参加を通じて、障害者の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害者の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として全国障害者芸術・文化祭を実施している。

196.障害者によるコンサートや作品展、障害者も楽しめる舞台芸術公演や展覧会等が各地で開催されている。国立劇場や新国立劇場においては、障害者の入場料の割引を、国立美術館、国立博物館においては、展覧会の入場料の無料を実施しているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館などにおいて、車いす使用者でも利用ができるトイレやエレベーターの設置等障害者に対する環境改善も進められている。一方で,視覚障害者や聴覚障害者等の「情報へのアクセス」の課題を整理し,更なる改善に取り組んでいく必要がある。

197.2014年度より文化芸術振興費補助金にて製作支援した映画作品を対象に、聴覚障害者に、より多くの映画を鑑賞する場を提供する趣旨から、映画の日本語字幕制作を行おうとする団体へバリアフリー字幕制作支援を行っている。また、著作権法では、障害者からの要望等を踏まえ、文化的作品への障害者のアクセスの確保に関して必要に応じて法的処置を行っている。

198.2011年6月にスポーツ基本法が成立し、同法第 2条第 5項において、スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならないことを基本理念として明記した。また、同法の規定に基づいて2012年 3月に策定した「スポーツ基本計画」において、年齢や性別、障害等を問わず、広く人々が、関心、適性等に応じてスポーツに参画することができる環境を整備することを基本的な政策課題としている。

199.文部科学省の調査(2013年)によると、過去1年間に週1回以上スポーツ・レクリエーションを行った割合は、成人一般が 47.5%であるのに対し、障害者(成人)は 18.2%にとどまっており、障害者のスポーツ参加を一層促進する必要がある。

200. 2015年度より、スポーツ関係者と障害福祉関係者が連携・協働体制を構築し、地域において一体的に障害者スポーツを推進する取組を支援している。また、障害児を含めた障害者の日常的なスポーツ活動を推進するため、特別支援学校等を拠点とした障害者のスポーツ活動の拠点づくりを推進するための支援を実施することとしている。

201.スポーツ基本法の規定に基づき、障害者スポーツの全国的な祭典である全国障害者スポーツ大会の円滑な実施等のために、開催者である公益財団法人日本障がい者スポーツ協会及び開催地の都道府県に対し、必要な援助を行っている。

202.スポーツ基本法の規定等に基づき、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会に対する補助を通じて、障害者スポーツ教室や体験会等の実施などの障害者スポーツの機会の確保や、障害者スポーツ指導者の養成・研修、パラリンピック、デフリンピック、スペシャルオリンピックス等の国際大会への選手の派遣等を推進している。また、選手強化のため、世界大会でメダル獲得が有望な選手・団体に対し重点的な強化を実施している。その他、同協会において、組織強化や主催大会の実施、国際大会への日本選手団派遣、パラリンピック競技大会のメダリストへの報奨金や選手の育成強化を図るための、各企業への協賛や募金の呼びかけなどを行っている。

203.障害者のスポーツに対する国民各層の理解と関心は年々高まりをみせており、国際スポーツ大会に我が国から多数の選手が参加している。2015年 3月~4月には、ロシアのハンティマンシースク、マグニトゴルスクにて第18回冬季デフリンピック競技大会が開催され、日本からは 22名の選手を含む 48名の日本代表選手団が参加した。また、2015年 7月から 8月にアメリカのロサンゼルスで開催された「2015年スペシャルオリンピックス夏季世界大会・ロサンゼルス」には、77名の選手を含む118名の日本選手団が参加した。2014年 3月には、ロシアのソチで「ソチ 2014パラリンピック冬季競技大会」が開催され、日本からは 20名の選手を含む55名の日本代表選手団が参加した。

204.2013年9月に開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市が東京都に決定した。これにより、東京都は史上初めて、2度目のパラリンピック夏季競技大会を開催する都市となった。パラリンピック競技大会は、世界のトップアスリートが参加し、スポーツを通じて、障害者の自立や社会参加を促すとともに、様々な障害への理解を深めることにつながるものであり、また、利用の容易さに配慮した会場やインフラの整備により、東京のまち全体を障害者を始めとする全ての人々が安全で快適に移動できるようになり、ユニバーサルデザイン都市、東京の実現が促進されるものである。

205.パラリンピック競技大会を始めとする近年の障害者スポーツにおける競技性の向上は目覚ましく、障害者スポーツに関する施策を、福祉の観点に加え、スポーツ振興の観点からも一層推進していく必要性が高まっていることを踏まえ、2014年度より、スポーツの振興の観点から行う障害者スポーツに関する事業を厚生労働省から文部科学省に移管し、障害者スポーツをより一層推進している。206.障害者総合支援法第77条及び第 78条に基づく地域生活支援事業として、レクリエーション活動を通じた障害者等の体力増強、交流、余暇活動の充実等を図り、また、障害者等がスポーツに触れる機会を提供するため、各種レクリエーション教室や運動会などを開催し、障害者等が社会参加活動を行うための環境の整備や必要な支援を行う「レクリエーション活動等支援事業」を実施している。

207.観光立国推進基本法第 21条において、国は、高齢者、障害者、外国人その他特に配慮を要する観光旅行者が円滑に利用できる旅行関連施設及び公共施設の整備及びこれらの利便性の向上に必要な施策を講ずることとされている。これに基づき、高齢者や障害者など、観光や移動に際して困難を生じたり何らかの支援を必要とする方に対して、相談・問合せ等の対応を実施する一元的な窓口の立ち上げや、その活動強化に向けた取組を行っている。
(施設のバリアフリー化、放送を含む情報の利用におけるバリアフリー化、字幕放送等の普及については、第 9条「施設及びサービス等の利用の容易さ」参照。)

マラケシュ条約批准にむけ、締約国と当事者団体とが協議しながら国内法制度の改善が必要である。

条約30条1項(a)項(b)項にある「アクセシブルな様式」を通じて「文化的作品」や「文化的な活動」への「アクセスを享受する」ための施策の必要性について記述するべきである。

余暇活動等の利活用実態と行政機関等による対応について記述するべきである。

■<事例・エピソード>
○コンサートなどに出かけた際、チケット代や交通費などについて、ヘルパーの分もお金を払っている。
第31条 
統計及び資料の収集    

208.障害者基本計画(Ⅳ3)に基づき、具体的な達成目標を設定し、数値等に基づき取組の実施状況及びその効果を把握、評価している。内閣府においては、関係省庁から、障害者に関する基礎的なデータを集め、ホームページに掲載している(基礎データ集)ほか、障害者施策に関する国際比較調査や世論調査、意識調査などを毎年行い、ホームページ等で公表している。

209.統計法において、統計調査によって収集された情報については、守秘義務等を規定しており、障害者に関する情報も含めて適切に保護されているほか、国際連合で採択された「公的統計の基本原則」を踏まえた基本理念も定めており、統計の収集及び利用に関する倫理上の原則が遵守されている。また、公的統計については、その所在に関する情報も含め、インターネットその他の方法により適切に公表を行っている。

210.国の行政機関により収集された障害者の個人情報は、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」に基づき、適切に取り扱われる。同法の規定に違反した場合には刑罰が課せられる。同法は、個人情報の保護に関する国際的な基準であるOECD8原則を具体化しているものであり、国際的に受け入れられた規範を遵守している。また、国家公務員法第100条では、国家公務員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない旨規定している。

211.なお、本条に関しては、政策委員会より、次のような指摘がなされている。
(より詳しくは、付属文書を参照のこと)
障害者に関する政策の監視・評価に使える水準の統計が、国・地方公共団体ともに不足しており、日本の人口全体を対象とした調査の実施や男女別統計の実施を徹底すべきである。
(統計・データについては、Ⅰ「条約締結に至る経緯と現状」参照) 

国勢調査、国民生活基礎調査などに「障害の有無に関する設問」を入れて、一般国民と比較可能な生活実態データを収集し、活用するべきである。

5年毎に行われる「生活のしづらさ調査」を改善し、訪問調査員が機能調査に関する設問については聞き取りする調査として信頼性を高めるとともに、適切な分析集計と活用を行うべきである。

国の責任でろう者、手話使用者や手話通訳者の実態調査を実施し基本的なデータを把握することが必要である。聴覚障害者施策や手話通訳者養成事業などの関連事業はこれらのデータを踏まえて立案されるべきである。
第32条 
国際協力
212.障害者基本法においては、国が、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を国際的協調の下に推進するため、外国政府、国際機関又は関係団体等との情報の交換その他必要な施策を講ずるように努める旨規定されている(障害者基本法第 30条)。

213.我が国は、開発協力大綱に基づき、人間の安全保障を推進する観点から開発途上国の障害者に対する支援や障害者に配慮した協力を実施している。支援は主に有償資金協力、無償資金協力及び技術協力により実施している。有償資金協力では、鉄道建設、空港建設等においてバリアフリー化を図った設計を行うなど、障害者の利用に配慮した協力を行っている。無償資金協力では、障害者の利用に配慮した協力を実施するとともに、障害者のためのリハビリテーション施設や職業訓練施設の整備等の協力を行っているほか、日本 NGO連携無償資金協力を通じて日本の NGOによる障害者支援(障害児の普通学校通学支援、職業訓練、車椅子供与等)に資金面で協力している。技術協力では、開発途上国の障害者の社会参加と権利の実現に向けて、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、障害者を対象とした取組に加え、開発プロセスへの障害者の参加も支援しており、障害者を専門家及びJICAボランティアとして派遣することも行っている。

214.その他にも、アジア太平洋地域への協力として、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)に対する日本エスカップ協力基金(JECF)を通じた活動支援等を実施してきた。

日本政府は、1993年からの第1期アジア太平洋障害者の10年の提案者であり、その推進を財政的にも人的にも、民間団体と協力してとりくんできた。近年はこのとりくみが弱くなっている。
第33条 
国内における実施及び監視
215.我が国における中央連絡先は、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(障害者施策担当)付及び外務省総合外交政策局人権人道課であり、政府内における調整のための仕組みについては、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(障害者施策担当)付が担当する。

216.障害者権利条約の実施を促進するための枠組みに関して、障害及び障害者に対する国民の関心、理解を深めるとともに、障害者の社会参加意識の高揚を図るため、1995年から、毎年 12月 3日から 9日までの 1週間を「障害者週間」としている。前後の期間も含め、全国で、官民にわたって多彩な行事を集中的に実施するなど、積極的な啓発・広報活動を実施している。

217.人権擁護に携わる行政機関として法務省に人権擁護局が設けられており、その下部機関として、法務局人権擁護部(全国 8か所)、地方法務局人権擁護課(全国42か所)及びこれらの支局(全国263か所(2015年4月1日現在)))が設けられている。また、我が国においては、全国で約 1万4000人の人権擁護委員(法務大臣が委嘱した民間のボランティア)が、法務省人権擁護局、法務局・地方法務局と協力して、人権擁護活動を行っており、以上の法務省人権擁護局、法務局人権擁護部・地方法務局人権擁護課及びこれらの支局並びに人権擁護委員を総称して、「法務省の人権擁護機関」と呼んでいる。

218.法務省の人権擁護機関では、人権教育・啓発推進法第 7条に基づき策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」により、各種啓発活動を実施している。具体的には、「障害のある人の自立と社会参加を進めよう」を啓発活動の年間強調事項の一つとして掲げ、講演会や座談会の開催、啓発冊子等の配布、各種イベントにおける啓発活動を実施している。

219.人権教育・啓発推進法第 6条では、国民は、人権尊重の精神の涵養に努めるとともに、人権が尊重される社会の実現に寄与するよう努めなければならないと明記している。同法第 7条に基づき策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」において、人権教育・啓発の推進については、地方公共団体や公益法人、民間団体、企業等の果たす役割が極めて大きく、これらの団体等が、それぞれの分野及び立場において、必要に応じて有機的な連携を保ちながら、人権教育・啓発に関する基本計画の趣旨に沿った自主的な取組を展開することを期待するとともに、当該計画の実施に当たっては、これらの団体等の取組や意見にも配慮する必要があると明記している。

220.障害者権利条約の実施を保護するための枠組みに関して、法務省の人権擁護機関では、全国の法務局・地方法務局において、障害者の人権問題を含むあらゆる人権問題について相談に応じており、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、関係機関とも連携・協力し、事案に応じた適切な措置を講じている(法務省設置法第 4条第 26号、同条第29号、人権擁護委員法第 11条、人権侵犯事件調査処理規程(法務大臣訓令)))。なお、2014年の障害者を被害者とする暴行虐待、社会福祉施設における侵犯、差別待遇、強制強要についての人権相談件数は 2,818件であり、人権侵犯事件数は448件となっている。

221.障害者権利条約の実施の促進、保護、監視の全般にわたる枠組みに関して、障害者基本法においては、内閣府に、障害者、障害者の自立及び社会参加に関する事業の従事者、学識経験者 30人以内で構成される審議会として「障害者政策委員会」を置くこととしている(障害者基本法第32条、第 33条)。その構成については、様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた協議を行うことができるよう配慮することとされており(同法第 33条第2項)、現在の構成員の半数が障害者本人又はその家族の代表から構成されている。政策委員会は、「障害者基本計画」の策定又は変更について意見を述べるほか、障害者基本計画についての調査審議、実施状況の監視などを行い、必要に応じて内閣総理大臣に対して意見を述べること等ができることとされている(同法第 11条第 4項及び第 9項、第 32条第 2項)。この政策委員会が、本条約第33条にいう監視するための枠組みを担っており、条約の実施の監視は、政策委員会が、障害者施策の方針の根本を成す障害者基本計画が本条約の趣旨に沿って実施されているかを監視することによって行われる。政策委員会においては、2015年5月から、本報告の提出を視野に入れて第 3次障害者基本計画の実施状況の監視を行い、同年9月にその結果を文書として取りまとめた。(同文書は付属資料参照)

222.また、障害者基本法においては、都道府県や市町村において、当該都道府県又は市町村の障害者施策の総合的かつ計画的な推進について調査審議し、及びその実施状況を監視する合議制の機関を置く(市町村においては「置くことができる」)こととされており、また、当該機関の委員の構成については、当該機関が様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた調査審議を行うこととなるよう配慮されなければならないこととされている。
(障害者基本法第 36条)
(了)
                                                     

<啓発について>
締約国報告では啓発活動のひとつとして障害者週間を挙げているが、内閣府の調査によると障害者習慣を知らない国民が71.4%に及び、より効果的な啓発、広報活動が必要である。

<国内の条約実施状況の監視について>
締約国報告では、条約の実施状況の監視は内閣府の障害者政策委員会が、障害者基本計画の実施状況の監視を通じて行うこととしている。
 しかし、条約は独立した監視機関の設置を求めており、障害者政策委員会はこれには当たらないと考えられる。
 また、障害者基本計画と条約とは項目も内容も異なるものであり、計画が条約の趣旨に沿って実施されているかを監視することによって、条約の監視も行われるとすることは適切ではない。


締約国への国連・障害者権利委員会からの最終所感(勧告)と各パラレポJD仮訳

障害者権利条約(日本政府公定訳) 2014年1月20日公布

障害者の権利に関する条約 第1回日本政府報告(日本語仮訳) 2015.12.18
  「議論の整理  ~第3次障害者基本計画の実施状況を踏まえた課題~ 障害者政策委員会」の付属文書を含むPDFファイル

障害者権利条約第1回日本政府報告(日本語仮訳)に関する意見募集について パブリックコメント(2016.1.15~2.13):結果公示案件詳細  ○意見件数:325件

障害者権利条約 第1回政府報告(外務省web)   2016年6月29日   ○日本語訳   ○議論の整理   ○統計・データ

権利条約の日本政府報告+議論の整理の英文(外務省) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

JDウオッチング政策委員会+障害者部会