障害者問題研究  第37巻第4号 (通巻140号)
2010年2 月25日発行  ISBN978−4−88134−814−7 C3037  定価 本体2500円+税
特集 障害児者の貧困

特集にあたって/鈴木勉(佛教大学社会福祉学部)

現代の貧困と最低生活保障の意義/金澤誠一(佛教大学社会学部)
 要旨:本稿は,三つの部分から成っている.第1に,貧困概念についての検討である.貧困概念は,この間大きく変化している.絶対的貧困論から相対的貧困論へと貧困概念は拡大してきた.しかし,相対的貧困論もまたそのあいまい性を露呈しているのが現代社会の特徴である.そのあいまい性を克服するために,新しい最低生活の指標を作ることが試みられている.また,それに基づく現代のナショナルミニマム論が展開されている.第2に,現代の貧困の原因・捉え方について,20世紀末の福祉依存型文化論による福祉国家への攻撃からパネル調査による社会的排除論に基づく能動的福祉・エンパワーメントへの展開とその問題点を指摘し,現代社会における福祉国家の再構築の必要性を述べている.第3に,「最低生計費」試算を行い,それを基軸とした「最低生活の岩盤」の形成の必要性を展開している.
キーワード:現代の貧困概念,ナショナルミニマム,相対的貧困論のあいまい性,最低限必要な生活の「機能」,人間存在の多様性への配慮,「最低生計費」試算


子どもの貧困の現状と政策方向/浅井春夫(立教大学コミュニティ福祉学部)
 要旨:子どもの貧困への社会的関心が集まりつつある.わが国の子どもの貧困率は14.2%であり,ひとり親世帯の貧困率は54.3%となっている.この数値はOECD加盟国30ヵ国のなかで低位にある.とくにひとり親世帯は最悪の状態にある.子どもが貧困生活を生きるということは,親・保護者からの期待値が低いなかで生きるということであり,希望を早い時期から奪われている現実がある.それに対してわが国の貧困削減政策はほとんど機能していないのが実際である.新政権のもとで子どもの貧困削減政策をどのように具体化するのかが問われている.その点に関わって,本稿では基本的な視点と当面の具体的な政策の方向と内容を提起する.
キーワード:相対的貧困率,子どもの貧困,社会的不利,子ども手当,子どもの貧困削減政策


知的障害者のいる家族の貧困とその構造的把握/田中智子(佛教大学社会福祉学部)
 要旨:本稿は,障害者のいる家族に生じる様々な生活問題を貧困の視点から捉えなおすことを試みる.第一に,障害者・家族の状況を貧困の視角から捉えた調査・研究はあまり見られないが,その中で成人期においても家族への経済的依存は継続していること,障害者のいる家族は,一般世帯と比較して経済的収入が低位におかれていることを明らかにした.第二に,A市における障害者の家族を対象とした調査をもとに,障害者の家族が,貧困状態に陥る構造について考察した.その結果,貧困に陥る構造としては,家計がシングルインカムによって支えられていること,本人にかかる支出が本人収入を上回ることを指摘した.貧困状態に陥った家族においては,その内外で母子一体化による孤立した状態へと帰結することをさらに明らかにした.
キーワード:障害者のいる家族,貧困,社会構造


障害者の貧困と所得保障のあり方に関する問題提起 無年金障害者問題をとおして/磯野博(龍谷大学大学院社会学研究科研究生)
 要旨:本稿は,無年金障害者問題をとおして障害者の貧困を社会階層論的にとらえ,障害者の貧困が,不安定・低所得(低年金)障害者問題であることを示している.そして,障害当事者団体が行った調査を踏まえ,そのような障害者の貧困が,障害者の趣味・娯楽など,社会参加にも影響を与えていることを示している.そのうえで,今後の障害者の所得保障について,障害者の所得保障の中心である障害基礎年金のあり方をとおして問題提起している.その主な論点は,障害基礎年金の社会手当化であるが,今後の障害者の所得保障では,就労と所得保障のあり方を一体に論じる必要性についても言及している.
キーワード:無年金障害者問題,社会階層論,障害年金,社会手当,保護雇用,ワークフェア,ベイシックインカム


国際比較でみる日本の障害年金/百瀬優(高千穂大学人間科学部)
 要旨:本稿では,障害者の所得保障の中心的な制度である障害年金の国際比較を行う.まず,OECDや各国の統計資料を用いて,日本の障害年金の財政規模が小さいこと,受給者数が少ないこと,給付水準が低いことを示した.また,アメリカ,ドイツ,スウェーデン,日本を取り上げて,@障害認定,A拠出要件,B給付設計,C無年金・低年金対策の四つの視点から,障害年金の制度設計を比較検討した.これらの作業を通じて,国際的な視点からみた場合の日本の障害年金の課題を明らかにした.
キーワード:障害年金,障害認定,拠出要件,給付設計,無年金・低年金対策,国際比較

【報 告】

特別支援学校寄宿舎から見える障害児の「生活の貧困」/小野川文子(東京都立特別支援学校寄宿舎)

障害を有する外国人児童生徒の教育貧困の実態  本人・保護者及び学級担任への面接法調査から/高橋智(東京学芸大学)・中村美樹(東京学芸大学)
 要旨:日本の学校に在籍する障害を有する外国人児童生徒本人とその保護者及び学級担任に調査を行い(東京都内の小・中学校の特別支援学級・通級指導学級及び特別支援学校高等部に在籍する外国人児童生徒本人4名,その保護者5名及び学級担任7名.調査期間:2006年11月?2007年1月),障害を有する外国人児童生徒の困難・ニーズと彼らに対する支援の実態を明らかにした.とくに母親の抱える情報不足・地域参加の困難に起因する社会的孤独感が子どもに不安を伝え,学校との関わりに閉鎖的傾向をもたらすことが明らかとなった.本人・保護者が閉塞的な学校・地域との関係から脱却し,双方向的な関わりが可能となるような支援を構築していくことが急務である.また,本人は文化的背景の肯定的受容,アイデンティティの形成や帰属意識の希薄さ等の困難を有しており,さらに不安定な生活展望が長期的な支援を困難にしていた.このような困難・ニーズの実態を踏まえ,単純な受け入れ論ではなく,多文化社会が抱える複合的な諸課題に対処して具体的支援を構築していく必要がある.
キーワード:障害を有する外国人児童生徒,教育貧困,社会的孤立,母国語・母文化教育,アイデンティティ

知的・精神障害をもつ人たちの触法問題事例と貧困を考える/黒田孝彦(総合社会福祉研究所事務局長・『福祉のひろば』編集主幹)

障害者自立支援法の反対運動と負担問題/井上吉郎(WEBマガジン・福祉広場,障害者自立支援法訴訟原告)


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