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2002年2月号
FILE.11
  地域に広がるつながりの場
  ー人と人とのネットワークをー

衣津子さんの写真
衣津子さんのベッドサイドにクリスマスがやってきた




 東京・渋谷区代々木は各国の大使館などもある古くからの閑静な住宅地です。「小さなクリスマス会を開きます」とメールで誘われ、3年ぶりで柴田さんのお宅を訪ねました。
 パーティは、訪問看護婦さんや研修生が3名、中央合唱団の2人の歌い手に、会を呼びかけたスロープ等の住宅改造を手がけた「住まいの改善ネットワーク」のみなさん6名が集まっていました。

 久しぶりにお会いした柴田さんは、ケーキをおいしそうにパクつき、血色もよく、とても元気そうで、なんだかとても嬉しくなりました。

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 柴田衣津子さんは、OL時代に事故で頸椎損傷となりました。ある日、渋谷区で「高齢者が安心してゆたかに暮らせる街を」と活動している福祉倶楽部代表の福井典子さんから電話をもらいました。「頸椎損傷の患者さんなんだけど、同じケイソンの友だちがインターネットでできるといいなって思うでしょ! ねっ!!」とお願いされ、私はパソコンボランティアの仲間たちにインターネットで継続できるパソボラを呼びかけ、自転車で来れる距離の大学院生を紹介したことがあります。

 柴田さんが操作する様子を見て、インターネットを使いたい願いを確認し、訪問看護婦さんからも意見を聞きました。お兄さんがエンジニアで、補助具なども自作されていることがわかり、お兄さんとはインターネットで連絡をとりあいながら、パソコン環境を変更していくことを話し合ったことが思い出されます。

 あれから3年。なによりもお母さんはじめ、家族の励まし、訪問看護婦さんたち、福井さんなど地域の世話役さん、そして住宅改造チーム、さまざまな人と人とのつながりのなかで、衣津子さんの生活も少しずつ広がっているようです。

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 年森隆広さん(46歳)は、「住まいの改善ネットワーク」事務局長です。ネットワークは、お宅を訪問する看護婦さんの、「ここに手すりがあったら、ひとりで立ち上がれるのにな」という願いと、「ちょっとした改装でずいぶん暮らしやすくなるのにな」という建築家が手をつないで生まれました。毎月の例会には、設計・建築・医療・福祉の専門家が集まって、ひとりひとりの健康や、住まいの改善の手だてについて話し合っています。

 昨年、秋田県の中学校の修学旅行生が「住まいの改善ネットワーク」のホームページを見て、住宅改造した柴田さんのお宅を訪問しました。「自主研修福祉コース」の7人の中学生は、柴田さんと電子メールのやりとりを約束して帰っていったそうです。

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 柴田さんの目標は、自分で電子メールをすること。呼気による操作ですので特殊な補助機器が必要です。550万人が受講するというIT講習会を希望しても、会場には行くことも出来ず、在宅訪問の講習の機会は固く閉ざされています。前号で紹介したデンマークの小さな町で暮らすミケルセンさんの姿が浮かんできました。生まれた年代はほぼ同じの二人が、生まれた国によって、まったく違った環境にある。技術立国・日本と言われた新世紀初頭の日本の現実に、なんともいえない苛立ちをおぼえます。

 柴田さんのメールです。パソコン入力はお母さんにお願いしているそうです。

 いつも暖かく見守っていただき、ありがとうございます。お蔭で秋田の中学生と出会えたり、いろいろな交流が持てて感謝しています。今では中学生のお母さんとメール交換をしています。これからもよろしく。        衣津子

(文・写真/薗部英夫・全障研事務局長)


住まいの改善ネットワーク
http://www.intersumai.net/

東京都渋谷区を中心に、年齢や体のようすにあわせた、安らぎのある住まいづくりをすすめる。建築・医療・生活支援の協働グループ。

住まいの改善ネットワークのみなさん

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