陽はまた昇る<6>
あしたにいっぽ



川瀬とし江さんは滋賀・湖北の人だ。
旅のなかまの関西メンバー9人は関西空港から飛んで、フィンランドで合流した。

『あしたにいっぽ  重症心身障害児二人の子育て』文理閣、2006年
の出版祝いで、ずっといっしょに地域で運動してきた立岡晄さんは、
 : 滋賀の障害者福祉の土台をつくった糸賀一雄さんの
 : 「この子らを世の光に」・・・「できる社会をつくろう」!という「福祉の思想」
 : 川瀬さん夫妻はまさにこの糸賀先生の「福祉の思想」の実践者ではないでしょうか
と述べている。

長男の信明さん、長女の愛子さんの二人は重症心身障害児といわれる最重度の子どもたちだ。欧米でさえ、教育の対象ではなく医療の対象とされてきた。30数年前の日本では、ほとんど十分な福祉や教育制度はなにもなかった。

「最初は思い悩み、死を考えたことも幾度となくありました」
「自分が地の底に埋もれていくようでした」

でも、ある日、子どもら二人のあどけない笑顔にひとすじの光を見た。目が合うと笑顔が返せるようになる。気持ちが一歩前に踏み出せ、そこから仲間やスタッフとの出会いに元気をもらった。

そして、川瀬夫妻が核となって、地域で人の輪を広げ、
 ○保育園への障害児受け入れ、
 ○重症児施設びわこ学園(大津)から地元の養護学校(長浜)への入学
 ○養護学校卒業後の共同作業所づくり
 ○滋賀県初の重症心身障害者通園事業
などを、なにもないなかで、運動でつくってきたのである。

デンマーク、フィンランドでそれぞれ訪問した養護学校では、一人一人の身体に配慮された車イスに大いにショックを受けていたようだ。
 フィンランドの養護学校
「寝たきりの重度の子も、車イスによって勉強ができる!食べられる!!
 車椅子によって、こんなに変わるものと驚きました!!!
 日本だと、ただ車イスにベルトが着いてるだけですよね、、、」

 ◆  ◆

夫の源信さんは、工務店を経営するとともに、滋賀県のまじめな商店主たちのとりまとめ役をしている。旅の間は、おいしそうにビールを飲み、いつも微笑んでいた。

しかし、源信さん、デンマークでのシニア・コーポラティブ住宅訪問や、ヘルシンキ工科大学にあるオタニエミの教会(写真 アルヴェルト・アールト設計)など建築物と税制の話になると、ぐっと身体が前のめりになっていました。
 オタニエミの教会
「高い税金を払っても、それだけの社会保障が受けられると聞くが、どれくらい税金は高いの?」そんな彼の質問に、デンマークの通訳の田口さんが解説してくれた税金の話。

<税金の概要>
○所得の8%=「労働市場付加税」としてまずひかれる。
○残りの92%から
 「市民税」=約24%(各市で税率は決められるため、市によってちがう)
○さらに、「国税所得に応じて(年700万より上)」=5%〜14%
○そして、1月1日から廃止された「県民税」にかわって「医療税」=8%
 →以上を合計すると、平均50%の税金。
○それと、「消費税」=25%(日常生活費は別)
 車などはすべて「外車」なので税金180%(みんな公共交通利用か自転車なわけね)
だからみんなは、ものは買わない! 直せるものは徹底的に直す。外食などしない!

<生活費>
・光熱費、家賃など払って、差し引き残らなければならない国基準(生活保護基準)は、
 飲食、衣服、旅行などで、月一人約3500クローネ(7万円)と定められている。
 
<障害者の場合>
2004年の旅で聞いた知的障害のある30歳を過ぎた人の収入は(2年前のレートで参考に)
 早期年金=4660KR(約9万円)
 住宅手当=2661KR(5万)
 **手当=3021KR(6万)
 付加年金=4000KR 
 合計  =14709KR(約28万円、デンマークの平均賃金は35万程度)

以上の大前提として、教育費は大学までまったく無料、個人負担はいっさい無し。
医療費も完全に無料。だから「貯蓄」の必要はない。「保険」もほとんど必要ない。

某国の財務省は、介護保険はいまは1割負担だが、それを2割負担に、ほんとは社会保険が3割になったから、松井選手並みの3割をねらってる??なんて話も聞こえてきます。

子どもを預けて安心して働ける。高齢者介護も社会が責任をもってくれる。この「安心感」はとても大きいですね。そうすると、日本の税金は、「安い」のか「高い」のか。

川瀬さん曰く
「ほんとに、移住したくなっちゃうわよね!」
 (現在は、北欧諸国への「移住」は受け入れていないそうです)
「やはり日本で、少しでも住みやすくなるようにがんばらなくては」

 川瀬夫妻
 ▲後ろが川瀬夫妻
   
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