2006年09月14日

 鈴木さんの結婚と障害者権利条約

こんなエッセイもどきを「すべての人の社会」2006年9月号(NO315号)
に書きました。ご笑覧おば

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 田園が広がる信濃川支流の町で一人暮らしをしている鈴木さんから結婚を祝う会の案内が届いた。鈴木さんは脳性マヒによる重度の障害者だ。IT基本法が制定された2000年の国会・参考人意見陳述で「寝たきりになった。あきらめるのではなく、人を介しても自己表現したい。パソコンは希望の道具だ」と彼の言葉を精一杯伝えたことがある。

 そんな彼を今年、障害者自立支援法と平成の市町村大合併による大波が襲った。農村部での移動手段は車だ。通院は福祉タクシー。合併により助成金は激減し月3万円が必要となる。新法で、いままでは医療・介護・通院費用を足しても1か月5千円ほどが月額6万円。さまざまな手当(=収入)の総合計の5割の負担増となる。

 彼を精神的にも支えるのは、ホームページを二人三脚で手伝ってくれているRさんだ。二人の入籍までには、重度の障害、生計不安、年差などなどどれだけの困難があっただろう。

 10年ほど前、北欧を旅したとき、電動車椅子を利用する重度の障害者カップルに話を聞いたことがある。彼らはずっと笑顔だった。安定した所得(障害者年金)があり、仕事があり、自己を表現し、社会から正当に評価されるくらしがあった。

 北欧の障害者たちと同じように、この国で、鈴木さんたちが、つつましいけれど、生き甲斐のある生活を求めることは「贅沢」なのだろうか。

 今秋、国連は障害者権利条約を採択する。祝う会は11月11日。デイケアセンターの一室を借りたそうだ。当日は、「歌をうたって!」と頼まれている。私は「しあわせになろうよ」をこころをこめて歌うつもりだ。