瓦礫の街で 4


95/02/06 23:42:48 瓦礫の街から<4>
神戸市中央区・兵庫障害者連絡協議会

大根200円、タマゴ200円、ニンジンは150円。
障害者支援センターから、裏道をとおり、鉄道の高架線路沿いを三宮をめざして歩く。
線路の上には2台の電車が止まったままになっている。
その途中の大月六商店街は3分の1が営業していた。
その八百屋の値段表だ。

公園をぬけると深い緑色のテントがめだった。
「自衛隊提供避難用テント」と看板が立てあった(^^;)

三宮に2時半。
駅前のデパート・そごうのビルが、神戸新聞の会館が、テレビで見たとおりに破壊されている。
しかし、ビルの倒壊とその撤去作業は、猛烈なほこりをあげて、じつにスピーディにすすんでいた。
こんなにもたくさんの、パワーシャベルなどは、どこからやってきてるのだろう。
高速道路も同様に落下したところなどは、きれいに撤去されていた。
5兆とも6兆とも試算される復興のための土木関連経費だが、
ここでもゼネコンは活躍しているのだろうか。

地下を通る阪神電車が「高速神戸」まで昨日開通したというので、
地下駅から電車に乗る(1時間に3往復)。
地下では被害はほとんどわからない。
電話線でも地下に設置しているところは強度が80倍などと新聞にでてたけど
頑丈という点では地下はそうなのかもしれない。

「高速神戸」駅では、秋に来たときとおなじように地下商店街は営業している。
地上に出ると目の前にある楠木正成を奉る湊川神社のりっぱな塀が倒れていた。
この中央区の西のはずれは神戸高等裁判所を中心に弁護士事務所などが多い。
めざす兵障協事務所の前の3階建てのビルは全壊しており、
みだれた布団や家具がいたいたしく散乱し、わきに花が添えてある。
その2件隣の「神戸ラーメン」では、少ないお客が湯気のただようラーメンを食べていた。

そして、木造平屋だての、いかにもこわれそうな全障研も同居する事務所が、すっくと立っている。
兵障協会長の黒津右次さんは、
姫路市で障害児学級の教員を長くつとめ2年ほど前に定年退職された。
戦後の人権裁判といわれた結核患者・朝日茂さんの「朝日訴訟」につづく
全盲の堀木文子さんの訴えた「堀木訴訟」を現地で支えた重鎮だ。

語りが熱をおびてくると、白い頬が赤みをおびてくる。
:はじめて姫路から事務所に入ったときには歩いて5時間かかった。
:いまは、事務所にかかってくる電話の応待でたいへん。
:しかし、依然として、多くの障害者がどこですごしているのかわからない。
:支援カンパは、正直、まとまったお金が欲しい。それを資金にして、
:無利子、無担保で治療院や働く場を失ってしまった障害者に貸付金ができる
:いま一番必要なのは住宅だ。でも、たとえば治療院を失った視力障害者は、
:そこで営業できない。それはたいへんなことだ。
:住宅も雇用も医療、福祉、そして教育がキチット行政の手で、いまこそ
:保障されなければならない
:しかし、県、市の必要な職員のリストラ、たとえば国立病院、本来ならばぜひとも
:がんばってほしいところだが、猛烈なリストラの嵐で、いざというとき人手がない。
:いままでのツケが、こうした局面で全部ふきだしている。
:昨日、神戸市にも要請にいったが、仮設住宅の建設一つでも、車椅子の家庭には
:スロープなどで段差をなくす。トイレは便器に配慮する。
:あたりまえのことを、いま声を大きくだしていかなければならない。
:30万を越える被災者の対応には30万都市を突然つくるということ。
:しかし、見たとおり、すごい格差がある。
:家がペシャンコになった人、焼けてしまった人、
:一方で家はつぶれたけど半壊だとか、
:それは被災者の中でも被災者の数ほどの違いがある。
:でも、まず、一番しんどい人にどうするか、なんです。

黒津さんの頬が赤みをおびてきた。
井上吉郎さんが、当面はまず、309億円の政党助成の返還だね、といった。

障害者の実態把握は困難を極めている。
東京・中野区では、
まだ2割ほどの現状なのだそうだが、障害者と行政から委託された個人とがマンツーマンの関係で、
プライバシーをもちろん尊重しながら、障害者の状況を把握しているそうだ。

そんな人と人との直接的なヒューマンネットワークのシステムは、
こうした突発的な災害にも、たよりになる太い情報のパイプになるようにおもった。

 <つづく>

イメージ
鳥居も傾いていた(神戸市)


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