瓦礫の街で 6


95/02/08 23:25:55 瓦礫の街から<6>
 ボランティアですか?
 2、3日でようやく地域の地理がわかってきます。
 いま、足りないのは障害者の個別の細かいニーズの対応と
 新しいニーズのほりおこしです。
 そのためには「なにかすることはありますか?」ではなく、
 腰を据えて、自ら人を組織して、障害者のニーズを掘り起こせるような、
 そういうボランティアが求められているし、
 そういう人ならやることはいくらでもあります。

芦屋市は人口8万。
久米宏の番組で、高台のお屋敷町は無事であったことが放映されていたらしいが、
震度7の激震の阪急から阪神電車のあいだのベルト地帯では、いずれもつぶれている。
市財政や体制の規模が小さい分、崩れたビルや家々の撤去作業には時間がかかる感じだ。

JR沿いの住宅地の中に、
わが国では屈指の歴史を刻む知的障害者の入所施設・三田谷治療教育院がある。
明治の息吹を感じさせた歴史ある木造の本館は全壊。
造園業者に独自に依頼して、パワーショベルで解体、撤去作業の最中だった。

障害を持った若者たち27名は、別棟の新しい鉄筋の建物の2階に移動している。
絵を書いたり、話をしたり、テレビゲームをしたり。「なんか書いて」とねだる人もいた。

3階は地域の人たちの避難所になっている。
まわりの家々は全壊ないしは半壊している。

さきの言葉は、その新館前での3人いる施設長さんの一人の言。
 神戸市の状況がわからない。
 援助しようと思っても、状況がわからなすぎる
 問題は神戸です!

西宮市の通所施設の職員からも同じことを聞いた。
青年たちがあの日就寝していたが、たしかに崩れてはいない古い棟の中を見せてもらった。
部屋のなかはメチャクチャ。床はそり、壁にはかなりの亀裂が走っている。

瞬間、デンマークの人口5万人の街で見た知的障害者の入所施設の様子が浮かんだ。
もちろん全員個室。
暖かで落ちついた色彩の壁、それぞれの好みの家具。
専門家のチームによる充実した体制、、、

だから、この、いまの惨状の中でどうする、というのではない。
しかし、薄暗い集団の部屋、染みの付いた壁、、、
それ以上に、ここは、また住むにはかなりの修繕が必要だろう。
はたして、その予算は、、、
どんな優先順位で、いつ付けられるのだろうか。

世界一の経済大国といわれ、それも高級さを誇ったお屋敷の街の話である。
玄関に「和歌山市 生活用水」と書かれたポリタンク。
水と人手が確保できれば風呂はできる。薪には不自由しない(悲しいけれど)。
その薪を使ってドラムカンで湯を沸かし、ホームの小さな浴槽に運んで入浴する。
これまで3度は入浴できたそうだ。

河南事務局長の勤務する阪神養護学校の卒業生が多い施設である。
今度の休日には、組合や全障研のメンバーで、ブタ汁をつくりに、また来るという。

施設を出ると、崩れた家からトラックに荷物を満載して出ていく家族が見えた。


イメージ
  芦屋市にて


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