声明
障害者権利条約批准はゴールではなくスタートです



2013年12月4日  
全国障害者問題研究会常任全国委員会

 障害者権利条約は、11月19日衆議院本会議、12月4日参議院本会議で批准が承認され、締結することになりました。国連総会(2006年12月13日)の採択後、138カ国(EU含む、9月末現在)が批准しています。

 権利条約は、障害者がおかれた厳しい現状を認識し、特別な権利ではなく同年齢の市民と同等の権利として、「障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現すること」を約束しています。また、締約国の義務として、条約に違反する法律・制度や社会環境を改めることを定めています。

 日本政府は2007年に署名し、2009年3月には批准に動きましたが、「名ばかりの批准ではなく国内法の見直しを」「私たち抜きに私たちのことを決めないで」などの障害者団体の強い要請により、関連する国内法整備を待つことになりました。これには、障害の重い人ほど負担が重くなる「応益負担」を強いる障害者自立支援法を、日本国憲法に違反し、権利条約にも反するとした違憲訴訟の運動も大きく影響しました。

 2009年12月、「障がい者制度改革推進本部(本部長=内閣総理大臣)」が設置され、翌2010年1月7日、訴訟団との「基本合意」のもとに、障害者団体といっしょに本格的な制度改革議論がすすめられ、不十分さは残しながらも障害者基本法の改正、自立支援法に代わる総合支援法、障害者差別解消法などを制定させてきました。

 しかし一方で、権利条約の公定訳は、2009年当時のものとほとんど変わっていません。概念を具体化するキーワードとして改善意見が寄せられていた「インクルージョン」は「包容」に、「コミュニケーション」は「意思疎通」に、「アクセシビリティ」は「施設及びサービス等の利用の容易さ」に訳されるなど、課題は残されたままです。

 権利条約の到達点から見れば問題は山積していますが、批准された権利条約は、憲法と実定法の間に位置づき法的効力を持ちます。このことを運動のテコにしながら、現状を明らかにして、その改善にとりくみたいと思います。

 権利条約批准はゴールではなくスタートです。私たちがこの間の障害者運動でかちとった「基本合意」「骨格提言」、そしてこの「権利条約」を大きな力として、社会保障切り捨ての厳しい情勢の中で、多くの人びととしっかりと手を結んで、障害者の権利を守り、発達を保障していきましょう。
 


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