支援費制度問題・児童通園事業関連資料        全国障害者問題研究会

■障害受容にいたっていない場合の対応を市町村に通知
(6月19日厚生省懇談でわかったこと)

厚生労働省と障全協の懇談があり、厚生労働省障害福祉課からは居宅支援担当の田野係長、施設支援担当の小野係長が応対しました。

1)従来の障害児通園(デイサービス)事業実施市町村中、4月から支援費制度の児童デイサービスに移行した市町村について、その数や利用者負担金などの実態を把握しておられたら、教えてください。これからであれば、調査の予定を教えてください。
 →支援費制度で実施している事業所は556ヵ所。基準該当114ヵ所。前年度は530ヵ所余だったので増加した。
 詳細な調査は実施していない。どんな内容を調査したらよいか意見を聞かせてもらえれば検討したい。(たとえば、自治体によっては利用者負担金に違いがあることを伝えた)

2)3月の課長会議において、障害の受容ができていない場合などは「やむを得ない事由」として措置扱いとする旨、説明されていますが、具体的な利用手続きはどうなるのですか。支援費扱いにしないということで、全額市町村支弁となるのでしょうか。
 →6月6日付の「通知」で詳しく述べている
(PDFファイルで掲載)
一般の場合は「やむをえない措置」の後、よく月には申請するのが原則だが、児童デイサービスは保護者の障害受容を考慮して、この限りではないとした。

3)同じく「障害受容期の保護者への配慮」として、申請手続きの簡便化、利用契約の簡略化などについて、例などを示してぜひ市町村に徹底してください。
 →障害福祉課として例示するのはむずかしい。むしろ、関係団体で作成してほしい

4)地域によっては児童デイサービスは地域療育システムの中核に位置づいています。「親支援・子育て支援(相談)」「保育所巡回指導」「在宅児の訪問指導」などを支援費に組み込む方向でご検討ください。
 →いますぐにはできないが、具体的にどんな活動をやっているのか教えてほしい。

5)今後の児童デイサービス事業の改善を図るためにも、全国発達支援通園事業連絡協議会(全国発達支援4通園連絡協議会加盟団体で児童デイサービス事業者で構成される団体)との懇談の場を開いてください。
 →了解

○このほか、全体の懇談項目で「児童デイサービスとデイサービス事業との谷間になる年齢の問題」(児童デイサービスは「小学年齢」まで、一般のデイサービスは18歳からということで、中学、高校年齢の障害児はデイサービスの対象とならない)について意見交換しました。
→児童デイサービスは「幼児の療育」を目的とした事業。小学年齢までは延長できるが、それ以降はふさわしくない。児童デイサービスで対応するのがいいとは考えていない。放課後や夏休みの対応は国の制度ではないことは承知している。文科省の施策、放課後クラブなども含めて、何ができるのか考えたい。意見を聞かせてほしい。


 支援費制度が始まって2ヵ月半。困っていることや利用しづらい実態などを、市町村を通じて、あるいは直接、障害福祉課へ、ていねいにあげていくことが大事な活動だという感想をもちました。
 (文責・中村尚子@全障研)
障害乳幼児の地域療育

 近藤直子(日本福祉大学教授・全国発達支援通園事業連絡協議会会長)
 白石正久(大阪電気通信大学教授・全障研副委員長) 編

  定価1900円+税  2003年8月10日 発行  ISBN4-88134-131-6 C3036

 全国障害者問題研究会出版部 刊行


■乳幼児期の発達保障の要望を
 通園施設・事業の課題検討
(全障研しんぶん6月号より)

 4月14日、東京で全国発達支援4通園連絡協議会の会合が開かれ、通園施設の今後の課題や支援費制度開始にともなう問題点について討論しました。
 この会合は、知的障害児、肢体不自由児、難聴幼児の3通園施設の団体と通園事業連絡協議会で構成された同協議会が毎年1回開催しているもので、厚生労働省の施策説明を聞き、それぞれの施設が直面している課題を出し合う場となっています。

▼支援費制度開始
 厚生労働省の担当官は「無難なスタートを切った」と言いますが、児童デイサービスの事業は、すでに自治体での対応にバラツキが出ています。これまでの県の単費の補助金がなくなった(愛知)、申請時に児童相談所の「判定」を必須としている(京都)、障害の受容ができていないなど申請に至らないケースの「措置」の具体的な手続きが不明などで疑問が相次いでいます。制度についての最低限の「通知」を早急に出すよう担当部局に求めていく必要があります。

▼制度改善が求められる肢体不自由児通園
 肢体不自由児施設は3歳以下の低年齢児の入園増と障害の重度・重複化がいっそう進行しています。しかし1965年に入所施設の通園部門として出発したときの措置費体系が改善されていないため、子ども一人あたりの措置費は知的障害児通園施設と比較して3分の1程度に抑えられています。施設運営上の不足分は医療保険(診療報酬)で補うことが建前とされています。
 そうした現状に加えて昨年4月の医療保険の改定で、リハビリの点数が切り下げられました。これによって全国の肢体不自由児通園施設は平均20%の減収に追い込まれています。また十分な医師やリハスタッフを配置しリハビリを実施しても、入院設備のない通園施設の保険点数は入院のある病院に比べて70点も低く抑えられています。
 肢体不自由児通園施設連絡協議会は、措置費の改善とともに、一般の医療費とは別立ての「発達障害児(者)医療体系」の実現を求めています。

▼総合的な施設体系の検討を
 児童の通園施設は支援費制度に移行しませんでした。乳幼児期の障害児の福祉に選択や契約になじまないというのがその理由です。
 この4月から障害者(児)施設全体のあり方を検討する委員会が厚生労働省のもとではじまりましたが、通園施設のあり方も話し合われることになっています。そのさい、「支援費制度への移行」も俎上にあがると言われています。
 支援費に移行した場合、たいへんな条件の低下につながること、現状の知的障害児通園の4対1の職員配置さえきびしいのに、これを低下させることになってはいけないという意見が相次ぎました。
 地域療育等支援事業が一般財源化されたこととも、各地の地域療育の水準を左右する出来事でした。実績あるコーディネータや外来療育の事業を、財政的根拠をもって継続していくための制度の見直しが求められています。
  (全国事務局 中村尚子)


■支援費制度開始まで1か月 課題山積の児童デイサービス

 支援費制度スタートまであと1ヵ月。厚労省の方針が二転三転するなか、市町村では申請、聞き取り、支給決定など制度全般にわたって準備の遅れが指摘されています。支援費単価の低さから居宅生活支援の事業者の指定も予定をはるかに下回っており、基盤整備の遅れが支給抑制を招くのではないかと心配されています。

▼小規模通園の単価改善
 この間、全障研は、特に障害児通園事業(児童デイサービス)の支援費制度移行の伴う諸問題の改善に関する要望をまとめ厚労省と懇談を重ねてきましたが、1月28日の支援費制度担当課長会議において次のようなことが明らかになりました。

○支援費単価 1日の平均利用児数により3ランクになります。これは小規模事業にとって運営がしやすくなりました。しかし21人以上の比較的大規模の通園事業は昨年9月の単価より1000円も低額に。単価の改善は今後の大きな課題です。
 10人以下 5390円
 11人以上20人以下 3710円
 21人以上 2840円

○保育所との併行通園児の利用は可能になりました。しかし保育料と利用料の二重払いが原則です。

○送迎加算は片道550円。「居宅とデイサービス事業所」の間の送迎ですので、学齢児の学校からの送迎は認められていません。
 同日出された『Q&A集』は次のような記述もあります。
Q81 児童デイサービスについて「ことばの教室」ということで現在障害児通園(デイサービス)事業を実施しているが、このような特色をもって事業者指定を受けることは可能か
A 指定基準を満たす必要があるが、特色として運営規定に記載することは差し支えない。

▼学童の利用や相談活動
 1月30日、障全協主催の来年度予算説明会の席上、児童デイサービスについての質問に対して支援費準備室から次のような回答がありました。
 まず児童デイサービス事業が学齢児の放課後保障活動として活用できるかという点です。28日の課長会議でも討論され全国的に質問が多い事柄のようです。回答は「学齢児のみの児童デイサービスは開設できない」というものでした。しかし学齢児も受け入れるという「特色をもった事業」(Q&A81参照)はできるので、すでにこうした運営をしている通園事業は継続できます。
 さらに現在実施している巡回指導や相談活動が十分に継続できるように支援費や加算の対象にしてほしいという要望を伝えました。これに対して、「現在行われていること一つひとつに対して『これはいい、これはダメ』という判断を出す予定はない」という従来の回答が繰り返されましたが、保護者に対する個別相談は「介護者へのサービス」という考え方が示されました。
 このほか制度説明や申請において、乳幼児期(障害受容期)にふさわしい保護者への対応をするように自治体に対してていねいに指導し、「Q&A」などで適切に回答してほしいと重ねて要望しました。

▼さらなる改善を
 課長会議から1ヵ月、自治体の予算編成も大詰めを迎え、保護者に対する説明をする段階で、支援費制度を乳幼児期施策として導入することの問題点が具体的に明らかにされつつあります。たとえば「1回の利用料1000円」が提示された亀岡市では、現在の利用児の申請控え現象が起きています。
 児童デイサービスの利用料は表のとおりです。保育園に通っていて、通園で週1〜2回の午前中療育を受ける子どもの場合、上限月額に至らず、保育料とともにたいへんな負担を強いられることになります(例D5階層で4000〜8000円)。成人のデイサービスのような半日利用や利用料の補助などの施策が早急に求められます。
 このほか、顕著な障害がない場合の「申請」については躊躇する、園としても対応が難しいといった声も届いています。
 これからも具体的な声を厚労省に届け、改善を求めていくことが必要です。
   (全障研しんぶん3月号より)

おすすめ  障害者問題研究  第30巻第4号(通巻112号)
特集 支援費制度と障害者の生活  2003年2月25日発行  ISBN4-88134-104-9 C3036  定価2000円+税

■速報  1.30厚労省と障全協懇談会


1月30日(木)午前、障全協主催で、厚労省障害者関連予算案説明と懇談の会合がありました。児童デイサービスについても「質問と要望」をし、得られた回答などを簡単にお知らせします。この部分での対応は支援費準備室の菊池係長でした。
(文責 中村尚子@全国障害者問題研究会)

1)「学齢児」だけの児童デイサービスの開設は可能か
 答→対象を学齢児に限定することはできない。
 28日の課長会議の分科会でも討論された。学齢児も受け入れるという「特色をもった事業」(Q&A81参照)はできるし、結果として学齢児が多数利用することになったということはありうる。

2)現在実施している巡回指導や相談活動が十分に継続できるように支援費や加算の対象にしてほしい
 答→現在行われていること一つひとつに対して「これはいい、これはダメ」という判断を出す予定はない。考え方として、デイサービスは通園(通所)してくることが基本なので「出張的なサービス」は対象とならない。本人ないし介護者へのサービスという観点からすると相談は介護者へのサービスと考えられる。何人かを集めた親向けの研修会のような場合はこれにあたらない。

3)午前、午後を分けて療育をしている通園事業の定員算定の仕方
* 1月28日の課長会議資料p.178「児童デイサービスにおける障害児の数の平均の算出方法について」参照
 答→前年度の利用者延べ数を開所日数で割った数。
 (したがって、たとえば毎日の療育で午前中15人、午後6人という変動のある実践展開をしていて、最大「15人の標準タイプ」であっても、計算した結果が21人となれば「大規模タイプ」になります。単価に関わるので注意しましょう―中村)

4)現行通知「障害児通園(デイサービス)事業について」に代わるものは出されるのか
 答→支援費全体として28日の「課長会議資料」に示したものが「告示」として出され、さらに「基準解説」を出す予定だが、これに盛り込みきれない内容は年度内に「通知」する。

 このほか制度説明や申請において、乳幼児期(障害受容期)にふさわしい保護者への対応をするように自治体へのていねいな指導をお願いしたい、9月の支援費単価では運営できないので周辺の自治体と相談して子どもの数が増えるようなしくみを考えていた矢先に、規模別の単価となり再考を迫られている、「1回の利用料1000円」が提示され現在の利用児の申請控え現象が起きているといった相談があったことをあげて、支援費移行にあたって全国の児童デイサービスの実態を調査し、実際の改善策を講じ、あるいは次回の「Q&A」などで適切にご回答してほしいと要望しました。

◎ 課長会議の模様を詳細に伝えた大阪障害者センターの「壁ニュース」から
・ 保育所に通っている児童は併給を可能にした(資料p.128, p.158参照)
・ 児童デイサービスを午前1時間、午後1時間の2回利用した場合でも1日として計算する。
・ 送迎片道560円が550円に。

支援費制度施行後の障害者(児)に対する相談支援体制について(PDFファイル)

利用者負担基準(PDFファイル)

支援費制度担当課長会議資料(全資料) 1.28 (WAMNET)


■大臣に一般財源化で見直し求める!

                                         2003年1月15日
 厚生労働大臣
 坂口 力 殿

                      全国障害者問題研究会障害乳幼児問題懇談会

障害児保育事業費と障害児(者)地域療育等支援事業費の
一般財源化の見直しを求めます

 私たちは、全国各地において、障害乳幼児の発達保障と地域生活支援のために障害乳幼児の療育に関する研究・実践を進めてきました。
 このたび2003年度予算政府案において、障害児保育事業と障害児(者)地域療育等支援事業にかかる予算が「地方交付税措置」となることが明らかになりました。
 障害児保育事業予算の地方交付税化に関して厚生労働省は、「障害児保育は全国的に広がったので、地方の仕事としてやっていただく」という考えを示しておられます。
 実態はどうでしょうか。私たちは1990年と2000年の2度にわたって障害乳幼児施策に関する全国実態調査を実施しました。その10年間に人口30万人以上の自治体では障害児保育の制度ができ、人口規模がそれ以下の自治体では制度がない場合も保育士が加配されるなど、たしかに障害児保育の着実な広がりが確かめられました。しかし、さらに実態を調べると、人口規模に関わりなくどの自治体においても、現在の国の障害児保育事業の補助額(特別児童扶養手当対象児一人当たり75,640円)では十分な加配保育士が充てられないことが指摘されています。
 厚生省時代を含めて貴省が実施した調査によれば、国の補助金を受けて障害児保育事業を実施している市町村は保育所のある市町村の5割程度であり、実施保育所は全保育所の3割にも達していません。同時に独自に職員の上乗せ補助や事業費加算を行っている市町村も全体でみると3割ほどとなるのですが、県内の9割を超える市町村で上乗せをしている滋賀県から1%程度の長崎県までという大きな格差があるというのが実態です。障害児保育は、国の事業開始から二十余年を経てもなお、すべての自治体で実施されるに至っておらず、国の事業費では不十分ななか、市町村の格差がたいへん大きいのです。このまま地方交付税化するならば、自治体独自の予算を切り下げるところもでてきて、ますます格差が広がるでしょう。
 また現行の障害児保育事業は特別児童扶養手当対象児を対象としているために、障害程度の比較的軽い子どもは補助の対象となりません。したがって、今般保育所での対応が求められるADHDや軽度の障害をもつ子どもへの特別な保育がこの事業ではできないという問題もかかえています。対象児の拡大や子どもの保育時間に対応した補助額の増額など、事業内容を充実させることこそ急務なのです。
 障害者(児)地域療育等支援事業予算の地方交付税化については、4月からはじまる支援費制度の実施に不可欠の相談支援機能を円滑にすすめるためだと聞いています。
 そもそも地域療育等支援事業は、「障害者プラン」の中で「人口30万人に2ヵ所」という目標が掲げられて開始された事業で、現状では達成度の低いものです。全国690ヵ所設置の目標に対し平成13年度末における実施は390ヵ所であり、このうち児童施設を中心に展開している事業は約3分の1にとどまっています。都道府県によっては児童を対象とした地域療育等支援事業が1〜2ヵ所のところもあり、地方自治体の自主性に任せる段階には達していません。
 しかし地域療育等支援事業によって、障害児が入所している保育所への巡回指導、訪問指導、療育圏域における療育支援のコーディネートなど、関係者の努力で創造的な実践が積み上げられ、これからの展開がおおいに期待されていました。このたびの地方交付税化によって、これまでと同様の財源が確保されるという保障がないことが危惧されており、せっかく地域療育の発展の芽をつんでしまうことになりかねません。また、年度初めまで間のないこの時期にいきなり地方交付税化することは、まったくの暴挙であるといわざるを得ません。
 障害児保育事業、地域療育等支援事業はともにきわめて公共性の高い事業であり、自治体間において住民の権利に格差が生じないよう国が十分な財政保障をすることこそがいま求められています。「地方分権」を理由にこれらの事業を地方交付税化することは、現在の事業内容の縮小と自治体間の格差拡大を促進することになるでしょう。両事業の地方交付税化の見直しを強く求めます。


■熊本県障害児通園(デイサービス)事業連絡会が
国と熊本県に要望書提出 12.6 

■児童デイサービス、保育所との併行通園は可能ー厚生労働省

 「全障研しんぶん」11月号3面の記事「保育所に通いながら通園事業を利用することはできない」について、11月18日の障全協交渉の席上、厚労省担当者から「これまでどおりの利用は可能」という回答を得ました。現在多くの園で行われている併行通園を継続するというのがその趣旨です。
 また9月に発表された単価案では通園児の少ない小規模の通園事業は実質減額になり支障があることを認め、年末までに単価見直しを検討することを約束しました。多様な事業が継続できるよう、今後も厚労省に要求を届けましょう。(11.18 全国事務局)


■支援費開始まで半年
 いままでつくりあげてきたものを後退させてはならない
 通園事業問題で厚生労働省と3度目の懇談

 (「全障研しんぶん」2002-11月号)

 乳幼児期にある障害児と保護者の利用しやすい制度に― 9月30日に行われた厚生労働省との懇談には、全国から切実な声が寄せられました。
 この日の懇談は、障全協と全国発達支援通園事業全国連絡協議会が準備したもので、宮城、栃木、東京、山梨、滋賀、京都、宮崎、鹿児島から10名の障害児通園(デイサービス)事業関係者が参加しました。

◎乳幼児にふさわしい制度に
 9月12日、「支援費制度担当課長会議資料」が公表され、申請、決定、単価、利用料など、支援費の骨格となる部分が明らかになりました。これによって、各自治体、事業者が「導入後」、利用者との間にどんなやりとりをするのか、具体的な像を描くことができるようになりました。
 たとえば申請手続きなどの段階でこれまでとは異なる配慮が必要です。延岡市では市役所の担当者と一緒に模擬申請を行いました。しかし厚労省から参考として示された「申請書」は身体障害者、知的障害者、児童共通のもので、制度名称も専門的なことばがならびます。これでは保護者にとって最初の段階で負担を感じるものとなるでしょう。
 厚労省は書類の様式や窓口でたずねることがらを自治体ごとに工夫したものに変更したり、申請にあたって保健師などが同行してもよいと回答しました。
 自治体には準備室が「例」としてしめす書式や手続きがそのままおろされる傾向が強いので、こうした自治体の裁量で使いやすく変更できることをもっと広報してほしいと訴えました。

◎少ない予算
 来年度予算概算要求の児童デイサービスは支援費にもとづいて算定されました。
 国予算は、対象児9712人分、30億4800万円。この額は、子どもが毎日通園することを前提に、現行の補助金と大きな差がないように算出したといいます。しかし、想定されている児童数そのものがたいへん少ないこと、支援費制度開始とともに、自治体単独事業から移行する施設などを全く考えていないことなど、制度充実などは念頭にない予算だと言えます。
 また示された支援費単価3810円(4時間以上の場合)、1910円(4時間未満の場合)では、特に利用児の少ない小規模の通園事業でこれまでの補助金より大幅に減額され、事業の存続が危うくなることを認識してほしいと強く訴えました。

◎通園事業は多機能
 これまで2回の懇談でも、通園事業が地域の子育てに果たしている多面的な機能が厚労省の考えるデイサービスには含まれていないことを強調してきました。施設から遠いために、あるいは重度の障害のために通園できない子どものための訪問療育や保育所への巡回指導、さらにはこの時期になくてはならない親指導・家族支援など、各地の通園事業が地域の要求にもとづいて工夫しながらきずいてきた内容に対して、財政的な保障をするよう求めました。
    (文責 中村尚子)

<追記>

 その後、各園が自治体と話し合う中で、「保育所に通いながら通園事業を利用することはできない」ことが明らかになりました。9月12日付の「担当課長会議資料」に「児童福祉施設に通所することとなっている時間は児童デイサービス支援費は算定しない」という規定によるものです。これは全国の通園事業実践にまったくそわないものです。厚労省に対して早急に改善を求める必要があります。
写真
交渉後の反省会で

■このままでは不安、支援費制度
 通園事業問題で厚生労働省と2度目の懇談

 (「全障研しんぶん」2002-9月号)

 8月6日、支援費制度準備に関する障全協・障害者センターと厚労省との懇談において、障害児通園(デイサービス)事業に焦点をしぼって話し合いを行いました。4月に続いて2回目の懇談には、鹿児島、宮崎、京都、東京の保護者、施設関係者7名が出席しました。
 支援費制度の開始まで半年余、10月からは申請受付が開始されます。しかし、肝心の支援費単価をはじめ制度の詳細はいまだに決まっていません。障全協と障害者センターが実施した市町村アンケートによれば、半数以上の自治体が準備への不安を訴えています。
 支援費の中でも通園事業にかかわる部分はとりわけ準備が遅れています。障害が明らかな人、しかも「選択」という制度の趣旨からして自分の意見を表明できる大人を頭において詳細が作られようとしているために、これまで厚労省から発表された『Q&A』や『説明資料』の中に、乳幼児期の障害児や障害とは診断できない子どもたちを対象としている通園事業に関係する記述そのものが少ないという状況です。

市町村の窓口への不安
 大人とちがって唯一配慮されている点は障害者手帳がなくても申請できるという点です。しかも認められれば0歳から福祉サービスを利用できます。こうしたことを市町村の担当者に徹底することが制度開始までの課題です。鹿児島から参加した深瀬さん(保護者)は「障害や子育てについてわかる人が窓口に配置されるのか」を問いましたが、県の相談機関や児童相談所などにつなぐ方向だとの答えでした。

「申請」にいたらない利用者

 宮崎から参加した保護者、角田さんは毎日通園や園での親指導で親も成長する。ニーズにこたえて多様に展開している通園事業の内容が引き続き守られるのかを問いました。これに対して厚労省は、「原則として現在行われているサービスがなくなることはない」と回答。しかし個々のサービスの単価がどうなるのか、職員配置など実施形態がはどうなるのか、といった疑問が残りました。
 同じく宮崎の神田さんはまだ障害が確定しない子どもの療育について質問。厚労省は「原則は申請。しかし措置制度の利用など方法を検討したい」と述べました。
 このほか、利用児数の基準や保育所との並行通園利用児の問題など、通園事業の内容について広範にわたって懇談することができました。厚労省は関係者の意見を聞いて、秋に出す予定の『Q&A』に反映させることを約束しました。
  (全国事務局 中村尚子)

懇談の様子

障害児の通園事業を理解して
  
支援費制度で厚労省へ (「全障研しんぶん」2002-6月号掲載)

 障害児の通園事業が来年度からはじまる支援費制度の対象となる問題で、4月8日、関係者が厚労省の担当者と1時間ほど話し合いました。支援費についてこれまで障全協、きょうされんが交渉を重ねてきましたが、通園事業の問題での話し合いは初めて。
 この日は、鹿児島、宮崎、京都から通園事業職員と親8名が参加、厚労省からは支援費制度施行準備室の菊池芳久係長が対応し、吉本哲夫障全協会長が進行役を務めました。なお、全障研から薗部事務局長と中村事務局次長が参加しました。

▼「デイサービスはスポットサービス」(担当係長)

 はじめに菊池係長が、措置制度から利用者主体の契約にもとづく支援費制度に移行する趣旨を説明。「施設」と「居宅」の二つの柱の福祉サービスのうち、通園事業は後者のサービス(デイサービス)。デイサービスはそのときどきの必要に応じて臨機応変に提供されるという性格、すなわち「スポットサービス」である。通園事業はこうしたデイサービスに位置付くものだから、支援費制度が適用されることになったとのことでした。

▼乳幼児期と支援費の矛盾

 参加者は、それまでに公表された資料にもとづいて、それぞれの立場から問題点を述べました。
 まず、菊池係長の述べた「スポットサービス」という見方について、通園事業が認可の通園施設と同様、就学前まで継続した療育の場であり、この制度が始まったときの趣旨にもあるように、通園施設が未整備の地域において障害乳幼児の発達保障に大きな役割を果たしていることを強調しました。
 制度運営上の問題のひとつは、申請書の提出が制度利用のスタートとなるので、「障害の疑い」や軽度の障害で通園事業の扉をたたいた親御さんに、この手続きはなじまないということです。障害の診断がなくても、ことばの遅れや発達上のつまずきなど心配があれば利用できるのがこの制度の良さでもあります。「親が子どもの障害を認めるにはとても長い時間が必要。申請や障害認定を優先するこの制度は利用にしくい」「支援費支給決定まで手間がかかったりするのでは、明日からでも療育をと思っている親の気持ちに添うサービスとはならない」という意見が出されました。
 さらに利用料の負担がますます利用に壁をつくり、早期療育につながらないという指摘、利用実績に応じた施設への支払いが原則なので、病気などで休む子どもが多い冬場などは施設の運営に支障があるという問題など、切実な訴えがありました。
 こうした問題点に対して、菊池係長はできるだけ現行の利用との差異がない制度になるよう、今後も意見を聞いていきたいと述べました。
                   ・
 新制度の準備にあたって、乳幼児期の障害児と親の実態や通園事業の日々の実践が厚生労働省にはほとんど理解されていません。障全協を窓口としながら、今後も話し合いを継続して行うことを確認して終了しました。
 (全国事務局 中村尚子)

写真
厚生労働省前にて(2002.4.8)

意見書
                                       2001年11月9日
 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 御中

                     全国障害者問題研究会 障害乳幼児問題懇談会

児童デイサービス事業を支援費支給制度の対象とすることに関する意見書

 8月23日に開催された、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「支援費制度担当課長会議」において発表された「資料」によれば、2003年4月から導入される「支援費制度」の対象となるサービスの中に、「児童デイサービス事業」があげられています。障害乳幼児への療育サービスのあり方を研究し、実践の交流している私たちは、これに伴って支援費制度のもとに移行することが予定されている障害児通園(デイサービス)事業の重要性にかんがみ、児童デイサービス事業は支援費制度の対象にすべきではないと考えます。その理由は以下の3点です。

1)児童福祉法にもとづく障害児関係三通園施設は、今回の支援費制度導入の対象となっていません。その理由は、乳幼児期が障害の診断や障害の受容にとってむずかしさを抱える時期であることにあると聞いています。同じく障害の受容期にある親子が利用するデイサービス事業においても、同様に考えるべきではないでしょうか。児童デイサービス事業をこのたびの支援費制度導入から除外し、制度の改定が必要な場合は、三通園施設と足並みをそろえてこの時期にふさわしい新制度に移行すべきだと考えます。

2)現在、障害児通園(デイサービス)事業は、地域によってさまざまな役割を果たしています。保育所・幼稚園入園前の早期からの療育の場としてのみならず、偏食や睡眠障害など「育てにくさ」の目立つ子どもたちも受け入れて、人間関係の形成や生活習慣の改善、親子関係の指導などにも、その機能を発揮しているのです。子どもの障害の中には、たとえば広汎性発達障害のように、3歳を過ぎて診断がつくものも多いのですが、こうした診断のつく子どもは上記のような「育てにくさ」が目立つこともあり、被虐待児となりやすいという側面ももっています。しかし、「診断」がつく前でもあり、また表面上、障害とは理解されにくい特性のためにに、父母が「障害」受容する上で特別な困難を有しています。支援サービスを利用すれば子どもの状態が改善されることがわかっていても、「認定」にもとづく利用申請が前提となれば、こうした子どものデイサービス利用は控えられてしまうことでしょう。乳幼児期の支援サービスは「認定」や「申請」を必要としない現在のシステムの特性を生かし、支援費制度の対象からは除外すべきだと考えます。

3)現在の障害児通園(デイサービス)事業は、障害の受容期ということをふまえて、概ね無料になっています。支援費制度導入に伴い利用料負担が生じると、支援サービスの利用を控える場合が予測されます。障害児の一生を考えれば、父母の障害受容を援助し、発達を保障するデイサービス事業の利用を追求すべきだと考えます。

 現行の障害児通園(デイサービス)事業では、保育士以外の専門職員(訓練士等)の雇用が困難です。サービス水準の向上のためには、障害児(者)地域療育等支援事業の充実とともに、障害児通園(デイサービス)事業への補助単価の引き上げこそが急務と考えます。


<資料>
■支援費制度担当課長会議資料など(厚生労働省)
■支援費制度担当課長会議資料・最新(WAMNET・社会福祉医療事業団)
<各地のとりくみ>
■日本障害者センター・障全協
 重点要望書
 支援費制度施行準備に関する全国市町村アンケート調査(概要) 2002.10.1
 同集計(PDF版)

■京都 多様で豊かなサービスを提供する支援費制度を実現する懇談会
         (京障連・きょうされん京都支部・全障研京都支部・福祉保育労京都地本)

  ・京都府市町村調査 記者会見資料 2002.7.10
  ・調査用紙

■京都 京都障害児者の生活と権利を守る連絡会(京障連)
 ・児童デイサービス事業を支援費制度の対象にすることに関する第1次要望書2002年4月22日
 ・児童デイサービス事業を支援費制度の対象にすることに関する第2次要望書2002年5月15日


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