「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)




精神障害


●身体障害と比較してみると…
 精神障害の特徴点はなにか。まず最初に「身体障害」と比較して見てみたいと思います。
障害の再発
 たとえば精神分裂病の場合、薬物維持療法を怠ったり、過剰なストレスを受けることによって再発することがあります。
疾患と障害の共存
 身体障害のように、疾患が終了して障害に移行するのではなく、相互に関わり、共存しています。
障害の度合の変動
 精神障害は、主観的心理や環境条件の変化により、それまでできていたことができなくなってしまうなど度合が変動します。
一つの動作の障害ではない
 たとえば、身体障害の人の自立を考える場合、食事や排泄のときに介助が必要かどうかがポイントになりますが、精神障害の人の場合には、自分で排泄できるけれどもトイレでできないなど、生活全体で考えなければいけません。

●求めている支援の9割は医療以外
 精神障害をもつ人が地域で生活するためには「仕事、仲間、住居、医療」が必要です。しかし、ある病院で精神分裂病と診断されて通院中の人に調査したところ、仕事に就いていない人が8割、友だちがいない人が3割という結果でした。
 これまで日本では、措置入院をはじめとして、精神障害者は医療の対象としてあつかわれてきました。しかし現在では精神障害をもって生活している人が求めている支援の9割は医療以外のものであるとも言われています。
 精神疾患では疾病と障害が共存していますので、疾病としての症状にのみ目を奪われていては適切な対応ができません。仮に症状があるとしても、それが地域での生活を妨げるものでないかぎり、できるだけ入院はさけるようにするべきです。精神疾患を入院したまま「治療する」ような事態は減らしていかなくてはいけません。

●地域での生活を広げるために
 全国各地に精神障害者のための作業所があります。作業所は、働く場というだけにとどまらず、昼夜逆転など生活の乱れを防ぎ、再発予防にも役立っています。さらに、仲間が得られる、他人とのコミュニケーションの場になるなど、多様な機能を発揮しています。
 病院から退院して地域で生活するためには、住居のケアも欠かせません。グループホームのような取り組みの広がりが求められています。
 くりかえしになりますが、精神障害の人の生活は医療だけでは支えられません。精神医療には、適切に地域生活を支援できる体制や薬物療法の向上などが求められています。
       

葉

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