「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)




心因性疾患


●心因性疾患と心身症
 人間は、自分自身の成長やさまざまな環境の中での心のありようの変化が少々大きくとも、それに対処していく力をもっています。しかし、あまりにも急激な環境の変化や著しい精神的ショックを体験したり、慢性的に不都合な状況にさらされた場合などには、対処していく力がおよばず、不安、焦燥、抑うつ、無気力、とじこもりといったような精神的症状を呈することがあります。このような症状が一時的にも出現すれば心因性の症状と呼ぶことができます。
 症状が出現しても、たいていは時間とともに軽減消失してしまうのですが、症状が長く続き、本人やまわりの人も悩んでしまうような場合には、心因性の疾患として治療を要することになります。
 精神的な症状を主とした心因性疾患に対して、身体的な症状を主としたものを心身症といいます。アトピー性皮膚炎、ぜんそくなどは身体的な疾患ですが、心因性に症状が軽くなったり重くなったりします。心身症と心因性疾患は重複している場合もあり、チック、拒食症、過換気症候群などは、両方の疾患で扱われることがあります。

●子ども、思春期、障害のある人…

 子どもの心因性疾患の治療は、病院の精神科、小児科、心療内科などで行ないます。「思春期外来」のような特別な窓口を設けているところもあります。病院だけでなく、児童相談所や市町村の教育委員会が設置する相談施設、大学の専門学部の心理相談室などでも対応しています。
 子どもの場合には、不安や欲求不満にさらされたとき、行動や身体症状が現れることがあります。かんしゃくをおこしやすくなったり、おちつきがなくなったり、乱暴になったりします。頭痛や腹痛、過呼吸発作、下痢や便秘などの症状がでることもあります。
 体も心も子どもからおとなへ移行する思春期の心因性疾患は、反抗や非行、逸脱行為、衝動行為といった極端な行動をとりやすいのが特徴です。思春期・青年期には強迫神経症、摂食障害、過換気症候群などが好発しますが、やはりこの時期に多い精神分裂病の始まりとまぎらわしいことがあり、注意が必要です。
 知的障害がある人の場合、心の内面をうまく表現できないために、問題行動やパニックになってしまうこともあります。彼らからのサインや働きかけに目を向け、心の内面を思いはかって、負担になっているもの、ストレスになっているものをとりのぞくことが必要です。とりわけ自閉性障害の人は、なんでもない音や刺激がパニックにつながることがありますので、注意が必要です。

 
      

葉

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