ホーム>よびかけ人からのメッセージ(秋元、楠、宮尾、花田)
■秋元波留夫さん
障害者・患者九条の会の門出(かどで)に寄せる
みなさんの主唱で設立の準備が進められていた「障害者・患者九条の会」が今日設立の集いもち、門出(かどで)のときを迎えたことを呼びかけ人のひとりとして喜びたいと思います。
皆さんもよくご承知のように、最近の国際情勢、とくにアジアの安全保障に関連して、世界の保安官を誇るアメリカのブッシュ政権は、同志連合の一翼として自衛隊を正規の軍隊とするための憲法九条の手直しを求め、それに呼応して、政府と国会では、新憲法制定の名のもとに、九条を中心とした憲法改変の作業が急ピッチで進められています。しかし、戦争が障害のある人たち、病む人たちの最悪の敵(かたき)であることはいうまでもありません。15年戦争では障害のある人たち、病める人たちは、役立たずの「穀潰し」として飢え死にさせられました。わが国を軍隊をもたず、戦争をしない国にする根拠となっている憲法9条は障害のある人たち、病む人たちの生きる権利の保障でもあります。
明日、11日、投票が行われる今回の衆議院選挙では、小泉政権の郵政民営化が争点とされていますが、とんでもない話です。改憲問題隠しのまやかしです。明日の選挙結果が注目されますが、おそらく選挙で勝った党と政権によって憲法9条はないがしろにされるでしょう。「障害者・患者九条の会」がこのような重要な時期に結成をみたのはまことに意義のあることだと思います。
今日の集いが跳躍台となって、この会の運動が全国にひろがり、憲法改変の策動を打ち破り、この日本を人類共通の悲願であり、理想である憲法9条を持つことを誇りとし、これを世界にひろめる国にしたいものです。
■楠 敏雄さん
先日、アメリカを襲ったハリケーンによって何千名の人々が尊い生命を奪われ、何十万名もの貧しい人々が家をなくしました。また、日本でも台風14号や豪雨で数十名の命が一瞬のうちに奪われてしまいました。もちろんこれらは防ぎようのない自然災害のように思われるかもしれませんが、しかし、こうした災害の半分以上は、事前の防災対策によって防ぐことができたのではと思えてなりません。ブッシュ政権下のアメリカでは、「テロ対策」に40兆円を費やしているにもかかわらず、防災のための予算はその100分の1しか組まれていないとのことです。わたしも「無差別テロ」を支持するつもりはありませんが、もしブッシュ大統領がイスラム諸国との共存のための外交努力をしていれば、こんな「人殺し」のための予算を費やさずに事前の防災対策ができたはずです。
そして、わが国の小泉政権はそんなブッシュの政策に無条件に追随し、「平和よりも武器」の道を突き進もうとしているのです。わたしは、今の憲法を金科玉条のように振りかざすつもりはありません。いくつかの点で現状とのあいだに齟齬を生じていることも認めざるをえません。しかし、いま、改憲を主張している大多数の人々のターゲットは、言うまでもなく戦争の放棄をうたった第9条と基本的人権の確立を明記した第14条に他なりません。わたしはこのふたつの条項こそ、どんなことがあっても死守しなければならないものだと確信しています。もし、現状とのあいだに矛盾があるというなら、時間をかけてでも現状を変えていけばいいのです。たとえ、どんな人たちから「理想主義者」と笑われようとも、わたしはこの立場を変えるつもりはありません。日本は、これ以上ブッシュの「人殺し」政策に手を貸すべきではありません。障害者に対するサービス提供のための財源がないというのなら、「鉄砲遊び」で一日何百万円も費やしている自衛隊の演習を見直せばいいのです。
政権を奪取することはもちろん重要ですが、ここで妥協に妥協を重ねることは、わたしたち障害者や民衆をいっそう危険な道へと追いやることになりかねないのです。いまこそ憲法改悪の動きに断固反対し、広範な人々の力を結集して、真に平和な日本、平和な世界をつくりだすためにともに闘いましょう。
■宮尾 修さん
本日は私の所属するNPO団体の主催行事が先に予定されていたため、この集会に参加することができず申し訳ありません。
私は昭和8年に生まれると同時に四肢マヒの障害者になり、日本がアメリカとの戦争に突入したときは10歳でした。私が住んでいたのは足立区という東京の下町で、昭和19年からB29による空襲が始まりましたが、そのときの恐ろしかった記憶はそれから60年経った現在でも、まだありありと思い出すことができます。
戦争はすべての営みを破壊し、愛も幸福も奪い去るものですが、特に力の弱い存在ほど踏みにじられます。私たちは平和を脅かすようなあらゆる企てに反対し、この社会を危険な方向に導くような動きは全力で食い止めなければなりません。
私はこの9条の会がそのための砦となるよう自分が先ず努める覚悟ですが、同時に日本中の障害者が呼びかけに応えて結集されることを訴えたいと思います。
■花田春兆さん
憲法。60年の節目とあって戦後の総括と超克を名目にした改憲運動はいよいよ勢いを得て、妥協を許さない決着を迫ろうとしている。賛か否か二者択一の二極化、と言っても国会の情勢などは、すでに一極化の様相を呈している。
改憲賛成派は私の周りにもいる。アメリカのお仕着を脱がなければ、独立は完成しないとおっしゃる。しかしその第9条を一番脱がせたいのが、当のアメリカなのだから何とも皮肉だ。
防衛に限定するというのだが、どこの国だって防衛・国防であり、攻撃・侵略をどこが名乗っているだろうか。
−−武力による紛争解決法、戦争。それは障害者にとって物理的・心理的に極限状態をもたらす。そして戦争こそ障害者を大量発生させる最大の要因なのだ。障害を負うことの不便・不利益を実体験している当事者だからこそ、声高に主張して行かねばならない−−
この原則・理念に変りのあろうはずはない。だが十年一日の原則論だけでは、NHK調査が誇示しているような内閣支持率に民主党も加えた圧倒的な世論とやらに太刀打ちは難しい。それをこちらに振り向かせるには、相応のアクションに結びつく現実的な対応が必要になるのだが。
しかし、自由を奪われ、自分のやりたいことがやれなくなる、いまある生活が全部なくなり、奪われてしまうのが戦争です。敵と刃を交える最前線だけの問題ではありません。すべての人みんなの問題です。私も「障害者・患者9条の会」のよびかけ人の一人として、力を尽くします。