「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)



呼吸


●呼吸のしくみ
 人の身体を構成する細胞が活動するためには酸素が必要です。細胞が活動すると老廃物として二酸化炭素が産生されます。絶え間なく大気を吸い込み、吐き出して、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するのが呼吸です。
 鼻からとりこまれた大気は、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支を通って、肺に至ります。酸素と二酸化炭素のガス交換は肺で行なわれます。体内に酸素が不足しても、二酸化炭素が過剰に貯まっても、細胞の正常な働きは妨げられます。
 肺や心臓などの呼吸器の機能調節は、他の内臓と同様に、すべて自律神経から出る信号の指令によって、私たちの意思と関わりなく自動操縦されています。
 次のような呼吸状態のときには呼吸障害の可能性があります。
・呼吸数が普段より非常に多くなる。あるいは睡眠中一〇秒以上の無呼吸が頻繁にあらわれる。
・安静時のおちついた腹式呼吸でなく、効率の悪い胸式呼吸(陥没呼吸)、鼻翼呼吸、下顎呼吸などを続けている。
・狭くなった気道を空気が通るときに呼吸音の異常(喘鳴、呻吟、いびきなど)がある。

●障害のある人の呼吸障害
 以下、障害のある人によく見られる呼吸障害です。
運動マヒ・身体変形による呼吸障害 運動マヒのために、呼吸筋(横隔膜と胸郭を伸縮させる助間筋など)の動きが弱かったり、不随意運動のために呼吸筋の共同運動がうなくいかないなど、呼吸運動が低下する場合があります。また、脊柱や胸郭の変形があると、肺のふくらみ、肺への血流量などがアンバランスになりガス交換の効率が低下します。
閉塞性呼吸障害 舌根部、咽頭・喉頭周囲の筋緊張の低下によって、上気道が閉鎖されて空気の出入りが悪くなる状態を閉塞性呼吸障害と言います。あおむけではなく横向きや腹這いの姿勢で寝る、下顎が落ちこんだ状態にしないなどの注意が必要です。
中枢性呼吸障害 脳幹・延髄にある呼吸運動の中枢が正常に作動しない状態を中枢性呼吸障害と言います。症状としては呼吸の頻度、周期、深さなどに異常が見られます。睡眠中だけでなく覚醒時にも短い呼吸停止をくりかえすなど、めだちにくい場合もあります。
嚥による呼吸障害 誤嚥してしまった唾液や食べ物が気道に貯蓄されると、慢性・反復性の気管支炎・肺炎などの感染を引きおこす誘因になります。誤嚥をひんぱんにおこす人は、もともとの呼吸機能の弱さもあるために感染は重症化しやすいので十分な対応が必要です。
  
       

葉

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