「みんなのねがい」の好評シリーズは、単行本『新版・子どもの障害と医療』
(尾崎望、出島直編、2000年、全障研出版部)になっています。
「みんなのねがい」2002年10月号では、つぎの特集(監修・尾崎望)を企画しました。
詳しい内容にはふれられていませんので、不明な点や、さらに詳しく知りたい点は
かかりつけの医療機関や医師にご相談ください。 (「みんなのねがい」編集部)




脳性まひ


脳性まひ -- 脳の損傷による運動面の障害

●脳の損傷による運動面の障害

 脳性マヒは「発達途上にある未熟な脳の、非進行性病変(生後四週まで)に基づく、永続的な姿勢および運動の異常」と定義されています。
 脳の損傷による症状は、運動、知的能力、てんかん、行動面など多岐にわたりますが、脳性マヒは、特に運動面で障害のあるものに対して使われます。
 脳性マヒの七〇〜八〇%は「痙直型」です。障害の部位などにより、片マヒ、両マヒ(最も一般的で早産児に多く見られる)、四肢マヒ(最も重度の病型)、不随意運動型、失調型といった病型に分けられます。
 従来、脳性マヒは、未熟児、仮死、黄疸が三大原因とされてきました。しかし黄疸は予防可能となり、分娩時の仮死によるものもそれほど多くありません。周産期医療技術の進歩とその広がりによりこれまで生きることのできなかった赤ちゃんの生存が可能となりましたが、ときには脳性マヒなどの障害をのこしてしまうこともあります。このようなことからこれまで以上に未熟児(早産児)が原因とされる割合が大きくなっています。

●「訓練」が目的にならない生活を
 赤ちゃんのときに、脳性マヒ、またはその危険があると診断されると機能訓練が進められます。機能訓練には、ボバース法やボイタ法などさまざまな方法があります。機能訓練の効果は乳幼児期に最も期待されますので、就学まではどうしても訓練中心の生活になりがちですが、その訓練が子どもにあっていること、親にとっても納得できるものであることが大切です。「訓練すること」が目的のようになってしまわないように、そのときそのときの生活を楽しむことも大事にするようにしましょう。
 就学すると、学校生活が中心になります。普通学級へ入学した場合はもちろん養護学校や障害児学級に通う場合にも、専門の医療スタッフの指導が受けられるとは限りません。医療機関の主治医や担当訓練士と連絡をとりながら指導を受けることが必要です。日常的な医療的ケアが必要な重度の子どもについては、教員がその行為を行なってよいかなど、学校での医療体制が問われています。
 学校を卒業して一般就労した場合、無理をすることによって、これまでの障害が重くなったり、新たな痛みや障害がでる二次障害につながることがあります。職場の理解を得て、できるだけ体に無理のないように働くこと、継続的に軽い訓練や運動を行なうことなどが大切です。介護や医療的ケアが継続的に必要な重度の人の場合には、医療機関と福祉機関が連携して本人と家族の生活を支えることが求められます。
       

葉

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