「特別支援教育」をこえる
−新時代をきりひらく障害児教育 絶版

 荒川  智 (あらかわ さとし)
   (茨城大学教育学部教授・全障研副委員長)

 

   2003年8月10日 発行  ISBN4-88134-111-1 C3037
 
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目   次

序章 障害児教育の今、何が変わり、何を変えるか

第1章 「生きる力を育てる」とは
  1 「生きる力」のとらえ方
  2 生活の力をつける身辺自立の指導
  3 自己肯定感を育む

第2章 生活単元学習を再び考える
  1 生活と結合した教育と生活単元学習
  2 生活単元学習の新たな動き

第3章 文化を通して認識・思考し表現する力を高める
  1 数の指導をどう進めるか
  2 ことばの指導と表現する力
  3 認識・思考する力と自己表現
  4 障害の重い子どもと生活を潤う文化

第4章 特別ニーズ教育の展望
  1 「特殊教育」から「特別ニーズ教育」へ
  2 この間の特別支援教育政策の特徴と問題性
  3 教育的ニーズとは――公教育は商品じゃない

第5章 変革は“きょうどう”(共同・協働)の原理で
  1 地方分権と自治体・学校の取り組み
  2 障害児教育を支える草の根の取り組み

第6章 学校の公共性と教師の専門性――みんなバラバラにされないで
  1 日常から築く学校の公共性
  2 教師の専門性と同僚性

第7章 新しい障害観・障害分類と学校の役割
  1 WHO「国際生活機能分類」(ICF)
  2 子ども理解と指導計画――子どももバラバラにしないで
  3 内面の育ちと中心的な課題

第8章 通常教育に発信する障害児教育実践の視点
  1 学習内容の共有化と多様化
  2 「障害・発達・生活」の視点を深める

終章 歴史を振り返り未来をきりひらく

あとがき

■みんなのねがい2003年9月号
 みんなが待っていた!
  21世紀障害児教育の入門書

    茨城県立土浦養護学校 森下芳郎

 「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」が出されました。これからの障害児学校や障害児学級はどうなっちゃうんだろう。矢継ぎ早の教育「改革」の提案を前に、何をどう考えていいのかわからなくなっている人もいることでしょう。
 著者は多種多様な問題に、ときには大胆に、大切な整理をしてくれています。
 教師の一番の関心事の教育実践については、教育史の専門家として歴史の事実もふまえながら、全国に目を配り、明日からの参考になる豊かな実践が紹介されています。そして、教育実践を取り巻く状況についても、歴史的な流れと全世界的な視野で議論や動向を整理しています。
 この本を読めば、現在の教育界の動きと、何が議論され、論点はどこなのかがよくわかります。まさに「21世紀の障害児教育(特別ニーズ教育)入門」とも言える書物になっています。
 コラムも基礎的知識を提供してくれています。そして、子どもたちの豊かな内面が表現された山本進氏の写真がステキです。
 内容に立ち入って言えば、教育実践の分野では著者は何よりも「集団の中での内面の力と育ち」を大切にして、子どもの発達を保障しようと提案しています。こうした視点から、子どもを集団から切り離し、子どもの学力や作業技術などをバラバラに形成しようとする「個別の指導計画」を批判し、「障害を知ることは、子ども全体を知ることと表裏の関係」と提起しています。制度改革の問題においては、「学校は、専門性と同僚性、公共性・共同性を兼ね備え、子どもも保護者も先生も成長し合う『学びの共同体』」という学校像に共感します。障害児学校、障害児学級の教師はもとより、通常学級の教師、保護者の方、学生の方にも読んでほしい一冊です。
 「能力の高次化が『タテの発達』、今の力を豊かに広げる人格発達が『ヨコの発達』」という視点、「『障害・発達・生活』を『教育的ニーズと発達・生活』と読み変え可能」の提起については、今後著者とともに、全障研の研究運動で深めていきたいテーマだと感じています。

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