人間を大切にするしごと
 特別支援教育時代の教師・子ども論

 三木裕和
(兵庫県立出石特別支援学校)著 越野和之(奈良教育大学)解説
 
定価 本体1500円+税  ISBN978-4-88134-604-4 C3037  2008.5.10   
表紙

目 次

はじめに 3

1 その子の気持ちになる 13
    ●教師になった頃 13 ●開拓的な仕事 14 ●「お話してるの」 16
     …オマケ19

2 ナッちゃんは分かっていた 21
    ●ビデオファイル発見 21 ●ピンポンボタンを押したかった 22 ●闘いを支える力 25
    …オマケ28

3 心のはたらきを追体験する 30
    ●ユキちゃん、キョウちゃん 30 ●そして、ヒロ君、アーちゃん 32
    ●心のはたらきを追体験する 35
    …オマケ37

4 笑顔のない子、楽しくなさそうな子 40
    ●分かりたいと思わないと分からない 40 ●笑顔のない子、楽しくなさそうな子 43
    …オマケ 46

5 希望で導く科学 47
    ●ワタル君 47 ●主観的ではありません 49 ●希望を感じ取る力 50
    …オマケ 53

6 自閉症の子どもたち 55
    ●自閉症の子どもたち 55 ●不快、不安、恐怖 56 ●愛されている実感とともに 60
    …オマケ 62

7 自閉症の子どもたち(2) 64
    ●力になれなくて、ごめんね 64 ●結論を押しつけない 66
    ●気持ちよくなったことが分かる 68
    …オマケ 70

8 Performという言葉には「成し遂げる」という意味がある 72
    ●舞台裏のドラマ 72 ●「成し遂げた」青年たち 73
    ●生きている意味をつかみたい 75
    …オマケ 78

9 父母を支える 81
    ●ヨシキ君のお母さん 81 ●お客様権利論 83 
    ●どうしたら、その土地で花が咲くのか 84
    …オマケ 88

10 学校って、どういうところ? 91
    ●最後に行きたいところ 91 ●懐かしく、恋しい場所 93 ●学校が好きだったんだ 96
    …オマケ 97

11 友だち、仲間、集団 98
    ●「ともだち・くつろぎ」の時間 98 ●社会的適応行動の獲得 100 
    ●競争を勝ち抜くための「専門性」 101 ●みんなで一緒に 導く 102
    …オマケ 104

12 歴史を越えた人間的願い 107
    ●歴史を越えた人間的願い 108 ●平等性と能力主義 110
    …オマケ 114

13 仲間と討論しながら 116

【解説】 重層的な「人間への信頼」
      ―『人間を大切にするしごと』によせて― 越野和之  123

あとがき 141


難しいことをやさしく。やさしいことを深く。
教育・福祉に携わる人みんなで読みたい実践へのはげまし

   「みんなのねがい」2008年5月号掲載

 「本書には「特別支援教育時代の教師・子ども論」という副題がついています。しかし、それは特別支援教育時代の到来を賛美するものではありません。むしろ、この時代だからこそ大切にすべきこと、昔から今まで営々と続き、そして将来にわたっても大事にしていかなければならないこと、それを考えたいと思っているのです。」(【はじめに】より)

 障害のある子どもたちと接している教員のみなさん。学校生活の中で、ご飯を食べさせ、おむつを取り替え、体をほぐす。価値のあることだと頭ではわかるけれど、「学校の先生」が時間をかけて取り組むことにどんな意味があるのって思ったことはないですか。

 本書は、養護学校教育に「招き寄せられて」きた、ある青年教師の戸惑いから始まります。重症児の気持ちが分からないと悩むさなかに出会った光景。子どもを抱いてゆっくり揺らしていた同僚が、子どもの緊張がフッとゆるんだときに「気持ちよくなったね」と、まるで自分に起きたことのように語りかける姿。「子どもの気持ちになればいいんだ」と三木さんは気づきます。子どもの精一杯の表現を見落とし、「できなかった」結果にしか目を向けられなかったこと。ただ明るく陽気なだけで、子どもの気持ちに寄り添えていなかったこと。こんなエピソードを読むと、「自分もそうだった」と赤面しながらも、その失敗をくり返さないための新たな一歩を踏み出す勇気が出てきます。

 三木さんの目は自閉症児の心の中にも向けられ、不快・不安・恐怖を共感してもらえないつらさを抱える彼らに、「愛されていることの実感を伝えたい」と願います。抑制するばかりになりがちな自閉症教育ですが、根底にある「人として大切にされたい」ねがいを受け止める必要性をあらためて感じさせられます。

 子どもたちのしんどさや楽しさに共感することから、障害児教育の仕事は始まります。日常生活の介助から子どもを理解することも大切な取り組みです。こんな視点を自分のものにしたら、もう少しあの子と仲よくなれるかもしれない。そんな希望が見えてくる本です。 (神奈川・教員 金沢園子)

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