発達保障ってなに?

 丸山啓史(京都教育大学)・河合隆平(金沢大学)・品川文雄(発達保障研究センター)
 
 定価 本体500円+税  ISBN978-4-88134-085-1 C3036  2012.8.15
  
発達保障ってなに?

 発達保障とはどういうことか? /丸山啓史(京都教育大学・全障研常任全国委員)

1 「発達」とは?   「なか見!」できます
 (1)「ヨコへの発達」という視点
 (2)人格が豊かになること
 (3)生活・人生の幅の広がり
 (4)魅力的な経験の価値

2 発達保障と権利
 (1)本人の権利としての発達
 (2)平等な権利としての発達
 (3)人権としての発達

3 集団が育ち、社会が発達する
 (1)発達と「環境」
 (2)集団と発達
 (3)社会の発達

4 発達保障を進めるために
 (1)発達保障を担う人の輪
 (2)幅広い仲間がいる学びの場
 (3)夢を描き、共有すること


 発達保障はどのように生まれたのか?/河合隆平(金沢大学・全障研常任全国委員)

1 発達保障の歴史に学ぶ   「なか見!」できます

2 近江学園の誕生と発達保障の芽生え
 (1)近江学園の誕生と戦後民主主義への離陸
 (2)発達的共感の世界へ
 (3)どんなに障害が重くても発達する ―「ヨコへの発達」を求めて―

3 発達保障の思想をかかげて―「この子らを世の光に」―
 (1)びわこ学園の誕生
 (2)「夜明け前の子どもたち」の世界
 (3)この子らを世の光に

4 「権利としての障害児教育」と養護学校義務制実施
 (1)不就学をなくす運動のひろがり
 (2)子どもに合った学校をつくろう
 (3)「権利としての障害児教育」の成立と養護学校義務制実施

5 全障研運動の展開と発達保障のひろがり -「みんなのねがい」をつないでー
 (1)全障研の結成 ―「障害者の権利を守り、その発達を正しく保障する」―
 (2)障害のある人たちを発達と権利の主体に
 (3)「発達の三つの系」をつなぐ「みんなのねがい」

6 国際的な人権保障の努力と到達点のなかで
 (1)障害のある人たちの人権保障をめぐる国際動向
 (2)インクルージョンと発達保障 ―「障害者権利条約」の時代へ―

7 一人ひとりが歴史の主人公になるために
 (1)歴史のなかに発達保障をみる
 (2)固有名詞を持つ人たちの歴史に即して
 (3)時代をひらく歴史の主人公に


 3 障害児学級の実践から
   「みたがり・しりたがり・やりたがり」の芽を見つけ、育て、花咲かせる 
    /品川文雄(NPO法人発達保障研究センター)

 私の出会い ~全障研の先輩たちに魅了されて

1 「明日からここで勉強します!」と宣言し、自ら通常の学級からやってきた優
 (1)明日からここで勉強します
 (2)国語や算数をやったら、ボク暴れます

2 無理に学級の学習に参加させなかった。彼が「やりたい」となれば、参加させる程度
 (1)それでも、指導方針は考えた
 (2)可能性が見えてきた

3 「地下鉄探検隊」の活動が、学習への参加の糸口に
 (1)「地下鉄探検隊」の活動を始めると
 (2)様々な場面で学習に参加するように

4 浮かび上がる課題
 (1)自分への自信を取り戻していったが、行事にはプレッシャーが
 (2)現象面では負の部分をみせていても‥

5 障害児学級の学習とその中で成長した自分に自信が持てたとき、優は変わった
 (1)苦手な国語にも挑戦
 (2)「総合的な学習の時間」が再び算数を学ぶきっかけに
 (3)広がる興味、広がる世界

6 素敵なお兄さんになった優
 (1)新たな自分への挑戦
 (2)1年生の支援係で頑張ることを求める
 (3)障害児学級の学習とその中で成長した自分に自信が持てたとき、優は変わった。
 
7 実践で大切にしていること

 おわりに   荒川 智(全国障害者問題研究会全国委員長)

◆「ノーマライゼーション」2013年1月号 ほんの森
 加藤直樹 (立命館大学名誉教授)
 本書の主張の重要な一つは「発達」の見方である。一般に「能力の高度化」が発達であるととらえられるが、発達保障では、それらを「タテへの発達」と呼ぶとしたら、「ヨコへの発達」があるという。 全文

◆「みんなのねがい」10月号
 若者を誘ってみんなで読みたい
 21世紀版「私たちの大学」のテキスト /土岐邦彦(岐阜大学教授・全障研岐阜支部長)

 私が学んだ大学では、当時自閉症の治療と称して「行動主義」の嵐が吹き荒れていた。何度もその嵐に吹き飛ばされそうになりながらも、かろうじて踏みとどまることができたのは、本書にも紹介されている先達の著書を仲間たちと学ぶことができたからだと思っている。もう30年以上も前のことだ。
 そのとき、講義では決して教わることのなかった「発達理論」の学習にも挑んだ。とにかく難解な言葉と理論に四苦八苦した。著者の田中昌人さんに、みんなで質問状を出したこともあった。田中さんはすぐには返事をよこされなかった。そして、次の年に年賀状をいただき、そこには「あの問題はみんなで解決できましたか?」としたためられていた。「そうか、みんなで考え続けていくことが大事なんだな」と若い私たちは納得した。
 「発達とは自由を獲得するみちのりだ」という考え方に、心理学という固有のアプローチをすすめていくうえでも、個々の障害者の生活実態をおさえ、「発達侵害」の状況を権利論の観点から考慮していくことの必要をしっかり叩き込まれたと感じている。そして、それが今の自分の血と肉になっているのだろう。「発達保障」への学びは、まさに「私たちの大学」であった。
 本書には、まず、二人の若手研究者によって、私たちがかつて学んだ理論を踏まえつつ、その後の「発達保障」の実践と研究の成果が的確にまとめられている。そして、ベテランの実践者の論は、一人の子どもの発達のすじみちの中に、「発達保障」の思想が確実に根づいていることを教えてくれている。
 今、全障研には若者たちに勢いがある。わが支部もそうだ。若者たちを誘って、本書をみんなで読みたいと思う。21世紀版「私たちの大学」のテキストになる絶好の書である。


全障研兵庫支部の書籍紹介

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