陽はまた昇る<1>
13年目の訪問・はたらく場


2007年1月1日。デンマークは、自治体の改変を行い、12の「アムト(県)」は5つの「リージョン(広域行政組織)」になった。

日本では、この数年で3232あった自治体は1807になった。デンマークの自治体である「コムーネ」も、270あったものがおおむね3万人をめどに合併し98になったそうだ。

なにが同じで、なにがちがうのだろう。

いままで「アムト(県)」は、医療、後期中等教育、障害者福祉、施設設置管理に責任をもっていた。新しい「リージョン」がとりくむのは、99%「医療」だという(病院の専門化による医療の質向上と経費節減をねらう)。あとは重度の障害者施設の管理運営なのだという。

この動きに、障害者団体は反対した。
 重度障害者のケアをコムーネ(自治体)に任すは十分ではない。
 専門的なケアが各自治体単位では十分にできないではないか
 アムト(県)ベースでの現行のケアでも十分ではない、さらに充実せよ
しかし、いまは野党となった社会民主党も改変を支持し、当事者団体の声は届かなかったそうだ。

「障害者の作業所は、昨年までは「アムト(県)」の管轄だった。1月1日以降はどうなったのか、聞いてみないとわからない」
以上は、デンマークで通訳をお願いしている田口繁夫さんの話だ。

  ◆  ◆
  
1月4日、コペンハーゲンの北40キロ。海峡の向こうにスウェーデンを見るヘルシンオア市にある「北シェラン島地域仕事・体験センター」にいる。
ここは昔、「ホイヴァンゲン障害者就労センター」と言った。一行にとって、13年ぶりの訪問となる。

ここは社会サービス法にもとづく県立の施設として、1989年定員50名で開所し、1999年床面積を2倍にして定員85名とし、2003年に、いままでの「保護作業所」から、もう一つの作業所を統合して「仕事・体験センター」となっている。
 解説するハーレイさん
指導員リーダーのリスベット・ハーレイさん(写真)に話を聞き、
利用者と同じ大きなハンバーガーを食堂でほおばりながら懇談した。

○発達障害者のセンターとして、200人の利用者がいる。スタッフは50人。
○重度で移送サービスを利用する方から、公共交通を利用したり、なかには運転免許を持っていて自分で通所できる人もいる。
○利用時間は月曜から金曜まで、朝8時半からはじまり、午後は早く変える人などまちまち。

○「センター」は3つのセクションにわかれている
1)日中のデイサービス(ハーレイさんのセクション)
  利用者50人が3グループに分かれる。スポーツに力をいれ、体を動かすことに
  力を入れている。利用者同士のふれあいにもなる

2)作業アクティビティ(旧ホイヴァンゲン)
  それなりの能力を保持している。要求に応える能力をもっている人たちが
  4つのグループ(厨房での食事、掃除、木工、テキスタイル(織物))で活動
  木工はレベル高く、独自製品をつくり、市場に卸している。
  以前のデイサービスの活動のような「組み立て作業」「陶芸」はなくなった。

3)ジョブスクール(就労のための学ぶ場)
  履修期間2年。若い障害者を対象に一般就労や保護雇用の可能性を検証する
  授業や企業実習も体験し、人付き合いなども訓練
  特別コースにデンマーク語コースなどもある

関西空港から飛び、ヘルシンキ空港で合流し、デンマークにいっしょに入った滋賀の立岡晄さん(前きょうされん理事長)が質問した。
 センター入口付近

●ジョブスクール2年間後の一般就職先は、どんなところがありますか?
A)フルタイムでなく助成金のでる雇用 (「スコーネジョブ(やさしい仕事))。
 障害者の「早期年金」に
 「賃金」(1時間30クローネ、10クローネは行政が助成。1クローネ=約22円)
 内容は、コープや学校でのメンテナンス(用務員)、会社の庭師(芝生の世話?)等
 (一方、早期年金を受給していない人が対象は=フレックスジョブ、
  これは最低賃金が保障される)
 
●日本では雇用率は1.8%だが、大企業は達成したことがない。ここでは?
A)デンマークにはそういう法律はないが、企業の社会的責任をアピールし、
 障害者の雇用をすすめる行政指導をしている。

そして、「これだけは聞いておきたい」と、
日本で実施された「障害者自立支援法」を念頭に質問された。
ハーレイさんは、日本の障害者年金額を公務員賃金と比較しながら、
「年金額がまず少ないですね。少ない中でさらに徴収されるのは非常にシビアだと思います。デンマークでは障害を持っていても持っていない人と経済的にも平等にしょうとするこころみをしています。もっとずっと年金を上げなくては」

立岡さんは思わず「ありがとう!!」と。みんなからも拍手がわきました。

ところで、アムト(県)立だったこの「センター」の管轄は1日以降どこになりましたか?
ハーレイさんは、
「私は以前は県職でしたが、1日からヘルシンオア市の職員になった」
とケロッと答えました。
県から市と所属は変わったが、賃金はもちろん変わらず、所属する労働組合も同じ。交渉する相手が県から市にかわるくらいとのことだった。

 スケートを楽しむ
 ▲コペンハーゲン・王立劇場前のスケートリンク
   
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