陽はまた昇る<3>
フィンランド学力世界一の「秘密」


「福祉制度だけで比較すれば1番は文句なしでスウェーデンです。2番がデンマークかな。フィンランドはずっと遅れるでしょうね。それでも日本に比べたら、、、、比較にならないですよ」
と旅のパートナーの深井さんが言う。

フィンランドは、十字軍以降はスウェーデンに、19世紀以降はロシアに支配された。独立は1917年。ロシア革命のさなかだ。
第二次世界大戦では、ソ連に敗北し、戦争犯罪として多大な賠償金を支払った。
1952年、ヘルシンキ・オリンピックの年が福祉国家へのスタートの年だといわれる。
そして、1990年代初頭、大不況が襲った。

しかし、フィンランドはその後の10年あまりで大きく飛躍した。今も、街は新しいビルが続々と建設されている。泊まったホテルの前にはkamppiという大規模複合ショッピングセンターがオープンした。

欧州トップクラスの経済の推進役はIT産業だ。その代表が、携帯電話のノキア(パソコンOSソフトのLinuxも有名だ)。もとは、「ノキア村?」のゴム工場だったが、世界トップ、3分の1のシェアをもつ巨大企業となった。暖冬で氷結しない湖の向こうに白く輝くガラスの城がノキア本社だという。

そして推進のもう一つが、1995年に確立された現在の教育システムだといわれる。能力別でなく、すべての子どもに同じ教育を与えることが基本だ。

1月8日(月)、朝7時50分ホテル発。
訪問するオーロラ小学校は、ノキア本社のあるエスポー市にある。
首都・ヘルシンキ市(56万)に隣接したエスポーは人口22万、フィンランド第二の都市だ。
(ちなみにフィンランドは521万人、北海道と同じくらいかな)
ヘルシンキにむかう朝の道路は渋滞が続いているが、逆方向は快適なドライブだった。
あたりはまだ暗闇の中にあり、白樺の木肌がライトに照らされて白く光る。

 ◆  ◆

オーロラ小学校は300人が学んでいる。教職員は40名。<写真>
 オーロラ小学校
中学校は別の敷地にあるそうだが、新しい学校(基礎学校・総合学校)では小・中学校の9年制ができていると、52歳だという校長がパソコンを使って学校紹介をはじめた。

以下、校長先生の話
・昨年もたくさんの日本からの視察があった。
フィンランドの学力世界一位(OECD学習到達度調査)の秘訣を探りに来たようだが、一言ではいえない。
ただ、言えることは
1)すべての子どもたちが無料で教育を受けることができる
  自治体ごとの学校差はほとんどない。
2)教員の専門的知識や技量のレベルが高く、研修が充実している
3)子どもたち(障害児はもちろん)へのサポートが行き届いている
4)現場に裁量があたえられ、力を出し切れる環境が整っている

さらに、この学校では
・6年間は同じ担任がずっと授業を行う(中学校では教科別の授業になる)
・教員は同じ学校に長く勤務する傾向がある
・校長は長く務めてくれうほうがコミュニケーションがとりやすくありがたい
 ★長いとは?とささやくと通訳の菊川由紀さんが
 「ほぼ終身です。教員の希望でしか転勤はありません」と教えてくれた。

○国の決める総合カリキュラム内容は網羅するが、その方法はそれぞれの学校で決める
・本校の特徴は、
 1)支援の必要とする児童(障害児など)の教育
 2)芸術
  (バンドと合唱が人気! 校長はギター、障害児担当ハンナさんはボーカル
  「からだを動かし、アートすることはそれぞれの学科も深める」と校長は言う。
・授業時間も独特で、昼休みを75分とり、そこでクラブ活動的なことをしている。
・フィンランド語と英語、算数に時間をあてている。

 授業参観すると、国語では鉛筆をもって直接書くことを重視していた
  また、5、6年の木工室は本格的で、女の子たちが、木工用のヘルメットをかぶって、
  一生懸命つくっていた。
  フィンランド政府観光局が出している『TORi』2005年11月
  「特集・フィンランドに学べ」でも、
  「図工や技術、家庭科など”手”を使う科目に重点がおかれている」とある
  
・コンピュター教育やビデオカメラ授業も導入している
 低学年クラスでもパソコンルームは充実していた
・教育現場は、教室だけでなく、グループ活動など、みんなでとりくむ課外授業重視

○学校と家庭との交流は重要だ
・教員と保護者との年間計画の協議の場がある
・教員同士もお互いを自己評価する(週単位での目標と結果)
 低学年の学ぶ建物
   ▲オーロラ小学校の低学年の建物

そして極めつけ、衝撃がはしったのはつぎの点でした。
「人事は公募です。父母の委員会が最終決定します」
・面接は校長が行い、選考での意見は校長も述べます。
 校長の権限は?と質問すると
 →「役割はグループリーダのようなものです」

この人事権をめぐっては、デンマークの養護学校でも同様の説明があった。
「ゲールスゴー スコーレン」の場合、
 学校には学校理事会の設置が義務づけられ、そこは原則の決定機関で、
 構成員は9名(7名は保護者代表、2名教職員代表、校長、副校長はオブザーバー)
 教員の雇用権、解雇権がある。自治体からの「指導」はない。
 ただし、校長だけは、自治体と学校理事会とで選出する。
 (2004年で訪問した学校の運営については
  http://www.nginet.or.jp/~kinbe/SAS/2004DK/2004dk_5.html を参照)

デンマークとフィンランド、人事権は保護者と教職員による学校理事会にある。
「学校はだれのためのものなのか」、丸太で殴られたような衝撃だった。
こうしたベースの上に、つぎにのべる障害児含めた教育実践の展開がある。

 低学年の教室
  ▲低学年の教室
   
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