北欧の国から 2


09/27 00:17:11 NGI00001 Re00793 北欧の国から(2)新聞が読める

ブリッダは56歳にはとてもみえない知的な女性だ。
製薬会社で働いていたが82年に筋ジストロフィー症を発病、
85年に動けなくなり現在、1日に5、6回のヘルパーによって、
ヨーテボリ市の一般的なアパートで一人暮ししている。
週10時間は、愛用のIBMPCで在庫管理の仕事をしている。

「わたしが生きていくためには、
 1)安心して生活できるためのヘルパー制度 
  安全アラームをおせばいつでも24時間、遅くても15分で確実にだれかが
  来てくれる=その安心感ははかりしれないものがある。 
 2)充実した生活のための住居(快適な住居)
 3)人間としての価値をみとめてくれる仕事
 この3つがとても大事です。
 ハンディがあっても、自分は社会の中で必要とされている、
 社会でなにかできることがあるはずだから、
 日本はコンピューターがすすんでいるのだから、そういうサポートをしてほしい」

また、彼女はわかれぎはに
「なにかはかならずできるはず。そのできる能力を発揮させることが大事です」
と再度いってくれた。

<日本はコンピューターがすすんでいるのだから、そういうサポートをしてほしい>
これには、正直まいってしまった。

そのブリッダを訪れた翌日、9月22日にヨーテボリ大学の心理学研究室を訪ね、
アーラン・ヤング・クリッズ教授とヘンリー・ルビンシュタイン技師の講義を聴いた。

ヨーテボリでは、1980年の中頃から、
地元新聞の「ヨーテボリポステン」を音声で読むことはできないものか、
新聞の一部のリーデイングサービスではない、
読者の側でよむところを「選択できる」ことについての研究がすすめられた。
(北欧のキーワードのひとつはこの「選択できる」ということで、
 それは教育の場や、就労の場、グループホームなどあらゆるところで
 貫かれている思想だった。)

「デジタル新聞」と訳せそうだが、
その読者は、現在ヨーテボリに100名、(最高齢は96歳の女性)
スウェーデン全体で450名利用している。

夜のうちに新聞社のコンピューターからFMラジオの電波で送られた電子データを翌朝、
普通の新聞より早く音読できるのだ。
この国では、この音声変換のためのPCの3倍の装置を国が
年200台づつ支給しており、
ちなみに新聞購読料は通常料金の110%だそうだ。

クリッズ教授は、心理学の研究者の立場で、
視力障害者が音声変換された新聞をどのように読んでいるのかについて、
この間の研究成果をはなした。

結論的には、視力に障害があろうと、
目の見える人の新聞を読むことと、目の不自由な人もおなじということだ。

技師のルビンシュタインは、
この「デジタル新聞システム」を販売する TEXTALK社の社長である。
現在、このシステムはフィンランド、ベルギー、オランダでも朝刊紙に活用されていて、
一番オランダの普及率がいいという
(国があげるではなく、欲しい人に国が補助するというパターンだからだそうだ)

スウェーデンの新聞普及率は90%程度で、
朝刊紙は宅配される(夕刊は駅売り)
目が見えないということで、新聞の情報を得られないというのでは社会的に不利がある。
だから、なんとか新聞が読めないものかと研究がスタート。

問題は、新聞の全文をどのように構成して、
目の見えない人たちにもわかりやすく選択できること、
そのことが一番難しく、そこが企業秘密なのだそうだ。

つぎに、それを電送する方法は、FMラジオの電波を使って届けられる。
端末装置のパソコンはどんな人にも操作が簡単であることが条件だ。
(スウェーデンでは「パソコン通信」の普及はあまりなさそうで、
日本でいう「キャプテン」のような感じの通信使用状況で、
買い物が家にいながらできるというくらいが便利だととらえられているようだ。

新聞の著作権のことについて質問したが、
「それは解決されている、いまは商業ベースで普及されている。
詳しくはこの資料を見たまえ」と英文の資料を渡されてしまい、
それを訳さないと、それ以上は分からない立場にたたされている(;_;)

「眼鏡のひとつとして売ってるよ」
と軽くいうルビンシティンの茶目っ気のある顔がこの国のそこの深さを感じさせた。


イメージ
ブリッダは1日に2時間
自宅のパソコンで仕事をしている



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