北欧の国から 6


93/10/05 00:09:10 NGI00001 北欧の国から(9) 高校教育

 障害があることで、教育を受ける弊害があってはならない。
 だれもが適正な教育を受ける権利がある。
 だれでも望む人は普通教育が受けられるべきである。
 しかし、障害児教育は市でできないことを国の責任で行なうものだ。

9月20日、ヨーテボリ市の
ブリュケ・エステゴートの教材教具開発担当=ウルフ・レーテモさんの話しである。
(このウルフは10年前の高谷清さんの「みんなのねがい」連載「北欧に生きる障害者と人びと」
でも登場していたベテラン)

午後、そのブリュッケ・エステゴートから職員が派遣されているという普通高校と寄宿舎を
急遽視察することになった。
予定外のことで、
正直、寄宿舎といえば、なんというか、学生寮=男子寮=万年床=ドテラ=ゴミ、、、と
日本の貧困を絵に描いたようなしかし、それを楽しむようなわが青春時代を連想したり、
精いっぱい改善の運動をしても6人なりの大部屋で、寄宿舎職員が必死で奮闘、、
のイメージで、さてどうなるやらとおもっていた。

さて、ここでちょっとスウェーデンの後期中等教育の様子を紹介。
高校入試は中学の内申書(中学2年時)で決まります。
進学率は98%、ただし卒業は80%。
普通科の理系が人気で、医学や法学へすすめる。
文系も大学進学の道が開けるが途中で医学や法学にすすみたいとおもっても
まず無理となる。
大学にいくと資格がとれる。大学進学率は15%。
高校の内申書で入学が決まり、すべての大学は国立大学である。

この国の人は、たとえば「社会福祉士の資格をもっています」と
必ず自己紹介のときなどに紹介する。それは誇らしいものなのだそうだ。
しかし、だからといって、大学をでて資格があっても、
そうした資格のいる仕事ができるというだけで
賃金的には大学出もたとえば職人さんもまったく同じか、むしろ職人さんの方がいいくらいだそうだ。

さて高校のはなしである。
ヨーテボリの北東、10年前につくられたアンゲレード高校につく。
30か国の子女1400名の生徒がいて、うち26名が障害児だという。
26名については周辺の都市からも来ているそうだ。
アンゲレード高校が「教育」に責任を持ち、ブリュケが「リハビリ」の責任をもつという任務分担。

ちょうど掃除の時間らしく、生徒たちはタバコの吸いがらをしきりに掃いていた。
校長はベント・トーンクリストさん。
ネクタイをしてわたしたちを迎えてくれたのは、この旅でブリュケの所長とこの校長さんだけだ。
(あとで聞いたら、その後に別の会議があってそのための服装だったという。
 この国は服装も合理的で、活動しやすいラフなものがほとんどだった)
もう一人この高校には、障害児担当のすてきなミドル校長・ビリッダ・カーリバリさんがいた。
 ヨーテボリの障害児の高校進学率は98%。
 ただし知的ハンディがある場合は特殊学校へいく。
 アンゲレート高校では、個人のすきなことや得意なこと、将来の職業などの展望を
 くみあわせて個々の学習計画をたて、担任とカウンセラーとで話しをつめる。
 一人一人の生徒にはアシスタントがいる。

 最終の教育目標は、自主性を高めること。
 自分で判断して、自分でどんな助力が必要なのか、
 自分で助けが欲しいと発言できること。
 しかし、卒後はきびしい。就職は不況の影響もあってさらにきびしい。
 75%はより専門の教育や短期大学へ進学する。
 25歳まで一般企業での実習はOKであるが、
 それ以後は就労センターやグループホーム、
 しかし、最低、年金と住宅は保障されている。
 が、生活することと充実した人生を送ることは別のことだ。

さて、寄宿舎。
アンゲレード・ギムナジウムとよんでいるが、
ブリュケの組織に属しながら予算は国が負担し、
リハビリのひとつとしてアンゲレード高校の一部に寄宿舎がある。

生徒26名中20名が寄宿生。
月二回は福祉タクシーを使って帰宅する。
寄宿舎職員は35名、
言語1、心理1、カウンセラー1、PT2、OT3、それに寄宿舎卒業生の助手若干名のスタッフである。
で、その「寄宿舎」を見せてもらった。

学校の校舎を抜けると、そこは緑の多い閑静な市民アパートがある。
そのアパートの一棟は高校生グループホームといえるもので4人(この場合は男3、女1)で
1グループ。すべて個室。
リビング、キッチンは共有。サンテラスもあった。
当然車いすで使える、上下移動のシステムキッチン、バストイレ。
ともかく広い。必要ならば前の棟に居住する職員が24時間体制でフォローする。
のぞめば一人だけで暮らすトレーニングもできるという。

わたしたちを待っていてくれたのは弁護士志望の車いすのAくん。
さっそく松葉づえの熱血石田弁護士と意気投合した感じだった彼の部屋を見せてもらうと、
ステレオ、CD、ベッドにタンス、そして机の上にはマックのパワーブックがあった。
「マック、パワーブック、ナイス!」というと
日本人はさすがに機械に強いといわんがばかりの笑顔を返してくれた。

案内してくれた、エリザベス寮長がこんな質問を返してきた。
「どうして日本の方はため息をつかれるのですか?」
日本では考えられない住環境のものすごさにただただため息なんですといってはみても、
エリザベスには、やはりなんでこんな当たり前の環境にため息をつくのか理解できないようだ。

「あのーー、、、日本では男女が同じ家のなかで共同生活をするということは考えられないのですが、
性教育はどうしてるんですか?」
と素朴な質問がでたが、エリザベスはまた理解できない、というような感じで、、

 SEXは人間としてあたりまえのことです。
 重度の人にも、卒業後はなかなかつきあえるチャンスもないので、
 むしろ交際をすすめています。
 本人どうしが希望すればいっしょに住むことも認めています。
 わたしたちが唯一教えることは避妊のみです。
 それはウマがあわなくなったりもするからです。

どうして日本人はそんなことを質問するのですか、、、
と彼女は通訳の友子ハンソンにボソボソと聞いていた。


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左がまじめな青年。マック使いだった。


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