夜明けを待ちながら(0)
居待月の夜に




夜のガムラスタンの風景
夜のガムラスタン


 アメリカでのテロとその報復戦争、再報復のテロ不安という危うい情勢のなかでの北欧視察ツアーでした。テーマの「北欧の脱施設化と地域支援システム」については、主催団体の障全協や月刊「みんなのねがい」1月号などによって行われます。また、わたしなども要請されているいろいろなメディアの原稿でも報告を行いたいとおもっています。とはいえ、調査ツアーのサイドストリーともいえる個人メモは、帰国後のあわただしい日々にのみこまれないうちに、綴っておきたいとおもいます。
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 ところで、危うい国際情勢ですが、視察先のデンマーク・オーフス市の国民学校(日本の小学校+中学校)では、前日にあったアメリカの報復攻撃によって、生徒や親に動揺があり、何人かは欠席していると冒頭に説明がありました。

 この学校は、校区が移民住宅地にあり、60%が移民の子どもたちでした。政治移民は無条件に受け入れる国柄のデンマークでは、移民人口は約1割だそうで、国際化のかかえる問題の大きさをあらためて感じました。

 この国際化、大きく言えば民族と国家の問題の核心も「コミュニケーション」です。お互いの違いを認め、それを尊重しあい、それぞれが理解しようと努力する関係が大切なのだと感じます。そして、お互いの人権を守り、それぞれの可能性を引き出すこと。これは障害者問題の根底に流れるものと同じものなのだとおもいます。

 ただ、シベリアを越えて日本からはるかに離れたヨーロッパの北の果てで感じる国際情勢は、日本で感じるものとは少し違って見えていました。

 デンマークのユトランド半島での視察を担当した通訳者は、「コイズミは自衛隊を派遣したのですか? それは本当ですか? 本当だとすると、今後日本は狙われますよ」と心配そうに言っていました。

 アメリカへのテロは許せない。しかしだからといって報復がいいわけではない。デンマークの首都・コペンハーゲン市庁舎前の広場には、たくさんのろうそくの火が並び、アメリカの報復攻撃に反対する市民の静かな、しかし強い意志が表明されていました。

 ナチスの侵略には3日で降参したものの、そのうらでは根強いレジスタンス運動を行ったデンマーク。長い戦争時代の教訓として中立政策をとったスウェーデン。

 スカンジナビア航空のミラノ=コペンハーゲン便がミラノで小さな航空機と追突し、100人以上の犠牲者がでた事故にはぞっとしたものの、国際情勢とのかかわりで、正直、一番怖さを感じたのは、北欧の国際空港や街ではなく、「NARITA・TOKYO」でした。

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 ストックホルム郊外で2泊したホテルのある町も移民の多いエリアでした。地下鉄駅にむかうショッピング街。障全協の吉本哲夫会長、愛知の肢体障害者の渡辺覚さんと3人でその日の視察を終えて、居待月の夜をそぞろ歩きました。

 スウェーデンは、医療、教育が無料です。無料というのはホントニ無料なんです。住居は格安で快適。もちろん福祉は充実。安心して老いていける。すると、たしかに税金は高く、消費税も25%で、ほぼ収入の半分が市や県、国にいくものの、その見返りは十分であまりあります。貯金なんてあんまり考える必要もないし、日常的には、食費と衣服、文化に教養、、、だから、街のショッピング街で目立つのは衣服であり、宝石なのかなあ??

 スーパーがあったので水を買った。レジにならぶと東洋系の目尻のきりりとしたお姉さんがレジでピッ!している。とりあえず、100クローネ(1クローネは約12円)札を渡すと、あと1クローネ必要だという。ん?水1本に牛乳とチョコレート1つなのに、そんなに物価が高いのか? とおもながら1クローネを渡すと、20クローネ札を3枚返してくれた(あ、合計は41クローネだったわけね)。 「さんきゅー」というと、「わたしはKoreanよ」と彼女はわらって言ってくれた。

 しかし、吉本会長は、スーパーの棚にはビールや小瓶のウオッカはあったもののウイスキーがなかったあと落胆している。気のいいKoreanの女性に「いずこにウイスキーはあるのか?」と聞き、ぺらぺーらと教えてくれた方向は街の外れ。でもいってみることにした。

 その店に入って一同愕然。レジにカウンターはあるが、そこから酒の陳列棚には入れない(;_;) (あとで知ったことだがスウェーデンではアルコール度数が5度以上の酒類は国営販売所でしか取り扱わない。わたしたちがたどり着いたところがその国営販売所だったのだ)。他のお客さんの動きを見ていると、なにやらレジ横のお酒のパンフレットをのぞき、メモをレジに渡している。

 吉本会長はレジにいた褐色のお姉さん(地中海に面したアフリカの出身かなあ)に「ウイスキー!」「スコッチ!」といっていたが、最後は日本語で「半分!!」などど言っている。

 ところがこの「半分」という日本語に、「半分ですか?わたし日本語わすれちゃいましたが」とにこやかに丁寧な日本語がその女性から返ってきた。

 一同、えええーー!! とすごく感動。その素敵な褐色のお姉さんは、「半分」を「2つ」ですねなどとやさしい日本語で、70歳を越えた吉本会長をつつむむのでした。会長の満面の笑顔は、かれこれ20年近いおつきあいのなかでも極上のものだったことを報告します。

曰く「やっぱり、国際交流はいいねえ」。

果物市場
色鮮やかな果物市場(ストックホルム)


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