<声明>

戦争のための人づくりをねらう教育基本法の改悪に反対します

 中央教育審議会は2003年3月20日、文部科学大臣宛に教育基本法の改定を求める「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」を答申しました。

 教育基本法は、民主的で文化的な国家の建設と、世界の平和と人類の福祉に貢献することを宣言した日本国憲法に則って教育の基本を示すものです。前文には、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」と「個性豊かな文化創造を目指す教育」をうたっています。

 ところが、道理なきイラク戦争が開始された日に発表されたこの答申は、憲法「改正」と一体になった戦争のための人づくり教育をすすめようとするものです。また、財界戦略である大企業の本格的な多国籍企業化をすすめるためのエリート教育制度づくりです。さらに、国会での審議もなく、政府や教育行政による国家の教育介入に道を開く「教育振興基本計画」は、教育基本法そのものの性格を変えてしまいかねません。

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 今回の中央教育審議会の答申は、青少年が夢や目標を持ちにくくなり、規範意識や道徳心、自律心の低下、いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊、さらに学習意欲の低下などを指摘しつつ、あたかもそれらの原因が教育基本法の不十分さにあるかのようにして、「公共への参画」「伝統・文化の尊重」「郷土や国を愛する心」を加えるべきだとしています。これは教育基本法改悪を前提とし、それを正当化するための逆転した誤った議論です。これまで国が、教育基本法の理念を大事にして生かしてこなかったからこそ、現今の青少年の問題状況がうまれているのです。

 教育基本法には、教育の目的として、人格の完成をめざし、真理と正義を愛し、勤労と責任を重んじ、心身ともに健康な国民の育成がめざされることが述べられています。また、教育行政が「教育の目的を遂行するために必要な諸条件の整備確立を目標」として行われることを明記しています。しかしながら、戦後から今日にいたるまで十分な教育条件の整備がなされてきたといえるでしょうか。問題解決には、思い切った教育諸条件の整備こそが求められており、教育基本法の改定で解決することではありません。

 少人数学級を実現したり、すべての障害児に適切な教育を保障し、障害児者を抱える家族が生き生きとした生活を地域でおくることができるような十分な行政施策を展開するなかで、真理と正義を愛し、勤労と責任を重んじ、心身ともに健康な国民の育成が図られるのです。

 1967年の結成以来今日まで、一貫して障害児者・家族の基本的人権と発達の保障をめざす研究運動を展開してきた私たちは、今回の答申に断固として反対し、教育基本法を生かす教育施策の実施を強く要求します

 2003年3月21日   全国障害者問題研究会常任全国委員会

 

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