声明 性教育を口実にした障害児教育への不当な介入
を許さず、豊かな教育実践の創造を

2003年10月18日 
全国障害者問題研究会常任全国委員会

 障害のある子どもにとって性教育は、いのちの大切さを学び、自立して地域社会に参加していくために大切な実践です。今日、歪められた性情報が溢れ、障害児者の性被害が続発する中にあっては、より一層求められています。

 私ども全国障害者問題研究会では、1980年より「性教育」分科会を全国大会に設け、教育関係者だけでなく保護者や障害者はじめ多くの人たちと連携しながら実践、研究を深めてきました。

 ところが、今年7月、東京都議会において「行きすぎた性教育」として一部都議らが性教育を取り上げ、翌日、この都議らが一部マスコミ、都教委を伴ってN養護学校を視察しました。そして、性器がある人形の教材の下半身を脱がして撮影した写真を添え「過激性教育、まるでアダルトショップのよう」と新聞報道をしました。その5日後、35名をこえる都教委指導主事が全職員への聞き取り調査を行い、性教育の教材や資料とともに教員の服務や学級編制に関わる資料を持ち去りました。

 その後、都教委は「盲ろう養護学校経営調査委員会」を設置し、28校で不適切な運営があったと報告。そして、9月11日、「教育内容、学級編制および教職員服務について不適切な実態がある」として、校長1名を1か月の停職とし教諭に降任するなど、学校管理職37名、教育庁関係者14名、教員等65名の大処分を行いました。

 今回の処分には重大な問題があります。都教委は、性教育については、実践の一部分のみを取り上げ、教材もその使用方法を見ずに、「問題である」と決めつけました。しかし、「実際に子どもが受けてきた授業の本当の姿と保護者の気持ちを知っていただきたい」とのN養護学校保護者の会からの都教委への訴えを読むと、何が真実なのかがよく理解できます。この訴えでは、「こころとからだの教育」は7、8年前から校内全体で取り組み、保護者からも研究者からも高く評価され、実践報告もされてきたこと、保護者には事前事後にきめ細かく授業内容が示され、意見交換もあったこと、全校保護者会では、誤った新聞報道の訂正を求める声も出され、これまでの教育を必要と認め、継続して欲しい要望がたくさん出たこと、そして何よりも「保護者の声にも耳を傾けて」と切望しています。

 一方、処分の対象とされた「学級編制や服務」の問題は、これまで教育現場から切実な要望としてあげられていた、貧困な教育環境・教育条件の整備、教職員の増員、勤務状況の改善など、教育行政としての責任を放棄してきた結果起こったものです。まずは、都教委こそが厳しく問われなければならないことです。

 教育基本法第10条は、「@教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものである。A教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」と教育行政のあり方について明確に規定しています。今回の都教委の動きは、教育基本法、ひいては日本国憲法さえも否定することにつながるものです。

 私たちは、このような教育行政の障害児教育への不当な介入を許さず、子どもたちの発達を保障するために、より多くの国民とつながりながら、豊かな教育実践の創造のために奮闘します。

■関連情報

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全教 障害児学校に対する東京都教育委員会の異常な介入に断固抗議し、処分の全面撤回を要求する

いま東京で何が起こっているのか(都障教組資料)新

自由法曹団声明 石原都政・都教委の障害児教育破壊を批判する新


”人間と性”教育研究協議会    

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