障害者家族の老いる権利

 田中 智子
(たなか ともこ)
  佛教大学教授、全障研常任全国委員
  定価1980円(本体1800円+税)
  ISBN978-4-88134-935-9 C3036  2021.7.15

はじめに

プロローグ 四半世紀の年月を重ねて


Ⅰ ライフサイクルを通じて積み重なる生活問題

  1 〝ケア〟と〝子育て〟の境界
  2 子育て期の母親の生活問題


Ⅱ 家族から社会へのケアの移行

  1 家族から社会へケアの移行を考える①―移行の現状ととりくみ
  2 家族から社会へケアの移行を考える②─親の視点から
  3 家族から社会へケアの移行を考える③─きょうだいの視点から
  4 家族から社会へケアの移行を考える④─障害当事者の視点から
  5 家族から社会へケアの移行を考える⑤─専門職の視点から
  6 親を看取る


Ⅲ 周縁化された問題にも目を向けて

  1 中山間地域における家族の高齢化問題
  2 無年金障害者の高齢期の生活問題
  3 成年後見制度の課題と限界


Ⅳ 老いる権利と看取る権利の確立をめざして
  1 高齢期の生活問題の諸相
  2 社会的支援の方途


おわりに


書評 全国障害児者の暮らしの場を考える会 新井たかね さん

 著者の田中智子さんのお話を初めてお聞きしたのは、2019年に「障害のある人の暮らしの場」をテーマに埼玉県障害者協議会が企画した研修会でした。
 演題は「障害のある人の暮らす権利と家族のノーマライゼーション」でした。この案内チラシを手にした時「家族のノーマライゼーション」私の探し求めていたのはこれだ!と、心はずませ参加しました。
 重心とよばれる大変障害の重い娘と歩みながら「私自身の人生を豊かにしたいと思えないで、子どもの豊かな人生を考えられるのだろうか」そんな思いを持つようになりました。
 34年前、所属していたみぬま福祉会の広報紙「輝け太陽」に、その思いを書いたことがあります。この時、実践・運動の中心を担っていた現理事長に「母の気持ちも良くわかるが、もう少し待ってくれないか」と言われたことが思い出されます。「在宅も進路」といわれ障害の重い人たちの進路先がなく「だったら、自分たちで作るしかない」と、毎年無認可作業所を作っていた時期でしたから。
 「娘の人生も!私の人生も!」と思いながら30年を経て、著者の講演に接したこの日、参加した母たちから「自分のことも大切に考えていいんだと思った」「自分のことも見つめてみようと思った」と発言が続きました。
 主催者代表は「障害のある子どもたちの豊かな暮しを願いながら、私たち親も自分の人生を大切に歩んでいきましょう」と、最後を結ぶ感動の学習会でした。
 本著書『障害者家族の老いる権利』は、著者が障害のある人・その家族との楽しい経験も共有してこられ、心から寄り添ってこられたからこそ、そして今を受けとめ、課題を引き寄せて考えられるからこそ、その調査の視点、分析に説得力があり、私たち家族を励ましてくれる稀有な著書であると思います。
 障害のある子どもの黒子として生きてきた多くの母たちが、自分のことを語り始めてきた今「家族から社会へのケアの移行を考える」の章の、それぞれの立場からの視点は、立場を越えて考えあい、共有しあう、そんな機会を持つ上で大切な提起をいただきました。
 実は、社会資源が余りに貧しく、制度と実態の大きな乖離、支える現場の脆弱さ、その現実に翻弄されるなか、「自分らしく生きたい」との思いに「もう少し待って」と、今の私が言いそうなことに驚いています。
 そんな時だからこそ、本著を多くの仲間たちと学びあい、私たち家族の老いる権利が保障される、信頼に足る社会へ、確かな一歩を進めたいと思えた大切な一冊になりました。

 
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