障害者と家族のための
インターネット入門

 伊藤英一・梅垣まさひろ・薗部英夫 編
 定価 本体1500円+税  2001年12月9日 発行
 ISBN4-88134-031-X
■

 ITを基本的人権保障の実現にいかす/ 清原慶子(東京工科大学メディア学部)

第1章 IT(情報技術)と障害者の人権
 障害者の人権とインターネット
   ”無が有となる希望の道具”とするために/薗部英夫(全国障害者問題研究会)
 「くちびる」で乗りこなすネットサーフィン
   IT技術の可能性/伊藤英一(神奈川県総合リハビリテーションセンター)
 情報はサウンドにのって
   すべての人に役立つ情報のアクセシビリティ/梅垣まさひろ(ITエンジニア)


第2章 知っておきたい基礎知識

 インターネットをはじめる前に/梅垣まさひろ
 困ったときの解決法/堀込真理子(トーコロ情報処理センター)
 IT活用のための周辺機器
   肢体不自由のある人のために/伊藤英一
   視覚障害のある人のために/佐々木夏実(筑波大学附属盲学校)

第3章 基本編
 電子メール/田中克典(埼玉県立川口工業高校)
 メーリングリスト/寺田慶治(システムアドミニストレータ)
 ホームページ/堀込真理子


スポット
 らくらくマウス物語/村一浩(ネットワーク杉並ここと)
 サポートは真剣に 活動は楽しく/関和子(練馬ぱそぼらん)
 難病患者へのコミュニケーション支援をとおして/坂爪新一(仙台市)
 助けてから助け手へ/岩渕正樹(坂戸パソコンボランティア)
 目標を持って生きたい/矢澤健司(日本筋ジストロフィー協会)
 時間の自己管理を支援する道具/畠山卓朗(横浜市総合リハビリテーションセンター)
 金銭の取扱を支援する道具/畠山卓朗

  表紙グラフィックデザイン 南浩一  本文イラスト 松村佳恵


■本書を推薦します
  これが本当の「インターネットのちから」です。
  すべての人に理解して(わかって)ほしいと思います。
  村井 純(慶応義塾大学教授・WIDEプロジェクト代表)          
■書評
  情報アクセス権を障害者の暮らしに具体化する

  加藤直樹(立命館大学教授) 「みんなのねがい」2002年2月号

 試みに、本書に紹介されている新潟県新津市の鈴木正男さんのホームページにアクセスしてみた。まずはメニュー画面とともに音楽が流れてきた。ミュージック付きのホームページで、これなら視覚障害者がアクセスしたらすぐ鈴木さんのだとわかるだろう。内容は、重度の脳性マヒをもつ鈴木さんの自分史があり、内外の政治情勢などへのコメントがあり、福祉タクシーを新津市に実現した運動の経験、さらにPC懇談室、IT情報、面白介護グッズ、介護研究室など盛りだくさんである。20年のパソコン歴を誇る鈴木さんだが、インターネットを通じて「世界が広がった」といい、パソコンはなくてはならない生活の必需品になっていることがよくわかる。
 全障研は1990年に「みんなのねがいネット」を立ち上げたが、本書にはこの間の、日進月歩の激しい情報技術の進歩と障害者・家族の熱い期待の高まりが十分に反映されている。
 本書はまず、障害者にとってインターネットが生活に深くつながり、自宅にいながら世界中の情報を得、どこへでも発信できること、さらに会うことも困難な人とのコミュニケーションを可能にし、世界を飛躍的に広げていることを、具体例を通して示している。障害者の情報アクセスを発達保障に不可欠な権利であることを説得的な根拠によって明らかにしている。
 また本書は、障害の種類や状態に応じて利活用するためのグッズや方法について写真入りで示し、導入するための問い合わせ先を含めて最新のものを紹介している。
 特筆すべきはそのわかりやすさである。パソコンにまったくふれたことがない人が理解できるようにと、インターネットとは何かという基本から、導入・アクセス方法に至るまで丁寧に解説している。といっても、単に初心者に役立つだけではない。パソコン歴15年以上を自認する評者も新しく知ったことが少なくないことを告白しておこう。
 楽しいコラムも満載で、インターネットを始めてみようかと考えている障害者・家族、関係者はもとより、誰にでも勧められる本である。

 
■紹介 「女性のひろば」2002年4月号
 ベッドに寝たきりでもホームページで情報を世界に発信できる・・・。IT(情報通信)は障害者の自立、社会参加の可能性を開くもの。しかし障害者がパソコンを使いたくても、やすやすといきません。そこで今、障害者のパソコン利用をサポートする「パソコンボランティア」の活動が広がっています。本書は、そうした全国の経験をふまえ、障害者と家族から出される質問、トラブルに即して、インターネットの使いこなし方を指南します。障害者用の機器導入のアドバイスから、自治体の窓口の活用、身近なボランティアグループ紹介まで。だれもが人権としてITを活用できる社会づくりへの手引書でもあります。

■図書紹介  比留間 ちづ子(日本作業療法士協会理事)
   「リハビリテーション」2002年4月号

 「誰もがITを活用できる便利な情報化社会で暮らしていくために」という目標は誰もが納得するところであり、障害があるからこそ便利に、情報だからこそ阻害されることのない社会とするためのIT活用は時代の共有課題である。しかし、実際にパソコンを操作し、IT(情報技術)を活用するにはそのきっかけと具体的な支援の道筋が必要である。パソコンの入門書は数あるが、障害者と家族(支援する多くの人々を含めて)がITに取り掛かろうと背中を押してくれる、そんな感動ものの入門書に出会えたのは初めてである。

 本書には、とてもお洒落な演出がある。まず、発行日が2001年12月9日、障害者の日である。デビューは障害者週間のメインともいえるJD(日本障害者協議会)フォーラムとドッキング開催されたパソ・ボラフェア。受付に山と積み上げられ、通り過ぎることを許さない美しい装丁と雰囲気。しかし、何と言っても、内容の濃厚さを写真とコラムの挿入でさらりとまとめた、著者・編者の感性と心配りは見事で、心にくい構成である。
 通常の入門書は基礎編、応用編、主旨論調へとだんだん小難しくなっていき途中で面倒になる。この入門書は逆というか、各編が巧妙に構成されているというべきで、第1章はITを活用している人たちの紹介で始まり、ITが障害者の生活そのものであり、そのことでITが人権表明の道具となっていることを納得させてしまう。バリアフリーは物理的障害だけではなく、情報アクセスについてもフリーでなければならないとしたJDの緊急提言、パソコン本体の支給で終わらせず、パソ・ボラ育成などの地域活動事業の動きと必要性についても淡々と書き添えられているのがかえって興味深く感じられる。
 第2章では、パソコンという道具が実際には使えないのではないか?という不安を端的に想定し、基礎の基礎たる用語や困ったときの解決法、何処に聞けばいいかまでもが紹介されている。そして、視覚や肢体不自由の障害を補う数々の道具の写真がこの少ないページに盛りだくさんに載っているので、自分にはどんな道具が合うのかな、これらで問に合わなければ聞いてみようという、情報コミュニケーションそのものへの意欲を密かに盛り上げるのである。
 さて、第3章は「基礎編」とうたい、メールやメーリングリスト、ホームページのメインの操作を紹介しているが、日常的に情報をやり取りする上での実践方法と処し方が書かれており、不安があっても、「そう考えればいいのか」といたく納得し、基礎というのは出発点での安心感が大切なのだな、と妙に感心するのである。

 本書はパソ・ボランテイアの入たちが実際に支援してきたなかで、ITを活用したいと思う人の誰もが抱く不安や理解の壁を越えるにはどういう導入がいいのかを思い悩んだなかから生まれてきた思いやりでできている。また、姿勢にあわせた画面のセット、手の代わりのマウスステックの可動範囲のこと、キーボードやマウス、音声環境への変換など、道具の改良と開発への試行錯誤がなければ日常的な活用には至らないことは容易に想像ができる。まさしく二人三脚の足跡である。そして基礎力ですぐにつながるホームページの紹介によって、一挙に情報の世界に飛べるご褒美がついていることにも思いやりを感じるのである。であるから、これからパソボラを志望する人にも家族にも、本書が入門書としてとても大きな力になることが期待できる。
 続編ができるとしたら、障害の個人特性に対してより多くの領域の専門家が参加し工夫が集積されるに違いない。本書の意義は、そういった人々の社会を結びつけるITという手段がもつ「平等性」を認識させ、情報保障が生活人における基本的人権の保障であることを、支援の実践過程から読み取らせるものであるということにある。一読をお勤めする。

■読んでみよう 小野寺乾司
 「手をつなぐ」2002年8月号 全日本手をつなぐ育成会

 インターネットは福祉のために生まれてきたのではないかこ思う時がある。今まで一方的であったメデイアのスタイルもインターネットの出現により、かなりのスピードで風景がさま変わりしたようにも思う。基本的には電子会話であったり、個人の考えが組み込まれた電子百科事典であったりする。パスポートのいらない、また国境がないこの世界は、大いなる可能性と魅力でいっぱいであり、福祉的に大歓迎な手法と言えよう。
 
 本書は障害者とその家族にインターネットの基本について写真やイラストを数多く掲載して木目細かく解説がされている。障害程度の単位で各パソコン機器の改造事例や各地域でのボランティアによる障害者とインターネットとの取り組み方も紹介されており、福祉に関わるすべての人に必読してほしい一冊である。インターネットに関わるパソコン機器を中心としたユニバーサルデザインの可能性もこの本の中から感じとることができる。障害者の自立するための環境とは、障害者本人が手軽で興昧がわくものから始められる環境がベストだと思う。インターネットには、その可能性がある。本書がインターネットという『新しい風』で福祉の世界になびくことを期待したい。
                                       (小野寺乾司)

特集・ITと障害者 「障害者問題研究」29巻4号 もあわせてご活用ください

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