障害者問題研究 第50巻2号(通巻190号) JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES 2022年8月25日発行 ISBN-984-4-88134-026-4 C3037 定価2750円(2500円+税) |
特集 乳幼児期の療育と発達保障 特集にあたって/藤林清仁 障害の早期発見・早期対応,子育て支援における発達保障 /近藤 直子 特定非営利活動法人 あいち障害者センター 厚生労働省は2001年の「健やか親子21」において母子への切れ目のない支援をうたい,2015年からの「健やか親子21第二次」においては,虐待対応とともに「育てにくさへの対応」を重点課題として位置づけた.そのことは2016年には「子育て世代包括支援センター」設置に,そして2024年施行予定で示された母子保健法,改正児童福祉法の「こども家庭センター」設置につながっている.一方「障害児通所支援の在り方に関する検討会」においては,障害が診断される前の「気づきの支援」は主に保育所等に通う子どもに関して論じられ,3歳までの子育て支援とはリンクしているようには見えない.本来は障害の有無にかかわらずすべての子どもに子どもとしての権利が保障されなければならない.親子が安心して暮らすためには,母子保健から子育て支援,そして障害のある子どもへの療育保障という仕組みの充実が不可欠であり,これらの取り組みの現状と課題についてまとめた. 障害児通所支援の10年と今後の課題 /中村 尚子 特定非営利活動法人 発達保障研究センター 2000年代以降の地域療育政策の動向を振り返り,障害児通所支援制度の改善課題を検討した.支援費制度を端緒として,障害児福祉に利用契約,事業者の代理受領と日額報酬,費用の応益負担が導入された経過を整理し,障害者福祉と同様の枠組みである現行制度は,乳幼児が成人とは異なるがゆえの課題をもたらすこととなったことに言及した.最後に障害児通所支援の今後にとって,児童発達支援センターの量的整備と機能を確かなものにするための基準の改善が必要であることを指摘した. 乳幼児期の子育て支援の課題と展望 /池添 素 特定非営利活動法人 福祉広場 障害のある子どもを育てる保護者の悩みや困難は子育ての早期から始まる.乳幼児期における専門家との出会いや支援は,その後の子育てに大きな影響を与える.インターネットによる情報が氾濫し,保護者の意思決定が求められる利用契約制度の下では,子どもの障害や発達の弱さを的確に把握した支援に結びつくことが難しい状況も生まれている.児童発達支援の報酬において保護者支援の実施が明確に位置づけられたが,一部の療育機関では,行動修正のスキルに偏重した内容の支援も多い.その問題点を指摘し,児童発達支援の制度化以前から保護者支援に取り組んできた筆者の経験に基づき,子育ての悩みに寄り添い,子どもの障害や発達の弱さを理解し向き合いながら,思春期以降を見通した子育ての指針となる保護者支援のあり方を示す. 乳幼児の生活の組織化と発達保障 /白石 正久 龍谷大学名誉教授 利用契約制度になってから,療育の場である児童発達支援は,乳幼児期らしい生活と発達の保障という普遍的な目的を失い,曜日によって異なった事業所に通所し,各々の異なった活動への参加というモザイクの様相を呈している.その流れの背景には,知識技能の習得,集団生活への適応を旨とする受身的適応的な子ども観と発達観がある.乳幼児は,障害の有無によらず,おとなからの心理的支えと友だちとの共感のもとで期待を高め,自ら生活のなかにある時間・空間・集団に働きかけて,自己変革しつつ発達していく.そういった発達観を実践を通じて共有していくことが,今,求められている. 実践報告 0歳児期からの親子療育――子育ては楽しく喜びや安心感の中で /山口 雅子 鹿児島県・(社福)麦の芽福祉会 むぎのめ子ども発達支援センターりんく 実践報告 肢体障害の重い子どもの主体性を育てる療育 ――友だちがいるからこそ育つ自分の「つもり」 /林 美和 滋賀県・大津市立やまびこ園・教室報告 実践報告 あきちゃん親子に教えられて育ちつつある職員集団 /髙田 朋代 静岡県・一般社団法人れんげ 多機能型支援事業所smileすみれ 連載/実践に学ぶ 【小学校通級指導教室の実践】 通級指導教室から見えてきたこと 大阪府 小学校教諭/藤木 桂子 【藤木実践に学ぶ】 どこまでも子どもの味方であり続ける 龍谷大学/宮本 郷子 連載/実践に学ぶ 【家族・きょうだいの実践】 親亡き後の「きょうだい」のともに歩まない選択――「きょうだい」のノーマライゼーション /軽部 誠 全障研神奈川支部 【軽部実践に学ぶ】 知的障がいのある当事者と「きょうだい」の権利保障 /佐々木美智子 全障研鹿児島支部 連載/ワイドアングル 第18回 サピエンスの起源と発達進化――胎児期からの子育ちと子育て /竹下 秀子 追手門学院大学心理学部 動向 コロナ禍と子どもたちの心・からだ 児童精神科医師/田中 哲 東京都・子どもと家族のメンタルクリニックやまねこ院長 ◆本誌「読む会」のお知らせ 10月14日 ■本誌紹介チラシ(PDF)をご活用ください ■障害者問題研究 バックナンバーへ ■ご注文は、つぎの 「オンラインBOOK全障研」からクリックしてください。 送料含む代金は郵便振替等にて10日間以内にご送金ください。 |