障害者問題研究51巻1号 特集=発達保障のための教育環境・学校設備

「障害者問題研究」51巻1号
 特集=発達保障のための教育環境・学校設備


JAPANESE JOURNAL ON THE ISSUES OF PERSONS WITH DISABILTIES
2023年5月25日発行 ISBN-984-4-88134-096-7 C3037 定価2750円(本体2500円+税)

特集 発達保障のための教育環境・学校設備



特集にあたって/河合隆平 東京都立大学人文社会学部



特別支援学校の教育環境の現状と改善の方向性/児嶋 芳郎 立正大学社会福祉学部
 本稿では,まず特別支援学校の教育環境の現状を概観した.そこでは,在籍児童生徒数が激増しているのに対して,学校数がそれに対応できるだけ新設されていないことを示した.また,そのために教室不足など教育環境が悪化し,過密・過大化が進行していることを指摘した.次に,特別支援学校に必要となる特別教室について,特別支援学校施設整備指針を参照して検討した.これらを受けて,過密・過大化の教育実践への負の影響について,物理的側面,人的側面から指摘し,改善の方向として,学級数の標準を設けること,余裕のある教室設置が必要であること,分散化が必要であることを提起した.最後に,子ども・家族・教職員・関係者が,よりよい教育,より豊かな教育実践を展開できる基盤としての教育環境整備について考え合い,それを実現するために教育行政が公的責任を果たさなければならないことを指摘した.


特別支援学校「学校設置基準」の策定運動からとらえ直す教育権保障としての学校施設・設備改善
/村田 信子 全日本教職員組合障害児教育部

 全国に広がり常態化している特別支援学校の過大・過密,教室不足を解消すべく,十余年かけて設置基準策定運動に取り組み,「特別支援学校設置基準」が制定された.全教障害児教育部は,その設置基準策定前に「私たちがもとめる設置基準案」づくりを行い,その過程で教職員,保護者,研究者らの教育条件改善への要求を結集させた.「特別支援学校設置基準」は制定されたが,既存校を適用猶予しているために,劣悪な教育環境の改善が見込まれない.保護者,市民,教職員らは,既存校へ適用することや,基準の改善を求める運動にも引き続き取り組んでいる.設置基準をめぐる問題の根底にはそもそも日本の「学校設置基準」の教育法制としての不十分さがあることを指摘した.


【座談会】特別支援教育の施設・設備,教育条件をめぐって
出席者佐竹 葉子(埼玉)・矢口 直(東京)・岡田 徹也(滋賀)・中藤 美紀(高知)
司会=河合 隆平(東京都立大学,本誌編集委員)


報告 特別支援学校の教育環境 過大・過密の悪化と私たちが求める教育環境
/岡田 徹也 全国障害者問題研究会滋賀支部


報告 小中学校の特別な教育的ニーズと教育環境 大阪における文科省「4・27通知」に対する運動
/山林 哲 大阪市立茨田西小学校特別支援学級担任、大阪教職員組合障害児教育部


報告 寄宿舎の生活と教育環境 子どもの願いを受けとめ創る生活とは
/坂元 康雄 東京都立葛飾盲学校寄宿舎指導員


報告 神奈川県の特別支援学校の分教室における施設整備問題
/村田 豊 神奈川県立障害児学校教職員組合


連載/実践に学ぶ
【報告】小学校教師の実践 「おこりんぼ」真一のねがいを受けとめる
/中島 小鳩 愛知県・公立小学校 特別支援学級担当


【中島実践に学ぶ】
「しなやかな」対応,「確かな」手立て ──中島実践の魅力
/竹沢 清 あいち障害者センター


連載/実践に学ぶ
【報告】グループホームの実践 強度行動障害のある人の暮らしの場の移り変わりの支援
/佐々木 進一・大西 美佳子・関 めぐみ 大阪府・社会福祉法人さつき福祉会


【みんなのき実践に学ぶ】
Aさんが「ここが自分の暮らす家」と思ってくれるまで
/栗本 葉子 社会福祉法人おおつ福祉会 おおぎの里


連載/ワイドアングル 第21回
障害のある子どもを育てるひとり親家族と貧困問題 ――「依存の私事化」と生活保護受給の論理
/松田 洋介 大東文化大学文学部


資料
優生保護法の神奈川県における地域浸透に関する研究
/船橋秀彦 全国障害者問題研究会茨城支部


「読む会」情報 7月21日(金)19時~21時 に開催します。
  参加申込はこちらをクリックしてください

2023年06月30日